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メディア社会とリテラシー(下)〜超兵器SNS号:血を吐き続けるマラソン〜

『ウルトラセブン』においてこのようなエピソードがある。

このエピソードはウルトラマンシリーズの中でも数えられるほどの屈指の脚本であり、

冷戦下であった社会情勢が反映されたストーリーでもある。

地球防衛軍は侵略者から地球を守るために超兵器・R1号を開発する。

その威力は、水素爆弾6000倍の威力を誇り、惑星一つ簡単に破壊できるという。

しかし、モロホシ・ダンことウルトラセブンはこの振る舞いに否定的であった。

なぜなら、

・惑星を破壊できるほどの威力を持つ兵器を開発してしまったこと

・それに伴い、侵略者はもっと強力な兵器を開発するだろう

とのことである。

地球防衛軍はR1号のテストとして生物のいない惑星「ギエロン星」に打ち込む。

ギエロン星は破壊されたのだが、実は生物が生息しており、その生き残りが放射能で進化して地球に報復しに来たのだ!

進化した生物は何度も再生を繰り返して歯が立たない。

ウルトラセブンの助けにより、ギエロン星獣を殺めることができたのだが、

セブン本人にとって、胸糞の悪い戦いであったことは否定できない。

なぜこのエピソードを導入として持ってきたか、理由は

もうすでに人類は「SNS」という超兵器の開発に成功してしまったからである。

1.サブリミナル効果〜メディア・リテラシーを掻い潜る罠〜

前回の特集では、メディア・リテラシーやファクト・チェック力、個人情報流失などにフォーカスを置いた。

今回紹介するのは、リテラシーでも対策が難しいとされる問題である。

まずはサブリミナル効果についてお話しよう。

サブリミナル効果とは、意識では認識できないレベルで「潜在意識」を刺激する手法である。

1957年にある研究者が実験として映画上映中の一コマに、目では認識できない程度にポップコーンやコカ・コーラの画像を挿入した。

その結果、映画を鑑賞した多くの観客はコーラやポップコーンを購入したという。

映画『ファイト・クラブ』(1999)ではブラッド・ピット演じるタイラー・ダーデンがイタズラとして、ファミリー映画のフィルムに男性器の画像を一コマ挿入するとして楽しんでいた。

しかし、このサブリミナル効果、政治的プロパガンダやカルト宗教に悪用される可能性があるとして米国の広告業界で「禁止」された。

日本においてもテレビ業界が「自主規制」という形でサブリミナル効果に圧力をかけたが、あくまでも法律上の規制ではないので、どこかにまだ存在している可能性がある。

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(サブリミナル効果の有名な一例。女性が男性器らしきものを咥える寸前に見える。)

1989年放送の「シティーハンター3」には製作者の悪戯として、麻原彰晃こと松本智津夫の写真が一コマ挿入されている。あくまでも製作者がイタズラとして、業界関係者をからかったに過ぎない。タイラー・ダーデン的な遊びであろう。

(その後、オウム真理教がテロを起こすとは誰が予想できただろうか?)

オウム絡みのサブリミナル効果はこれだけではない。

TBS系列の報道番組「報道特集」において、麻原の画像が一瞬挿入されている。

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(麻原はオカルト雑誌を通して、自身の超能力をアピールした。明らかにフェイクであるが、インチキおじさんとして人気を集め、信者を獲得した。)

そのことが発覚して、TBSは非難された。

オウム真理教も勧誘ビデオ内において、サブリミナル効果を使用したという。

無意識に訴えかけてくる情報に対して、人間は抵抗できない。

現代の技術では、人工知能の分析機能なしにして分からないほど、編集の技術が巧妙となっている。

一体どれほどサブリミナル効果が日本に流れているのだろうか。

SNSやYoutubeなど、もはやサブリミナルの温床であろう。

もし兵器として、偏った思想を広める際にインターネットは強力な武器になりうるであろう。

2.搾取される若者たち〜悪徳マルチの手口〜

近年問題視されているマルチ商法(MLM)。

過去にもマルチ商法に巻き込まれるというトラブルは多数発生していた。

しかし、現代においてもその手口は巧妙化しつつ、新たな被害を産んでいるという。

まず、マルチ商法を知らない方にシステムを教えよう。

マルチ商法は別名「ネットワーク・ビジネス」とも呼ばれている。

会員が別の顧客を勧誘することで、その勧誘した会員に対して報酬が入るシステムである。

また、会員が友人や家族に高額な商品を売った場合、給料として入るシステムもある。

組織構造はこの図を参考にしてほしい。

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組織にリーダー(会長)がいて、その幹部がそれぞれのチームを管轄している。

その幹部の部下がマルチ勧誘をし、リーダーの元に莫大な資金が入ってくるというシステムだ。

主に情報商材系の詐欺グループに多いとされる手法であり、暴力団関係の「シノギ」として悪用されるケースがある。

TwitterやInstagramで「副業」というワードを見たことがないだろうか?

