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コロナ禍を法的観点から検証する

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新型コロナを一律に法律で縛る仕組みは変えられないのか? 大阪府専門家会議・朝野座長インタビュー詳報

新型コロナを一律に法律で縛る仕組みは変えられないのか? 大阪府専門家会議・朝野座長インタビュー詳報

 オミクロン株の感染拡大で結核やSARSと同様の「2類相当」の対応が続けられていることについて、大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議の朝野和典(ともの・かずのり)座長は、濃厚接触者の隔離などの現行法の定めや運用が「かえって社会の機能を阻害しており、マッチポンプになっていないか」と疑問を示した。

 朝野氏は、オミクロン株での致死率がコロナ禍の当初から大きく低下しているとの認識を示し「新型コロ

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特措法に基づく時短・休業命令、6月に急増 11都府県が実施

特措法に基づく時短・休業命令、6月に急増 11都府県が実施

 飲食店等に営業時間短縮などの措置を命令できるよう、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法が施行されて、まもなく4ヶ月となる。
 自治体の発表などを調べたところ、6月11日までに11の都府県が、特措法に基づく要請に応じなかった店舗に命令を出していたことがわかった。
 第2次緊急事態宣言下の3月に東京都が時短命令を出した以外は、すべて5月以降に出されたもの。本プロジェクトの集計では命令の対象は3

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東京都が飲食店に休業命令、計42店舗に グローバルダイニング社は応じない方針

東京都が飲食店に休業命令、計42店舗に グローバルダイニング社は応じない方針

 東京都は5月26日、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく休業要請に応じなかったとして、飲食チェーンの株式会社グローバルダイニング(GD)が経営する3店舗を含む9店舗に休業命令(酒類提供停止した場合は時短)を発出した。
 5月17日にも、同社経営の23店舗を含む33店舗に休業命令を出しており、これで第3次緊急事態宣言下で東京都が命令を出した対象は合計42店舗になった。

 一方、GD社は休業

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東京地裁、都に時短命令を発した根拠の更なる説明求める グローバルダイニング提訴の第1回期日で

東京地裁、都に時短命令を発した根拠の更なる説明求める グローバルダイニング提訴の第1回期日で

 東京都が緊急事態措置として発した営業時間短縮命令は違憲、違法だとして、飲食チェーンの「グローバルダイニング」(GD)が東京都に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論期日が5月21日、東京地裁で開かれた。
 その中で、松田典浩裁判長は都に対し、緊急事態宣言の終了3日前に時短命令を出した根拠や、時短命令の対象が32店舗(うちGDが26店舗)に絞り込まれた理由について、具体的に説明するよう求めた。
 都

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宮城県が時短命令 重点措置解除の4日前に 店名も公表 「実効性」高める狙いか(追記あり)

宮城県が時短命令 重点措置解除の4日前に 店名も公表 「実効性」高める狙いか(追記あり)

 まん延防止等重点措置の期限を5月11日に控えていた宮城県が7日、営業時間短縮の要請に応じていなかった飲食15店舗を対象に時短命令を出した。県内の感染状況や医療提供体制の指標は改善しているが、政府が11日の期限で重点措置から外す方針を決定した当日に、命令を発出した形だ。店名も公表した。まん延防止等重点措置の対象地域で時短命令が出されたのは初めてとみられる。
 これまでにも、東京都が3月、緊急事態宣

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告示改正で酒類持込み規制可能に 許可した飲食店に罰則 重点措置にも適用

告示改正で酒類持込み規制可能に 許可した飲食店に罰則 重点措置にも適用

 田村憲久厚生労働大臣は5月7日、インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法)に基づく「緊急事態措置」および「まん延防止等重点措置」(以下「重点措置」)の一環で、利用客による酒類持ち込みを認めないよう、知事が事業者に要請・命令できる権限を付与する告示改正を行った。7日夜、官報で告示した。
 第三次緊急事態宣言では、知事が「酒類提供の終日停止」を要請していたが、酒類を提供しない代わりに、酒類の持ち

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西村大臣、東京の緊急事態宣言は「予防的な措置。総合的にステージ4ではない」と発言 基本方針と矛盾し、違法な宣言の疑い

