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「改善」(KAIZEN)というトヨタの仕事観・仕事術・勤労哲学

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1 「改善」(KAIZEN)

トヨタにとって、「改善」は会社経営の根幹です。創業期からの価値観をベースに従業員の行動規範としてまとめられ、2001年に発表された「トヨタウェイ」にも、「知恵と改善」「人間性尊重」が2本柱として明記されるほどです。わかりやすく言うと、無限の可能性をもっている人間の力を最大限に活かすには、知恵を絞って現状を常によりよい方向に改善しようということです。

「会社には仕事に行くのではなく、知恵を出しに行くのだ」
(常に現場では知恵を求められる)
「ムダな仕事をさせることは、その人の人生をムダにすること」
(部下の能力を最大限に引き出すことが、上司の役割)
「仕事とは、作業+改善である」
(決められたことをやるだけ(作業)では、仕事とは言えない)

2 「イノベーション」と「改善」

 今日、日本では、「長時間労働」や「サービス残業」、「過労死」・「過労自殺」、「同調圧力」や「現状維持」、「事なかれ主義」・「ご都合主義」等、様々な労働問題や社会問題を抱えている。

 さて、イノベーション(革新)という言葉は、西洋発祥の言葉・出典である。この立派な概念を築いたのが、シュンペーター先生である。

 いずれ、自分もシュンペーター先生を学ぶことが出来るようにしていく。

 ところで、思うに、東洋のイノベーションは、正しく「改善」ではないだろうか?長年、在日ベトナム人として、日本並びに世界が誇るトヨタと、その業績の結晶の一つである「改善」(KAIZEN)をまだ確りと学び知らなかったことを、本当に恥ずかしく思った。西洋、そして自分の祖国でも、「改善」(KAIZEN)は高く評価され、強い善き影響を与えている。

3 拙作『改善 礼と四道四徳』

 そして、この素晴らしい日本の文化・哲学を、自分は独創的に学び受け継いで、発展させていくことを決行した。本日、その拙作が誕生した。以下が拙作の表紙である。

 この拙作の構想には、以下の先哲の影響がある。

3.1 トヨタ

 言うまでも無く、日本のトヨタの様々な方々とその業績が、第一の影響になっている。そして、この拙作では、以下の文献を参考にさせて頂くことにしている。

 実践的・実用的に「改善」を説明・解説する(株)OJTソリューションズ様と、学術的・哲学的に「改善」を分析・詳解する岩尾俊兵先生から学ばせて頂く。

3.2 論語と子産

 中国の春秋戦国時代には、数多くの名宰相が存在するが、子産は、自分が深く敬慕・尊敬する名宰相の一人であり、晏子・管仲・士会・百里奚・孫叔敖等の名宰相に並ぶ名宰相である。

 子産の祖国である「鄭」は、常に大国に多く影響を受け、何度も何度も国家滅亡の危機に曝される等、ただでさえ、国外からの多大な脅威が常にあるにも拘わらず、国内でも、公族同士の争いに権力闘争や国家転覆等の内争・内乱等が頻繁に起き続けていた。

 そんな弱小国へと没落した祖国の鄭にて、その徳望ぶりから宰相に推薦・登用されると、抜本的かつ先駆的な諸改革を命懸けで断行しては、内政も外政も徳を以て確りと改善して、鄭を安定かつ復興させた。こうして、子産は、就任当初、臣下達からも人民からも、憎悪や殺意のある数多くの誹謗中傷や攻撃等を受けるも、晩年、その死に、国中の老若男女の人民が号泣した。

 自分が深く敬慕・尊敬する孔子も、子産の死を聞くと、「古の遺愛だ。」と涙を流して、その死を悼んだが、自分もまた、先師の孔子の気持ちがよく理解できる。

 そしてこの度、論語を参考にしつつ、子産の生涯とその功績や遺徳等を学び受け継いだのが、拙作である。

子謂子產、有君子之道四焉。其行己也恭其事上也敬其養民也惠其使民也義

論語:公冶長第五:15 子謂子産章 - Web漢文大系 (kanbun.info)

子曰、德之不脩學之不講聞義不能徙不善不能改、是吾憂也。

論語:述而第七:3 子曰德之不脩章 - Web漢文大系 (kanbun.info)

3.3 「礼」

 東洋、特に中国哲学で、「礼」は極めて重要な哲学概念の一つとなっており、その概念は、私達が一般的に知っている、「礼儀作法」の「礼」だけではなく、それは、以下のように、子産の遺訓を伝えた游吉や荀子が述べているように、そして個人の心から国家の要に、宇宙の理に至るまでを調え整える「力」という、深遠・高遠な意味を持っている。拙作もまた、絶大な影響を受けた。

