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週刊Leone 特別号〜発達障害×アート〜

2021年3月末日。桜の開花と共に春の到来を告げるような優しい風が吹いていた。

私は地元の某大手家電製造メーカーに勤務する、ASD(自閉スペクトラム症候群)の当事者であるReitoにインタビューを行った。

彼は現在障害者雇用枠で正社員として働き、兼ねてからの趣味であったイラストでアーティスト活動を行っている。

私は地元の公園で彼と待ち合わせをしていた。タクシーから降りた彼はカジュアルな服装であった。
久しぶりに再開した彼の姿は、懐かしい面影もありつつ一人の成人した大人としての威厳もあった。

桜並木の中、僕は彼に撮影兼取材として様々な質問を投げかけた。

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クエスチョン


Q.1 「最初に絵を描き始めたのはいつの時ですか?」

Reito「僕が最初に絵を描き始めたのは幼稚園の頃だね。様々な絵を描いていたのを覚えているよ」

Q.2「今現在、画家と会社員を両立されているそうですが、どのようなスパンで活動をしていますか?」

Reito「僕は今ある有名な家電製造メーカーの工場で製造を担当しているんだ。この前部署の移動があって、クーラーから部品へと移ったんだ。仕事は朝の8時30分から夜5時まで。残業がある時は(夜の)7時から8時までという時もあるんだ。イラストの方は休日をメインに活動をしているよ。」

Q.3「尊敬する芸術家や画家は?

Reito「イギリスのアーティストでJoe Whale(ジョー・ホエール)くんという男の子がいる。彼は学校では落書きばかり描いている問題児だったんだけど、彼の世界観がインスタグラムでバズり、今では芸術家の一人として世界的に評価されるようになったんだ。作風はシンプルでユニークな世界観を持っている。僕は彼から影響を受けたね。」

Q.4「作品を制作するときに使用している道具は?」

Reito「僕はアナログもデジタル両方で描くんだけど、どちらかといえばアナログがメインかな。
使っているのはスケッチブック、アクリル絵の具、色鉛筆、クレパスかな。道具代は大体絵の具で1000円くらい。高かったものでは専門店で発売していた5000円ほどの絵の具だね。」

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Q.5「デジタルで使用しているアプリは?」

Reito「週刊少年ジャンプが公式にリリースしている【ジャンプPAINT】だね。」

https://medibangpaint.com/jumppaint/

Q.6「イラストを描く際、こだわるポイントを教えてださい。」

Reito「描いていて、これは違うな。変だな。と違和感を感じた作品は基本的にボツにしているよ。だから、インスタグラムにも投稿をしない。自分で納得した作品のみを選抜してオンライン上で発表しているよ。」

Q.7「イラスト以外の趣味はありますか?」

Reito「僕は旅行が趣味なんだ。日本国内では川越などにいったことがある。海外はシンガポールと韓国だね。韓国にいった時には衝撃を受けた。ドラマや映画で見るThe韓流の世界と全く同じだったからね!!シンガポールではユニバーサル・スタジオのテーマー・パークに遊びにいった。ジェットコースターは日本のものより、ずっと怖かった。その後、僕はホテルに宿泊したんだけど、そこはインド系の住民が多く住んでいる「リトル・インディア」と呼ばれる地域だったんだ。
日本では体験できなかったことが多くていい思い出になった。その影響もあって僕のイラストも海外をモデルにした作品がいくつかある。」

Q.8「おすすめの作品や影響を受けたもの3つほど教えてください。」

Reito「一つは有栖川有栖(ありすがわ ありす)さんの火村シリーズかな。彼は大学で准教授として働いているんだけど、同時にミステリーや事件の謎を推理して解いていく。二つ目は、石塚真一さんの漫画『ブルージャイアント』。ジャズのサックス演奏者が主人公の物語で宮本が成長していく過程が素晴らしい作品だね。
最後にアイドルグループの乃木坂46。中学時代、「制服のマネキン」はよく聴いていたよ。」


Reitoの作風は純粋で無垢な頃の子供が描いたようなイラストだ。パッと見、幼稚園児や小学生が描いたように見える。それは彼が子供の頃からの絵に対する気持ちを忘れていないからであろう。イラストは大人になるにつれ、様々な人やカルチャーに影響を受ける。タッチが細かくなったり、色彩が落ち着いたりなど。徐々に洗練されていき、初心を忘れてしまう。いったいどれくらい多くのアーティストが最初に絵を描いたときの気持ちを忘れてしまったんだろうか・・・

私自身写真家でもあるのだが、作品を多く撮影するにつれて大切な何かを失ってしまった気がする。初めて自分のカメラを手にしたあの日、フィルムの現像に失敗した時、好きな人を撮影したあの日。もう記憶の片隅に放り込まれてしまった思い出。気がつけば、同期や先輩がみんな写真活動をやめ、仕事や人生に必死に生きている。それでも自分は写真や作家として活動をしたかった。周りは就職活動をして新卒として働くことになるが、私は別の人生を歩むことになる。迷いはない。ただ、二度と昔のように大学の友と接することはないのかもしれない・・・