副業をすれば、不労所得で月100万稼げるなど謳っているアカウントが多く、高級ブランドや海外旅行、マンション生活を投稿しているなど

いかにも成功しているような印象を与える。

しかし、彼らの多くがフェイクであり、詐欺師である。

冷静に考えてほしい。

もし不労所得者が増えたとして、高額の金額を稼いでる人がいるとしたら

その儲け方を他人に教えるであろうか?

ビジネスの世界において、レッド・オーシャンで競うということは

いつ競争に負けるか分からないということでもある。

経営者としては、得をしないやり方ではないか。

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2−2 マルチ商法の罠〜被害者が被害者を生む〜

このような悪徳マルチには巧妙な手口が存在する。

近年、大学生を中心にマルチの被害は起こっているという。

お金を稼ぎたい。実業家になりたい。という野望を抱いた学生が、

副業の広告を見て、その人物にDMを送る。

そうすると、その人物からセミナーに勧誘される。

初期のセミナーはお試しとして無料である。

しかし、その次のセミナーでは商材がないと参加できないと言われるパターンがよくある。

その後、勧誘した人物から紹介したい先輩がいると言われ、カフェなどで面会をする事になる。

その先輩はマルチ商法で成功して多額の金額を稼いでいるという(設定)。

綺麗事を聞かされた、被害者は信じてしまう。

話が切り替わり、セミナーについての話題になる。

そこで学生である被害者は、商材が高いからという理由で購入を悩むが、

先輩とされる人物は

〇〇の紹介だからという理由で、10万円ぐらいする商材の値段を半額以下にして販売すると言う。

被害者は得した気分になり、購入してしまう。

その次のセミナーに参加しても、正確な稼ぎ方は教えてくれない。

そして、上級者編という教材を促進され、購入してしまう。

その結果借金は返せないほどに膨れ上がるのだが、

組織は返済のために、自社の商材を誰かに販売すれば借金を減額してくれるといい、

被害者は別の被害者を産む。

つまり詐欺師が詐欺師を作るシステムなのである。

このような手口は年々進化している。

マルチに引っかかる人は減少したものの、まだ被害者はあとを立たない。

副業のみならず、芸能界デビューやインスタグラマーなど、商材は姿を変えている。

私は過去にマルチ商法で稼いでいたという男性に取材をした。

2−3 マルチ商法の実態

マルチ商法は全てが悪であるわけではない。

大手企業ではきちんとした管理体制のもとMLMが行われる。

今回のインタビューではマルチ商法はどのようにして展開されるのかを聞いてみた。

Q1.マルチ商法でお金を稼いでいたとのことですが、どのような組織体制でしたか?

〜私が所属していた組織では、いくつかのチームに別れていました。チームごとにリーダーがいて、その人の指示や方法に従って販売やマーケティングを行うのです。

Q2チームということは、それぞれ異なったやり方でビジネスをするということですか?

〜はい。売り上げも空気感もチームによって異なります。たまたま私がいたところでは、メンバーが親切でアットホームな雰囲気でした。別のチームでは、上司が厳しく、メンバー感でも陰口が目立つなど、「学級崩壊」をしたクラスのようでした。

Q3セミナーに参加するという噂を聞いたのですが、どのようなことを話されていましたか?

〜私が参加したセミナーでは、「お金」=幸せではないということを教わりました。印象に残っているのは、

「どんなにお金を持っていても幸せになれない人は一生なれない。」

「幸せは感じ方である。」

「ただし、この社会ではお金がないと幸せになるチャンスさえ掴むのが難しい。」

「お金をただ稼ぐのではなく、どのように使うのかが大切である。」

この点を見ると、よくある自己啓発本に書いてあるクオリティーのお話である。

新興宗教でも、「お金」と「幸せ」を絡めたセミナーを行うことがある。

私は胡散臭さを感じたが、インタビューを続けることにした。

Q4 セミナーにはどのような人たちが参加されていましたか?

〜大学生から脱サラした人まで多種多様です。意識高い系の方が多いのでしょうかね。

Q5 商品を発売する会社とお聞きしましたが、商品のクオリティーはどうでした?