西村大臣、東京の緊急事態宣言は「予防的な措置。総合的にステージ4ではない」と発言 基本方針と矛盾し、違法な宣言の疑い

 西村康稔経済再生相が4月28日、衆議院内閣委員会で、25日から第三次緊急事態宣言に入った東京都について「実は半分ぐらいは予防的な措置といっていい」「全体として総合的にステージ4ではない」と発言していたことがわかった。
 これは、東京都は病床の逼迫状況がステージ4ではなく、客観的に見れば「緊急事態」の状況にはなっていないと分かりつつ、将来的に大阪での変異株の広がりが東京に及ぶ恐れがあるため、予防的

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重点措置での酒類提供停止は「特措法の委任の範囲を超え、違法の疑い」 京大の曽我部教授が見解

重点措置での酒類提供停止は「特措法の委任の範囲を超え、違法の疑い」 京大の曽我部教授が見解

 田村憲久厚生労働大臣は4月23日、インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「まん延防止等重点措置」で、知事が「酒類提供の停止」や「歌唱設備使用の停止」を要請・命令できるよう、告示改正を行った。これについて、京都大学の曽我部真裕教授(憲法学)は「居酒屋で酒類提供禁止をするというのは、事実上は営業停止であるとも言いうるため、政令・告示で定めることのできない措置を定めている疑いがある」として、違法の疑い

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まん延防止措置で「酒類提供停止」の告示改正、国会答弁と矛盾 政府「時短より制限の程度小さい」と主張

まん延防止措置で「酒類提供停止」の告示改正、国会答弁と矛盾 政府「時短より制限の程度小さい」と主張

 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくまん延防止等重点措置(以下「重点措置」)として、酒類提供の終日停止やカラオケ設備使用の停止を要請・命令できるよう、田村憲久厚労相が4月23日、告示改正を行った。
 改正特措法案(2月3日成立、13日施行)の国会審議では、西村康稔経済再生担当大臣は、重点措置では営業時間の変更(短縮)より制限の強い措置はできないと明言し、衆参両院の附帯決議でも確認されていた

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【検証コロナ禍】「マスク会食義務化」に法的根拠はあるのか?

【検証コロナ禍】「マスク会食義務化」に法的根拠はあるのか?

 大阪府で新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき全国初の「まん延防止等重点措置」(以下「重点措置」)が実施されることが決まり、吉村洋文知事が措置の一環として「マスク会食義務化」を行う方針を表明したと相次いで報道された。
 だが、この措置により、飲食店の利用客に「マスク会食」の義務が生じるわけではない。事業者にマスク会食の「周知」やそれに応じない客の「入場禁止・退店」を行うよう要請、命令しても、

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【検証コロナ禍】自民党改憲案の緊急事態条項にも国会承認を明記 改正特措法は国会関与なく規制権限拡大も

【検証コロナ禍】自民党改憲案の緊急事態条項にも国会承認を明記 改正特措法は国会関与なく規制権限拡大も

 コロナ禍に迅速に対応するという名目で実質2日間のスピード審議で成立し、2月13日に施行される新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案(以下、改正特措法)。緊急事態だけでなく、緊急事態前でも、知事による権利制限を可能とする規定が盛り込まれ、その内容を、国会が関与しない政令で決められるようになっている。
 緊急時に政令による権利制限を行う際に国会承認を義務づけていた自民党憲法改正案と比較してみると、

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【検証コロナ禍】改正特措法 権利制限事態に法律上の歯止めなし

【検証コロナ禍】改正特措法 権利制限事態に法律上の歯止めなし

 前回、改正特措法で新設される「まん延防止等重点措置」は緊急事態宣言と実質的に同じであり「ミニ緊急事態宣言」にほかならないことを明らかにした。
 権利制限の内容は、政府が一方的に決められる政令に丸投げしている。しかもこの新たな「ミニ緊急事態宣言」はいつまでも続けることができ、発動・解除の基準もないため、法律上の歯止めがない。
 コロナ禍で怯える世論の下、憲法が想定していない「非常事態体制」を創出し

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【検証コロナ禍】新設される「まん延防止等重点措置」の本質は「ミニ緊急事態宣言」 しかも現行法より制限強化

【検証コロナ禍】新設される「まん延防止等重点措置」の本質は「ミニ緊急事態宣言」 しかも現行法より制限強化

 政府が提出した新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案が、立憲民主党との修正合意(1月28日)を経て、今日2月1日に衆議院で可決、参議院に送られ、3日にも成立する見通しと報じられている。(冒頭写真は、衆議院で採決された修正案)

 新設される「まん延防止等重点措置」は、国民の権利制限という面でみると「緊急事態措置」と実質的な違いがほとんどなく、その本質は「ミニ緊急事態宣言」である。
 しかも、

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