Reitoはアートに関して純粋である。彼の作品に対する姿勢は、商業的になってしまったアート業界へのアンチテーゼでもある。

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〜私は彼のもう一つのアイデンティティーである自閉症について質問をした。〜

Q.9「発達障害に関して、初めて診断されたのは何歳の頃ですか?」

Reito「幼少期の頃でおよそ2歳だったね。僕は病気がちの子だったから風邪をよくひいていた。その時、病院で風邪の診断と共に医師から「発達障害の傾向があるから検査をしたほうがいい。」と。それで僕は、自閉症と診断されたんだ。」

Reitoが診断された自閉症は現在ASD(Autism Spectrum Syndrome)と正式に呼ばれている。
日本語では自閉スペクトラム症候群であり、


1アスペルガー症候群
2自閉症
3広汎性発達障害

を統括した名称である。
 厚生労働省の発表によると、およそ100人に1人がASDの当事者だという。さらに現在増加傾向にある隠れ発達障害:グレーゾーンと呼ばれる層も含めるとすると、私個人のデータとして50人に一人は自閉傾向があるとされる。グレーゾーンは診断がされにくく、一般生活で見過ごされる場合が非常に多い。皆さんのクラスの中にも、コミュニケーションを全く取らない子や変なこだわりをもった友達はいなかっただろうか。彼らは自閉症やアスペルガー症候群の傾向にあると推測できる。
 彼らの中には診断をされ、適切な訓練や教育を受けて社会で活躍する人もいる一方で、発達障害であることに気づかず人間関係や仕事でトラブルになり「生きづらさ」を感じる当事者も少なからずいるのが日本の現状である。


Q.10「発達障害当事者として、生きづらさを感じた場面について詳しく教えてださい。」

Reito「自閉症の特性の一つとして、偏食があるんだ。僕が小学生の時には好き嫌いが激しくて、ほとんどの給食の献立が食べられなかった。成長するにつれて食わず嫌いであったり、偏食は徐々に解消されたね。それとは逆に、ドラゴンフルーツやあん肝などの一風変わった珍味が大好きだったな。」

彼は高校時代のエピソードについても語った。

Reito「高校時代の僕には棘があった。あの頃の僕はかなり荒れていたと思うよ。いわゆる不良の類ではなかったけど、嫌な思い出だったり、トラウマがフラッシュバックしてしまい、自分でもコントロールが効かなくなるんだ。それで僕は保健室にいた時間が多かったね。無事に単位の方は取得できたので卒業はできたし、障害者雇用枠で大手企業に就職もできた。でも、いい思い出は少ないかな。」

ASD傾向にある発達障害者は味覚や嗅覚といった感覚に過敏である場合が多い。そのため偏食であったり、ファッションにこだわりがあるなど「変な人」と周囲に思われる場合がある。しかし、そのこだわりを各分野で活かすことにより、天才的な才能を発揮するケースが存在する。
アインシュタインやエジソン、Apple創業者のスティーブ・ジョブズもASDであったという。

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Q.11「最近、発達障害と診断される方々が多いのですが、どう思いますか?」

Reito「確かに障害を受け入れられない人はいると思もう。最近増えてきてるみたいだけど、健常者も障害を持った方も、学校とか会社とかで過ごしやすい世の中になればいいなと感じるね。」

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私がReitoとインタビューをしている時間はあっという間に過ぎた。最初の質問からおよそ1時間ちょっと経ち、最後の質問をした。

Q.12「最後に、発達障害当事者やグレーゾーンと診断された方にアドバイスをお願いします。」

Reito「アドバイスは2つあるんだ。一つ目は、幸せというものは気づくものだということ。例えば、嫌なことがあっても、病気になっているわけでもないし、大怪我をしているわけではない。風邪をひいた時も、病気になる前の方が幸せだったということに気づく。何が言いたいかというと、当たり前のことに対して感謝をする。当たり前を自覚していれば自然と幸せが掴めてくるものなんだ。
二つ目のアドバイスは、努力は決して裏切らないということ。高校時代や大学時代に多くの人は世の中の理不尽さに直面する。学生時代、勉強ができて成績が良かったとしても社会では活躍できない人もいる。一流大学を卒業して大手企業に新卒として入社したとしても、仕事ができない人も多くいる。逆にプライドが邪魔をして悪い方に向かってしまうので、一層不幸になりやすい。
彼らとは反対に、やんちゃしていた人が成功するということもある。努力は人それぞれだけど、社会で成功するやり方で努力すれば成功できるし、幸せになれるんだ。」

〜Reitoから読者に向けてのメッセージ〜

「この記事を読んでくれた皆様へ。僕のインスタグラムアカウント(reito2mixjuice)をフォローしてください。ぜひ僕の作品を見にきて欲しいです。」

こうして私とReitoのインタビューは終了した。彼は発達障害者としてではなく、一人の人間として見習うものがある。

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最後に、この取材とプロジェクトに協力してくれたReitoに感謝の意を表したい。

写真・文章:@Leon_kinouchi



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