吉也聞諸先大夫子產曰,夫禮,天之經也,地之義也,民之行也,天地之經,而民實則之,則天之明,因地之性,生其六氣,用其五行,氣為五味,發為五色,章為五聲,淫則昏亂,民失其性,是故為禮以奉之,為六畜,五牲,三犧,以奉五味,為九文,六采,五章,以奉五色,為九歌,八風,七音,六律,以奉五聲,為君臣上下,以則地義,為夫婦外內,以經二物,為父子,兄弟,姑姊,甥舅,昏媾,姻亞,以象天明,為政事,庸力行務,以從四時,為刑罰,威獄,使民畏忌,以類其震曜殺戮,為溫,慈,惠,和,以效天之生殖,長育,民有好惡喜怒哀樂,生于六氣,是故審則宜類,以制六志,哀有哭泣,樂有歌舞,喜有施舍,怒有戰鬥,喜生於好,怒生於惡,是故審行信令,禍福賞罰,以制死生,生,好物也,死,惡物也,好物樂也,惡物哀也,哀樂不失,乃能協于天地之性,是以長久,簡子曰,甚哉禮之大也,對曰,禮上下之紀,天地之經緯也,民之所以生也,是以先王尚之,故人之能自曲直以赴禮者,謂之成人,大不亦宜乎,簡子曰,鞅也,請終身守此言也,

春秋左傳 - 夫禮,天之經也,地之義也,民之行也 - 中國哲學書電子化計劃 (ctext.org)

禮有三本:天地者,生之本也;先祖者,類之本也;君師者,治之本也。無天地,惡生?無先祖,惡出?無君師,惡治?三者偏亡,焉無安人。故禮、上事天,下事地,尊先祖,而隆君師。是禮之三本也。

荀子 - 禮有三本:天地者,生之本也;先祖者,類之本也;君師者,治之本也。 - 中國哲學書電子化計劃 (ctext.org)

 「絆を深める」とは、歴史を確りと学んでは深く思い込むことで、共感力や理解力を深め、また、確りと学んでは深く考え込むことで、認識力や洞察力を高め、そして、共感力や理解力を以て、死者を弔って想い、認識力や洞察力を以て、生者を知って応じ、現実に即応しながら、変化に適応することが出来るようになることである。

 「徳を修める」とは、過去からの影響を理解して、現在の変化を認識し、自然の変動を受容して、社会の圧力に耐久し、そして、時間の力量(エネルギー)を私物化して、空間の熱量(マター)を私有化することで、個性化された無意識な生命である力(パワー)、即ち「徳(じりき)」を宜しく生して、愛おしみ育んでいくことである。

 絆を深めつつ、徳を修めていくためには、「『礼』」を成し遂げていく必要がある。「『礼』」とは、天・地・命が連係して相関する道であり、

「天の経」即ち、原子から宇宙に至るまでの秩序を成り立たせる『礼』。
「地の義」即ち、個人から国家に至るまでの秩序を成り立たせる「礼」。
「民の行」即ち、心神から身体に至るまでの秩序を成り立たせる「礼」。

 この三者が連係して相関する道である。
 「文の有る生命」こそが、この道を創る「物」であり、道を創っていくには、まず、「絆を深める」即ち「人こそが道を弘(ひろ)める。道が人を弘(ひろ)めるわけではない。」という事実を自覚して、奮励努力していく必要があり、そして、「徳を修める」即ち「誠(てんどう)を誠(じんどう)にして、誠(じんどう)を以て力(しぜん)を徳(じりき)にしていく。」という奮励努力を積み重ねて、現実化させていく必要がある。
 このような高遠にして深遠な道である「『礼』」を成し遂げていくには、まずは、「地の義」と「民の行」が連携して相関する道である「礼節」から、成し遂げることである。
 ちなみに、「『礼』」を成し遂げていく、これを「哲学を愛する」という。

 子産もまた、礼を体得しては、確りと、心を正して、身を修め、その成果を政治に応用した名宰相だった。そこで自分は、そんな子産の遺徳を、ぜひとも発展・深化させて、後世に新しく遺すことを決行した。

 そして、同様に、中国の重要な古典である「礼記」を批判的・発展的・独創的に参考かつ応用して、拙作を著述していく。

4 結語

 『中庸』にこうある

大哉,聖人之道!洋洋乎發育萬物,峻極于天。優優大哉!禮儀三百,威儀三千,待其人然後行。故曰:苟不至德,至道不凝焉。故君子尊德性而道問學,致廣大而盡精微,極高明而中庸。溫故而知新,敦厚以崇禮。是故居上不驕,為下不倍;國有道,其言足以興,國無道,其默足以容。

先秦兩漢 - 禮儀三百,威儀三千 - 中國哲學書電子化計劃 (ctext.org)

 拙作では、礼儀三百(実践哲学とその徳目)と威儀三千(解釈学と徳目の詳解や補説)を、本当に著述して、新しい哲学的な「改善」を著述していく。

 皆様の御期待の程、何卒宜しくお願い申し上げます。

ありがとうございます。心より感謝を申し上げます。