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西村大臣、東京の緊急事態宣言は「予防的な措置。総合的にステージ4ではない」と発言 基本方針と矛盾し、違法な宣言の疑い

 西村康稔経済再生相が4月28日、衆議院内閣委員会で、25日から第三次緊急事態宣言に入った東京都について「実は半分ぐらいは予防的な措置といっていい」「全体として総合的にステージ4ではない」と発言していたことがわかった。
 これは、東京都は病床の逼迫状況がステージ4ではなく、客観的に見れば「緊急事態」の状況にはなっていないと分かりつつ、将来的に大阪での変異株の広がりが東京に及ぶ恐れがあるため、予防的に緊急事態宣言を行ったとの認識を示したと解釈できる発言だ。

 メディアや野党の中には、予防的に「先手で」緊急事態宣言を発動することを求める声が高まっていた。だが、新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」)には、緊急事態宣言を予防的に出すことを認めるような規定はない。
 そもそも、特措法は、人権の制限が行われるときは「必要最小限でなければならない」(5条)とし、最も強力な措置がとれる緊急事態宣言の発令は「緊急事態」に該当する場合に限られる。政府が緊急事態に該当すると認定し、緊急事態宣言を発令すれば、知事に休業要請・命令や、全面的な外出自粛要請ができる権限を付与される仕組みとなっている(特措法32条・45条)。
 一方、「緊急事態」に至らない状況であっても、医療の逼迫のおそれがあるとき、いわば予防的な対策として新設されたのが「まん延防止等重点措置」だ。この措置では、営業時間短縮などの要請・命令もとれるが、休業要請や全面的な外出自粛要請までは認められない(法36条の6)。西村大臣自身、法案審議の際にそのように答弁していた。
 ただ、どのような状況になれば、緊急事態宣言を発出できる「緊急事態」に該当するかは、法律上明確ではない。そこで、政府は基本的対処方針で、感染状況と医療提供体制に関する指標を踏まえ、緊急事態宣言の目安を「ステージ4」、まん延防止等重点措置の目安を「ステージ3」とする方針を示し、国民に説明してきた。
 西村大臣の発言は、この従来の政府方針や特措法の想定に反し、東京都が(ステージ4相当の)緊急事態でないのに、「予防的」な目的で緊急事態宣言を発したことを認めるものだ。
 実際、緊急事態宣言の発出前も発出後も、東京都の病床使用率は30%台で、医療提供体制の指標で「ステージ4」に該当するものはない。そのため、東京都における緊急事態宣言は違法の疑いが生じている(参照:東京都の病床使用率30%台 緊急事態宣言の発令要件を満たさず違法の可能性も)。

 東京都は、もともと5月11日までまん延防止等重点措置を実施する予定だった。ところが、小池百合子知事がより強力な権限を求めて、4月21日、緊急事態宣言の発令を政府に要請し、政府が一段上の措置に切り替えた経緯がある(参照:都、緊急事態宣言を要請 小池知事「連休前にビシッと」=朝日新聞参照)。

 西村大臣の発言は、後藤祐一議員(立憲民主党)の質問に答える中で、出てきた。後藤議員は、東京都だけでなく、神奈川県など周辺県でも緊急事態宣言を出す必要があるのではないかと、西村大臣に繰り返し迫っていた。

<内閣官房の新型コロナウイルス特設サイトに掲載されている資料>

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西村経済再生相の発言文字起こし

後藤祐一議員(立憲民主党)
・・・やはり今回は神奈川の数字、千葉・埼玉もですが、東京都ほどは確かに新規感染者数などは若干少なかったと思いますが、むしろその感染拡大リスクを、緊急事態宣言によってそのお隣が増やしてしまうっていうのは非常によろしくない。
 だから今までも緊急事態宣言は、一都三県はセットでという形でやってたと思うんですよ。
 そこはその具体的な数字というよりは、こういう経済の一体性みたいなものを見て、一都三県を同時に、つまり今回の緊急事態宣言は東京だけではなくて神奈川・千葉・埼玉も同時にやらなかったのはなぜですか。

西村大臣
 その点、私共も非常に苦慮したところであります。
 色々考えましたし、それぞれ知事とも意見交換をさせていただきました。
 また専門家の皆さんにも、最終的にはおわかりして一様して賛同いただき、ご了解いただいてるところでありますけれども、あの基本的に生活圏・経済圏一体に考えているとのご指摘のような点は、私も基本に考えております。

 ただ今回、東京の感染レベルもですね、実は半分ぐらいは予防的な措置といっていいと思うんですけども、変異株が急速に広がるであろうから、感染者の数だけ見ればステージ4に入ってきてるんですが、病床とか考えるとまだ全体として総合的にステージ4ではないけれども、大阪の状況を考えればですね、東京は急速に広がるという中で、今回緊急事態宣言措置をとらせていただきました。
 知事とも連携をさせていただきました。

 三県はですね、それよりも一段低いレベ ルで、ご指摘のように今後上がってくることも当然想定をしておりますけれども、今のレベルはまだステージ3、2から3に行くかどうかのレベルで、それで知事と話しても、なんとかまん延防止等重点措置で、我々頑張っていくということも言われておりますし、今日の議論の中心になるかもしれませんけれども、まさに緊急事態宣言というのは非常に強い私権の制約を伴うものでありますので、これをどの範囲にかけていくかっていうのは私でも慎重に考えなきゃいけない面もこれは附帯決議でも頂いておりますので、そういったことを全体的に判断してですね、強い措置で押さえていきたい、その気持ちもあります。
 他方、私権の制約を伴うそして生活権をどう考えるかこういったことを全体としてバランスを見ながら総合的に考えてですね、今は東京に緊急事態宣言措置を行い、そして周辺は三県はまん延防止等重点措置で同等の措置をやって、また県民都民に呼びかけて移動を防いで行くという中で、なんとかこのゴールデンウィーク多くの皆さんに一都三県の皆さんはもうステイホームしていただくということを、強くお願いしながら、対策を講じていくという判断をしたところでございます。

後藤議員
 西村大臣はまん延防止等重点措置で、神奈川、千葉、埼玉を本当に守れるとお考えですか?

西村大臣
 まずそれぞれの地域にどういう措置をとり、やって行くのかこの権限は知事にあります。
 そして基本的には、知事がそれぞれの地域に責任をもっていただくというのが、基本だと思いますが、知事と連携をして私共、様々な措置、あるいは支援策、これを講じることによって、感染拡大、この17日間、ゴールデン大型連休を期にですね、抑えていきたいというふうに考えております。

 あの、まん延防止等重点措置につきましても、それぞれの知事と連携しながら、知事も悩んでおられます。
 どの範囲にかけていくのか、これも飲食店の皆さんはじめそれぞれの事業者の皆さんに、様々ご負担をお願いすることになりますので、知事も悩みながらやっておられますけれども、その知事の悩み事も私も聞きながら、またある時には背中を押しながら、ある時には知事の思いをしっかり実現するために、そういった連携を取りながらですね、まん延防止等重点措置を活用してですね、なんとかこの感染を抑えていければというふうに考えているところであります。
・・・(以下、略)

2021年4月28日、衆議院内閣委員会


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