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動物病院での犬と猫の病気:下痢(5) そもそも下痢とは?

千葉市で働く臨床経験17年目の獣医師です。

前回のnoteでは

動物病院での便検査の概要

について解説をしました。


今回は便検査の有用性についてより理解してもらう上でも

そもそも下痢とはどのような状態なのか?

についてお話をしたいと思います。

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そもそも下痢とは

過剰な水分を含んだ便のこと

を言います。

正常な便に含まれる水分の量は約70%と言われています。
これに対して水分を80%以上含む便のことを「下痢」と言います。

ちなみに「水下痢」と言われるような形のない便は、水分が90%以上になっている状態を言います。

下痢はさまざまな異常によって、腸で水分がうまく吸収できなかったり、逆に腸から必要以上の水分が出てきてしまうことにより起こります。

下痢の原因は様々なものがありますが、代表的な原因として以下のようなものが挙げられます。


① 食事性の消化吸収不良
② 感染症(細菌性、ウイルス性)
③ 寄生虫
④ 毒物、薬物などによる中毒
⑤ 食事性アレルギー
⑥ ストレス

簡単にそれぞれ説明しますと、

① 食事性の消化吸収不良
食べすぎや、食べ慣れないものを食べたりすると消化不良を起こし下痢につながります。

② 感染症
子犬の時はパルボウイルスやジステンパーウイルスなど命に係わる怖い伝染病により下痢が起きている場合があります。
また成犬では腸内細菌のバランスが崩れ悪い菌が増えることで下痢につながることがあります。

③ 寄生虫
特に子犬、子猫の下痢の際に関与することが多いです。
そのため子犬、子猫の時期の便検査、特に浮遊法はとても大事な検査になります。

便検査に関しては前回のnoteを参照にしてください。

④ 毒物、薬物などによる中毒性
犬や猫は『なぜこんなものを?』と思うものを口に入れてしまいます。その食べてしまったものによっては中毒を起こし、激しい下痢を起こすこともあります。食べたものの毒性によっては下痢だけでなく様々な症状も出てくるため命に係わる場合があります。
治療のためには便検査だけでなく血液検査や画像検査など迅速に様々な検査が必要になることもあるため、なるべく早く近くの動物病院に駆け込んでください。

⑤ 食事性アレルギー
食べたものの中の特定のたんぱく質に反応し、アレルギー反応を起こすことで下痢になります。この場合食事の変更をすることで下痢が治ることも多いです。

⑥ ストレス
以前のnoteでもお話ししましたが、犬や猫はストレスに弱くちょっとした環境の変化でも下痢をしてしまうことがあります。

その他にも
・免疫異常
・がん
・膵臓の異常
・ホルモンの異常

など稀な病気も含めると下痢につながる病気はまだまだたくさんあります。


そのため以前お話をしましたご家族による下痢に関する情報が、下痢の診断をする上でとても重要になり、獣医さんの除外診断をする上での大きな手助けになるのです。

次回は
下痢の治療をしていく上でとても大事なポイントである

小腸性下痢 と 大腸性下痢

の違いについてお話ししようと思っています。

つづく


参考文献:イラストでわかるワンちゃんネコちゃんの健康/病気と食事BOOK

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