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真夜中のウィーン着と早朝の空 《クリスマスを待つあいだ01》

この記事は2020年の投稿を加筆修正したものです。

もう20年も前のことだが、クリスマスマーケットの特集を雑誌で見て、はじめて冬のヨーロッパに行ってみたいと思った。

いくつかの国が特集されていたけれど、目を引いたのがモーツァルトや「サウンド・オブ・ミュージック」で有名なオーストリアのザルツブルク。
"町のいたるところに本物のモミが使われ、オーナメントも鉛製や木彫りなどがメインで本物志向"と書いてあり、それだけでもうザルツブルクに引き寄せられてしまった。

この旅はまずハプニングで始まった。成田発の飛行機が飛ばない。
午前中の出発だったのに、飛び立ったのが夜だった。
そのためツアーが中止になって帰っていく人たちもいて、気の毒だなと思って見ていた。こういう時に、臨機応変になんとかできるのがフリーの良さでもある(なんとかするのがちょっと面倒でもある)。

本当なら、ウィーンに到着後バスで西駅まで行き、駅前の4つ星ホテルに明るいうちに着く予定だった。それがどう考えても夜中着になり、念のため成田から直接ホテルに、遅くなる旨をしどろもどろで国際電話した(こういう時フリーは辛い)。

いつもは4つ星なんかに泊まらず、こじんまりとした2つ星か、せいぜい3つ星に泊まるのが好きなのに、この時は初めてのオーストリアへの一人旅だったのでちゃんとしたホテルにしようと思った。
時期的に4つ星がだいぶ安かったし、バイキングの朝ごはんがかなり評判が良いとのことで、それも楽しみにしていた。だけどなにより、この時ばかりは夜中もフロントが開いている4つ星にしておいて本当に良かったと思った。

けっこう小型のオーストリア航空機で、隣の席は空いていたのでゆったり。
途中、妙に機内が寒くなったのは、シベリア上空だったからだろうか?
ウイーンに到着したのは、おそらく夜中の1時過ぎだったと思う。

降りた客しかいない、シンとした夜中の空港で、多くの人がトランジット方向に行ってしまい心細くなった。
外に出ると目の前にタクシー乗り場があって、黒人の客引き?(係の人?)が手をあげて呼んでいた。とにかくタクシーで行くしかないので、ハラをくくって乗り込む。ここでも、駅前の大きなホテルにしてよかったと思う。

ちょっと緊張しながら、車の中から夜のウイーンの街を眺める。なんと、そんな時間なのに犬の散歩をしている女性がいてびっくり。それをみてなんとなくホっとする。

無事ホテルに着いてチェックインし、部屋に入って、シャワーを浴びてベッドに潜り込んで、ふと気づく。鍵をドアの外側に差しっぱなし!
荷物があったので抜くのを忘れてしまって、そのままシャワー浴びてたなんて。。。でも、周りの部屋は寝静まっているようで(その時すでに2時半頃)まったく大丈夫だった(ほっ)。

朝、目が覚めるとまだ外は暗かったけど、時計を見るともう7時近かった。
冬のヨーロッパは初めてだったので、夜明けも遅いし、3時過ぎにはもう薄暗くなるということも初めて知った。

タイトル写真の右下に時計が写っていて、7時過ぎを指している。あのあたりが鉄道の駅なので、まだ暗い中、通勤の人たちが動き出していて、車の音も聞こえる。

そのうちどんどん空が焼けてきて、刻一刻と変わる美しい情景に目が釘付けになり、寝不足ながら三脚を部屋の中に立てて、空の変化を撮り続けた。

部屋はけっこう上層階で、半円形の窓があり、朝日が差し込んでいた。
この写真を見ると、異国の朝の静かな時間の流れを思い出す。

*photo by photofran(フランチェスカ), 2003




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