〜業界、いや全体的に総合してクオリティはかなり高いと思います。プロテインから鍋と様々な商品展開をしている会社ですが、プロダクトの評判は良いです。しかし、世間全体の「マルチ商法」の印象がよくないので、それと混在して

商品=詐欺

というレッテルが貼られてしまったのではないかと思います。

Q6 現在でも商品を使っていますか?

〜使っています。

Q7 世間ではマルチ商法に対して詐欺というイメージが強いと思います。その会社では、詐欺に関わったりしていましたか?

〜詐欺に関して、関わってはいないと思います。確かに、人によっては多少強引な方法で売りつけている方もいました。しかし、あくまでもチームでの活動だったので分からないところは多いです。本物と偽物では圧倒的にサービスの質が違うと思います。

Q8 福利厚生はどうでしたか?

〜私の会社はアメリカに本社があり、大手でした。研修旅行では沖縄やアメリカのカリフォルニアなどに行けます。費用も全て無料です。会社はビヨンセをコンサートに呼んだり、その他有名なセレブと関係や信頼があります。

アメリカではMLMは一般的なビジネスモデルである。日本では詐欺グループによって悪用された。しかし、アメリカではこのようなケースはたまにある程度であるとされる。

Q9 最後に、マルチ商法でビジネスをして学んだことはなんですか?

〜商品を売ることでセールス・スキルが身につきました。一般的な企業の場合、会社の売り上げなのでコケても会社が守ってくれます。しかし、(マルチでは)自分で商品を購入し、紹介料として報酬がもらえるシステムです。プロダクトとしてはやはり高いと思われても仕方がないでしょう。

居酒屋でのインタビューだったが、色々と面白い話を聞くことができた。

トークスキルも流石である。

しかし、世の中には「悪徳」とされる業者が多い。

実際、この会社では売り上げるのは大変だったという。

上手い話はない・・・

簡単に稼げると謳う会社こそ、気をつけるべきである。

3.教育現場におけるハラスメント〜ネット時代の問題〜

ネット社会の普及の影響を受けているのは教育現場でも同じである。

インターネットにおける学生同士の誹謗中傷やいじめが原因で亡くなった若い命が後を立たない。

文部科学省の統計によると平成26年度ではインターネットによる誹謗中傷のいじめを受けた生徒は7,898件

平成29年度では12,632件である。

その割合の20%が高校生である。

その反対に、教師による性的ハラスメントの増加が問題視されているのはご存知だろうか?

文部科学省は今年、教師と生徒との間でのSNS交換やコミュニケーションを禁止する方針である。

その背景には深刻化する「スクール・ハラスメント」通称スクハラである。

教員が生徒に対して猥褻(わいせつ)な行為の強要や不適切な発言、容姿に対する指摘などの被害が増加しつつある。


この件に関して事件の当事者となった元・教師のインタビューから、日本の教育現場における問題点を考察する。

今回インタビューに答えてくれた人物は、大学卒業後、高校の非常勤教師として勤務する。

学内での評判はよく、担当した教科のクラスの標準偏差(成績)は科目中でトップであり、

学生から熱い信頼を得ていたという。

順風満帆そうに見える彼だが、ある事件に巻き込まれたことにより

教員生活に疑問を持ち、引退。

彼は私の取材に応じてくれた。

Q1 教師になったきっかけは何ですか?

〜大学時代、教育学部に所属していました。教えるのが好きなので、教育に携わる仕事をしています。教育実習や学内での活動に熱心に取り組んでいました。

Q2 学校では生徒からの評判が良かったと聞きましたが、どのような点で人気だったのでしょうか?

〜僕が配属されていた高校は他の高校と違うシステムでした。大学の講義のようにそれぞれ異なるクラスで授業を受けます。もちろん、1年生から4年生まで同じ授業にいる光景は珍しくありません。

〜僕のポリシーは授業を真面目に聞かなくてもいいから、自分の将来のために役に立って欲しい。時間を無駄にしてほしくないということです。他の授業では真面目に受けないとペナルティーが課されることがありますが、僕のクラスでは絵を描いていても寝ていても注意しませんでした。なぜなら、将来、イラストレイターとして活躍する人も現れるかもしれないですし、アルバイトを夜遅くまでしている生徒もいます。

〜僕のクラスを聞くと、おかしな風に思われてしまいますが、学生同士が教えあい、ともに問題解決するスキルを習得できたと思うので、その点では社会人として役に立つのではないかとおもいます。

Q3 教師を引退した今だから言える話はありますか?

