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忌魅恐(第一期)

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記事一覧

禍話リライト 忌魅恐『もうすぐ事故が起きる話』

禍話リライト 忌魅恐『もうすぐ事故が起きる話』

『恐ろしい出来事』というものは。
曰く因縁の有無に関係なく、突然やってきて、去っていく。
そういうものらしい。

当時、某地方の大学院生だった男性、Kさんの体験談。

条件次第、ではあるが。大学生の夏休みは長くて暇なものだ。院生も、場合によっては、そうなることもある。
当時のKさんは、正にそういう学生だった。一年目にしっかり授業もレポートもこなしていたので、後は論文執筆のため、ちゃんとゼミに顔を出

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禍話リライト 忌魅恐『開かずになった自習室の話』

禍話リライト 忌魅恐『開かずになった自習室の話』

提供者である、鈴木さん(仮名、女性)
彼女が、某大学の院生だった頃の話。

大学院生ともなると、論文執筆の際に参照する書籍の量が膨大になる。
それらを持って大学と自宅を行き来するのも、かなりの重労働である。
それ故、ほとんどの大学でそうであるように、鈴木さんは学部から割り振られた自分の部屋、研究室に、書籍や資料を置いていた。

鈴木さんの通う大学は、学部生と院生で使用する建物が分かれていた。
院生

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禍話リライト:忌魅恐「屋上に誰かいる話」

 これがねえ、予備校の話なんですね。



 忌魅恐、についての詳しい前提はヴェナル軍曹氏による「序章」のリライトを参照していただくとして。

 冊子の中の記述から考えると、恐らくは今から十数年以上前に起きた出来事であるという。

 とあるオフィスビル。その最上階に予備校が入っていた。

 まず最初に断わっておきたいのだが、この予備校には何の曰くもなかったそうだ。
 成績の低下を苦にした生徒が教

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禍話リライト 忌魅恐『地蔵のいる踏切の話』

禍話リライト 忌魅恐『地蔵のいる踏切の話』

提供者であるAさん(男性)が、とある大学の院生だった頃の話。

Aさんの通っていた学部は理系である。
どんな学部でもそうだが、卒業論文を書くために、実験、解析、調査、そこから得られた精密なデータ。それらが必要不可欠となる。
卒論審査というのはそもそも厳しいものだが、こうした学部でのそれは、さらに輪をかけて厳しい。卒論審査が通らず、留年する学生も少なくない。

Aさんの年下の友人であるBも、そんな学

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禍話リライト 忌魅恐『元カノがあきらめてくれない話』

禍話リライト 忌魅恐『元カノがあきらめてくれない話』

某大学のオカルトサークルが取材した当時、サバゲーを趣味としていた社会人、Aさんの話。

(※オカルトサークルについては『忌魅恐 序章』を参照)

ある時、仲間内で。
今度はどこでやろうか。どこかいい場所はないか。
と、そんな話をしていたそうだ。

サバゲー用の正規のフィールドを使用すればいいのだが、毎回となると料金もバカにならない。
それに、彼らの生活圏の近場ではフィールドもそう多くはない。
する

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禍話リライト 忌魅恐『あの先生に関して覚えていること』

禍話リライト 忌魅恐『あの先生に関して覚えていること』

Aさんという女性の、小学校の頃の体験。

ある年のこと。
Aさんのクラスの担任教師が、変な時期に、突然別の人に変わったそうだ。

普通、担任が変わる時期といえば、概ね、学年が上がって新学期になった時だ。

しかし、その先生は、夏休み前の中途半端なタイミングで、Aさんのクラスへやって来た。

もっとも、前任の先生は若い女性だったため、
(おめでたか何かで、急に休むことになったのかな?)
と、その時の

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禍話リライト「川原で焼いた何かが思い出せない話」【忌魅恐】

 吉田さんの高校生の妹さんの話なんですけどね、クラスに馴染めなくていじめにあっていたようで、学校に行けなくなってしまって。
 ご家族も気を遣って休学させることにしました。
 しかし人の心というのは難しいもので、周囲が気を遣うと、気を遣われる側に負担になるし、今まで通りに接するのが一番だとは思うのですがなかなか難しい。家族だからと踏み込んだことを言ってしまうこともある。
 お互いに距離の取り方を探り

