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”地球の未来”を変える!?『着ること』の最前線、日本最大のファッション展示会で見えてきたものとは。

10月27日~29日に東京ビッグサイトにてアパレル・ファッションの日本最大の展示会が開催されました。

この展示会は日本のファッション業界の未来が見えるとも言われるもので、2年後、3年後に店頭に並ぶあらゆるジャンルの服が、ここでの商談を受けて作られていく場所でもあり、セミナーでは業界の最前線で活躍する人達の講演が行われます。

アパレル産業は廃棄ロスの多さや石油製品の多さから、石油産業につぐ環境汚染産業と言われており、サステナブルへの対応を早急に求められている産業。そこで語られる数年後の業界の未来から、地球の未来が透けてみてきます。

「海と共に生きる、踊るように暮らす」。森羅万象・”神さま”と共に生きる暮らし方を提案するviehula!としてはとても気になるところ。

今回は実際に会場に足を運んで見えてきた「着ること」がどう変わっていくかの最前線をお伝えします。

糸から縫製、製造までが一同に集まる中で、安さ優先なのか環境優先なのか。見えてきたズレ

ビッグサイトの広い会場には、洋服を作るすべての工程に携わる様々な企業が出展しています。糸、染め、織り、生地、パターン、デザイン、縫製、製造受託会社、マーケティング、商社、卸業者などなど、その数750社。

その中でもメインとなるのが製造受託会社で、生地の選定から実際の縫製、品質管理まですべてを一手に請け負っている会社となります。

私たちが日ごろ、オンラインや店頭で、購入する洋服は実はかなりの比率で「製造受託会社」が実際には作っています。

ブランドや販売元は主にマーケティングや製品の販売のためのコミュニケーションを担当し、実際の製造は製造受託会社に任せている状態。

ですから、実際にはタグを外したら、あのAブランドも、Bブランドも、同じ工場で同じ生地を作っていた・・・・なんてことも起こりえます。

こだわりの製造方法を持っていたり、伝統的な技術を持っている国産の製造受託会社もありますが、多くは、海外で安い価格で大量生産ができる工場を抱えてそれを強みにしているところ。

ファストファッションが主流となって以来、海外製造の流れは止まらず、SDGsが取りざたされてサステナブルな産業への転換が求められる今年の展示会においても、ほとんどの製造受託会社の主なPRポイントは「いかに費用を安く作れるか」となっていました。

環境への対応が進む素材会社、だけど・・・

一方で素材の会社を見ていくと、オーガニックコットンや天然素材はもちろんのことながら、ペットボトルから作られた再生素材や、ポリエステル製の服を回収してそこからまたポリエステルを作り出すマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルと呼ばれるものがあったり、廃材や廃棄食材などから作られた生地があったり、今までになく環境対応を考えた素材の提案が増えていました。

これらの素材の会社の方々に話を聞いてみると、世界的な流れや会社の姿勢から環境対応の素材は開発して展示しているものの、実際のブランドや製造受託会社との商談のほとんどはまだ通常の「トレンドのものをいかに安く作るか」であるという言葉が返ってきました。

環境への意識の高まりがまだまだ低いと言われる日本。素材はあっても、店頭に並ばない。そんなGAPが起こっていそうです。

セミナーで語られた革新的なビジョン。「もう新品の服はいらない。新しい服を作らなくても、デザインの力で人をわくわくさせられる。」

一方、セミナーではまさにユーザーと日々向かい合っているブランドや販売元の方々がセミナー受講をしていました。

30あるセミナーのうち、サステナブルをテーマにしたものは8講座。トレンドや流行をテーマにしたものは3講座でしたので、サステナブルへの関心の高さはうかがえました。

ただサステナブルを発信している講師陣は、情報発信メディアだったり世界的なトレンド発信をするコンサル会社だったり。まだまだ実際にわたしたちに服を提案してくれるブランドや販売元は少ないようでした。

その中で、とても興味深いセミナーがあったのでご紹介します。

講師はWWDジャパンという世界的なファッション業界専門誌の日本版に携わる編集部の廣田悠子さんと、ファッショントレンド発信をしているTREND UNIONの家安香さん。「サステナビリティの浸透によって変化するアパレル素材とデザイン」というタイトルでセミナーが行われました。

そこでは環境なのか、コストなのかに揺れ動く展示会場とは違った先進的な海外事例や歯切れのよいビジョンが語られていました。

「著名なデザイナーを多数輩出しているファッション研究の中心・イギリスの複数の大学ではすでに、ファッションの持つ存在意義そのものを変えていく必要がある、として心理学など学問を超えての研究が始まっています。

もう新品の服はいらない。環境団体がそういうプラカードを掲げてデモを行いましたが、その先頭に立っているのはコムデギャルソンが好きなファッショニストだったりします。

『もう人々は十分に服を持っている、もう私たちに新しい服は必要がない。
すでに生産したものを循環させればいいんだ。』
イギリスの名門でファッションを愛し学んだ若者たちが出した結論が、これです。

たくさん作ってたくさん買わせる、新しいものを提案して古いものを捨てさせる、そういう発想そのものをファッション業界は変えていかないといけない。

服をリメイクする、アップサイクルするときにこそ、デザイン力やクリエイティブ力が求められる。わたしたちは新しいものをたくさん作らなくても存在意義を出せるし、人をわくわく幸せにさせることができるはずです。」

廣田さんが力強く発言し、そこに家安さんも深く同意します。

「服を買うことは、その企業にお布施することで、本当に価値のあるところに長く使うことをコミットして買うようにこれからはなっていくはず。

サステナブルについてのサポーター、場合によってはパトロンになる、というのが顧客にとってのブランドとのかかわりになるのではないでしょうか。」

と話がまとまりました。

ファッション業界の中心でファッションを否定する。

その後の質問コーナーでは、ファストファッションブランドの担当者が質問する場面も。

「社内でもSDGsに対する取り組みは始まってしますが、新しい服はいらない、と聞くとさすがにドキッとします。そういう時代の中で、わたしたちファストファッションのメーカーはどう考えていくべきと思われますか。」

そこに対して、彼女たちの返答は

「たくさん作りすぎている諸悪の根源、というイメージがファストファッションについてしまっていますが、決してそういう側面だけではないはず。あるファストファッションブランドが、自分たちのスタンスをファッションの民主化とおいていますが、むしろ製造国からの搾取がないようにとか、かなりエシカルな取り組みが進んでいるのがファストファッションの世界ブランドだと思います。

自分のカーボンフットプリントを減らすための暮らしをゲームっぽくできると楽しいし、そういう仕掛けはファストファッションブランドほど提案してほしいですし、世の中を動かす力が大きいからこそ期待したいです。」

ファッション業界の中心地で、ファッションそのものを否定する議論がなされていることに力強さを感じ、何か大きなものが変わりそうな予感を感じました。

それでも結局最後は、わたしたちユーザーが何を買うかに最後の切り札は託されています。「着ること」の選択が、地球の未来を決める。大げさに聞こえますが、衣・食・住の3大要素の1つである衣がサステナブルにならなければ、地球1個では持ちこたえられないはずです。

10年着る、スタイルを持って流行に流されない、天然素材・天然染めを選択する、オーダーメイド・ハンドメイドを選択する、選択の基準を変えていくことが大切になることを改めて感じた展示会でした。

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