〜教師の世界は「格差社会」です。僕は非常勤講師だったので、常勤の先生方と比較して立場が下になるわけです。僕が担当したクラスの生徒で悩みがあると言って相談してきた学生さんがいたので、相談に乗ったのですが、職員に見つかってしまい、

「君は非常勤なんだから、そんなことしなくてもいい。ただでさえ忙しい業界なんだから余計な仕事を増やさないでくれ。」

と叱られました。それがきっかけで、僕は日本の教育制度に疑問を持ちました。

彼の話に日本教育界の闇が垣間見えた。最近発生したいじめ問題も隠蔽のニュースが数多く存在するが、あながち「組織単位」での証拠隠滅があってもおかしくない。

Q4 もっと深掘りしたいと思います。教師が生徒に相談することは、例えどのような立場であっても責任として、面倒を見るべきではないでしょうか?しかしこのエピソードを聞いて教育界にはパワハラが存在すると実感しました。

〜そうですよね。教師としての責任はただ教えることではないと思います。古き良き先生像では「金八先生」のように、生徒に熱意で向かっていく「熱血先生」であるべきだと思います。しかし、教えることだけ、成績を伸ばすことだけに焦点を置いた今の教育システムは狂ってると感じます。教えることなら、塾の講師でもできますし、Youtubeに上がっている動画の方が上手い場合もあります。

Q5 あなたが巻き込まれたトラブルは他にもありますか?

〜SNSの使用に関して巻き込まれたことがあります。僕はある女子生徒とLineを交換してやりとりをしていました。彼女が僕に好意を持っていました。しかし、やりとりが親によって流出し、学校内で問題視されてしまいました。その結果、僕は教頭に呼び出されて厳重注意を受けました。

Q6 この話を聞いて、僕はあなたに責任があると感じました。一般的に生徒とのやりとりで問題になったケースが多数寄せられているのにも関わらず、なぜ交換をしたのですか?

〜この件に関しては僕の認識が甘かったんだなと反省をしています。しかし、起きてしまったことはもう取り返しがつかないので、どうしようもないです。しかし、最初は僕にも相談に乗らなければならないという責任感がありました。その後のやり取りで、超えてはいけない一線を超えてしまいそうになりました。

〜問題なのは、生徒がネットを通してのみの場合でしか相談ができないということでもあります。もし教師に相談できれば、学生は相談していると思います。しかし残念ですが、非常勤の僕でしか相談できないほど、教員に対する学生の信頼はないのではないかと思います。

Q7 ん〜。学校とプライベートの境界線が難しいですね。学校教育はブラック化していると思うのですが、また勤務したいですか?

〜もう勘弁してほしいです笑。しかし、学校の生徒は大切です。今でも印象に残っている学生もたくさんいます。

彼との取材で分かったことは、日本における教育問題やネット使用のトラブルなどが浮かび上がってきた。

相談する場所や人がなく、ネットでしか声を向けられない学生。
優しすぎるが故に、トラブルに巻き込まれてしまう教師。
腐敗した教育組織。

一体、この国はどうかしてしまったのだろうか?

ネットは表面に出てこない、人間の怒りや妬み、悲しみなどネガティブな感情を露わにした。

私たちは普段、そのような感情を抑えながら生活をしているが、

ネットが普及したことにより、感情を吐き出す機会が増えた。

現実世界での私たちは仮面を被って生きている

ネット空間では本当の「人間性」が露わになる

誰かを無差別に攻撃する若者や他者を落しめることでしか満たされない人々。

ジョーカーは私たちの心に眠っている。

まとめ〜メディア世界を生き抜く。

(上)(下)に渡ってメディア社会やリテラシーについて考えてきた。

上ではメディアとの付き合い方、

下では被害や事案をもとにメディアとどう対処していくかに焦点を当てた。

2021年、世界は未知のウイルスの困難に直面している。

ネットでこの話題を検索すると、陰謀論や誹謗中傷など明るくない話題を目にしてしまう。

さらに、それらの記事は魅力的で信憑性が高いように見えてしまう。

しかし、この記事を読んでくれたあなたなら、そんな簡単な罠に引っ掛からず、

公平に世の中を見ることができるだろう。

世界は今、「加速」すると言われているし、環境問題・格差問題がさらに深刻化すると囁かれている。

しかし、忘れないでほしい。

あなたはあなた。

自分の身は自分で守れ!

メディアやインターネットという「便利」な兵器を

あなたはうまく使いこなす側である

決して支配されてはならない。

最後に、読んでくれたことに感謝します。

あなたの人生に幸あれ。

令苑




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