動物病院での犬と猫の病気:下痢(15) 便の色を見るだけで分かる病気!?
千葉市で働く臨床経験17年目の獣医師です。
前回のnoteでは
蛋白漏出性腸症
についてお話をしました。
今回は
便の色を見るだけで病名が分かる!?
可能性がある下痢につながる病気のお話をしようと思っています。
突然ですが、
皆さんの愛犬愛猫の便は普段何色の便をしていますか?
何でこんな分かり切った質問を?
と思っている方も多いと思います。
便の色は濃さの違いはあるものの、通常
茶色
ではないかと思います。
今回お話しする病気の子は
典型的には
灰色~白っぽい色の便
をすると言われています。
そのため便の色を見るだけで、病気の診断につながる場合があります。
ただしこの病気は正直とても稀な病気です!
どれくらい稀かといいますと、
これまで私は10年以上動物病院で診療を行っていて、毎日のように下痢の診察をしていますが、
実際に便の色からこの病気を疑い、診断に至ったのは私の記憶の中では2件だけです。
それだけ稀な病気だと思ってください。
もちろん私よりもっと診断能力が高い先生が診ていればもっとこの病気の診断ができるかもしれませんし、二次診療施設ではもっと多く見つかっている病気かもしれません。
いつもの私と違い、少々まどろっこしいnoteになってきてしまったので、
そろそろ話を進めると、
便の色を見るだけで分かる病気
それは
膵外分泌不全
です!
膵外分泌不全とは、膵臓で作られる消化酵素が何かしらの理由で不足してしまい消化不良を起こす病気です。
原因としては
❶膵臓組織の萎縮
❷慢性膵炎による膵臓組織の破壊
などが考えられます。
慢性膵炎に関しては以前noteでお話ししていますの参考にしてください。↓
ちなみにですが、➊に関しては比較的若い子で発症することがあり、先ほど私がお伝えした便の色から診断に至った2件というのはともに若いワンちゃんでした!
そして注意しなければいけないこととしては、今回私はnoteのタイトルにまでしてしまいましたが、膵外分泌不全でも便の色が変わらない子もいます。
また、特にシニアの犬猫は慢性膵炎も多い病気なので、そこから知らない間に膵外分泌不全も併発してくると日々の体調管理はより難しくなります。
膵外分泌不全の主な症状としては
・体重減少
・便量の増加
・普通便と軟便を繰り返すが、水様性の下痢になることは少ない。(慢性的な小腸性下痢)
・毛並みが悪くなる
です。
診断
はこれらの症状に加え、特殊な血液検査の項目を測定することで確定診断は可能です。
そして
治療
は消化酵素剤の投与になります。
基本的には膵外分泌不全と診断された子は、消化酵素が自分で出せなくなってしまっているため、この消化酵素剤をずっと飲み続けることになります。
消化酵素を飲むことで通常下痢は収まってきます。
そして服用し続けることで症状がほとんど出なくなり安定してくれれば、この病気とうまく付き合っていくことは可能です。
最後に再びの「ちなみに」ですが
私の診断した子の1件をご紹介すると、
その子は若い痩せ気味のチワワちゃんで小さいころから突発的な下痢を繰り返していました。
そしてその都度一般的な下痢の治療をして落ち着いていました。
そのチワワちゃんはとても緊張する子で、他のワンちゃんも全くダメな子でした。
そのためはじめは、ストレスに弱い子ということでご家族とお話しをしていました。
ただそのうち体重が徐々に減ってきたのと、部分的な脱毛が始まりました。
そして最終的にいつもと違う薄茶色の白っぽい便をし始めたので、
確定診断のための血液検査を行ったところ膵外分泌不全の診断に至りました。
そのチワワちゃんは消化酵素を飲み始めたら、時間の経過とともに発毛し、下痢もたまにはありますが、以前のように頻繁に繰り返すことはなくなりました。
そして初めは痩せ気味で心配していたそのチワワちゃんは、今ではちょっとぽっちゃりになるくらい体重も増えています。
今回のnoteは以上になります。
次回は、下痢につながる病気として
食物アレルギー
についてのお話をしようと思っています。
次回に続く。
参考文献
・犬の内科診療Part3
・犬の治療ガイド2020
・SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE
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