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禍話リライト: 忌魅恐「ただ静かに見ている人たち」

禍話リライト: 忌魅恐「ただ静かに見ている人たち」

これは、関東地方の話、ということにしましょう。
関東のとある地域に、安めのアパートが乱立しているような場所がありまして。
車が一台通れるかな、みたいな狭苦しい道に、
三、四階建ての古いアパートが密集してる、そういうところ。
住んでる人は外国人労働者とかが多いらしくて、
“ATTENTION”とか貼り紙がしてあるような。
まあよくある安アパートですよね。

そのうちの一棟に引っ越した奴がいて。
まえ

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禍話リライト(忌魅恐)「行水する家族の夢」

禍話リライト(忌魅恐)「行水する家族の夢」

大学生の頃の話だという。が、もう随分前に取材された話だから、体験者たちももう中年の域に差し掛かっているだろうと思われる。



大学三年生のころに、仲間たちとちょっとした旅行に行ったのだそうだ。
だいたい二泊三日程度、宿は安いビジネスホテルか、何なら車中泊、いっそ野宿でもいい。そんな気楽な旅だった。
ただ、一点問題があった。車の免許を持っている人間が一人しかいなかったのである。例えば院に進学する

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禍話リライト:忌魅恐【借りたものを返しに行く話】

 一種の、病院の怖い話になる。

 ある会社に勤めていたAさんが急に来なくなった。心配した後輩が上司に訊ねると、彼は深刻な病気で入院しているらしい。会社の健康診断で発覚し、そのまま病院へという運びになったそうだ。
 内臓系の疾患を患ったAさんはわざわざ山奥にある病院で治療を受けていた。上司も詳細はわからないが、どうやら難しい病でそこにしか専門科がないという。余程重篤だったのか、一週間か一ヶ月で終わ

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忌魅恐「残暑の過ごし方」(禍話スピンオフ)

忌魅恐「残暑の過ごし方」(禍話スピンオフ)

関西方面のとある学校の校舎は、戦時中からあった建物を転用したものだという。

地元のヤンキー三人が、夏の終わりにプールに飛び込むとか、そういう思い出が欲しいということで、学校に忍び込んだ。

Aが知り合いから仕入れた情報によると、その学校の警備員は大体一時間に一回程度巡回しているらしい。

皆で息を殺して物陰に隠れ、警備員を見送ると、プールの近くまでこっそりと移動する。フェンスをよじ登ると、プール

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禍話リライト番外編:忌魅恐『フジサキくんの家のお葬式の話』

事情があって会社を休んでいた先輩のAさんが久々に出社してきたときの話である。
後輩のBさんは、昼休みに腕を組んでなにやら悩んでいるAさんを見かけた。
(休んでいた間のことは細かく伝えたつもりだけど、聞きそびれちゃってわかんないこととかあったのかな)
「どうしました?わかんないことあったら教えちゃいますよ?」
「いやぁごめん、仕事に関係ある話じゃないんだけどね、ちょっと家のことだからさ」
Aさんと親

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忌魅恐「叫ぶ子供の夢/犬鬼ごっこの子供たち」

忌魅恐「叫ぶ子供の夢/犬鬼ごっこの子供たち」

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 禍話をよく聞くある人が初めて怖い夢を見たという。

 「見たい見たいと言っていたら見れるものなんですね」

 その人は老人ホームの夜勤中に禍話を聞いているらしく、深夜の仮眠の時にその夢を見た。

 仮眠をしていた部屋で叫び声を聞いて目が覚める。四方八方からつんざくような高い声。

ああああああああああああ

 「

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【怖い話】 双子鏡の話 【「禍話」リライト105】

【怖い話】 双子鏡の話 【「禍話」リライト105】

 髪をとても短くしていたのがきっかけだった記憶がある。
 現在なら「ベリショ」という言葉もあって、女性が短髪にすることも珍しくないが──

「平成のはじめ頃でしたから、まぁ目立ちましたよね。私は単にカッコいいと思って短くしてたんですけど」

 当時高校生だったWさんは、同じクラスの女子グループに目をつけられた。

「なにこの髪型ァ~って、汚いモノみたく指でつままれたりね。あとは教科書やカバンを──

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