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記憶の中だけにあるパリの情景 (2)
1996年、ご主人の駐在でパリに住んでいた元同僚である友人と一緒に、ミラノ〜ヴェローナ〜ヴェネツィア〜パリ、という旅行をした。
はじめてのパリからすでに8年たっていて、自分もすこし大人になっていたのと、パリも少し、外国人に対して変わったのか、
ホテルのマダムにも気さくに英語で話しかけられ、なんだかちょっとびっくりした。
友人に連れられて、レストランに入った時のこと。
今となってはどこだったのか、入り口も何も覚えていないが、建物の上の階にあって窓が大きく、少し上からの街の景色が見えた。
まだかなり空いている時間だったのに私たちは窓際の席には通されず、
口には出さなかったが、なんとなく差別的なものを少し感じたのだけど、まあ仕方ないだろう、と思っていた。
他にはフランス人らしい家族(夫婦と10代前半くらいの娘)がいて、はじめはそれほど気に留めていたわけではなかったが、そのうち目がついつい吸い寄せられていった。
それは、その夫婦がとても素敵だったのと、家族の光景として美しかったから。
それに加えて、彼らの向こうにある大きな窓に広がる空にエッフェル塔が見えていて、その家族の光景とともに、ひとつの完璧な絵になっていた。
自分のテーブルの上には何があったのか、何を食べたのか、まったく覚えていないのに、二十年以上たった今でも、パリの記憶として残っている。
photo: KAORI K. paris 1988
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