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アメリカで出会った100の光景 No.16<大自然の絶景>アラスカトレッキング 雨の中の氷河


トレイルヘッドの駐車場には車は一台もなかった。それもそのはず。雨が降っている。トレッキング日和とはとてもいえない。
どうしようか、夫と家族会議。ちょっとだけ悩んで歩くことを選んだ。
翌日は氷河クルーズの予定だし、他に観光するところもない。そもそも、わたしは氷河が見たくてここにいるのだ。9月が雨の季節だということも織り込み済み。
元来トレッキングは好きではないが、以前よりかなり貪欲に積極的に挑むようになった。なにせ辺鄙なことこの上ない場所なんである。ここに来ることはもうないだろうと容易に想像がつくようになったからかもしれない。

さて、歩き始める。登りが続く。トレイルの真ん中を雨がちょろちょろ流れている。
山に作られたトレイル。トレイルの両側は低い木が生えているが、パーカーのフードは視界を狭めていて、自分の足元しか見えない。
雨の中歩き始めた後悔はすぐにやってきた。水たまりだ。
なるべく靴を濡らさないように端を歩くが、ぬかるんでいるのであっという間に靴は汚れる。だんだん中も湿ってきている。防水スプレーは思いっきりかけたのに、ほんの気休めだった。
小川のようになっている流れを渡る。なんとなく敷石のように大きな石が点在しているのは、雨が降るとすぐ川になってしまうからなのだろう。


遠く自分の両サイドにそびえる山々の山肌からは、幾筋も白い筋が見える。雨が細い滝となって流れ落ちているのだ。山頂はけむって見えない。
さらに歩く。一つ山を越え平らなところに出た。トレイルはいつの間にか現れた川の流れに沿うようになった。流れは速い。川の音が雨音に勝るようになった。
やがて、山の間に氷河が姿を現した。自分が氷河と同じ高さにいるのがうれしい。


そして目の前に今までの水たまりとは違う湖が見えてきた。そこが今回のゴール。


並走していた川は湖に流れ込み、正面からは湖に氷河が流れ込んでいる。
氷河は、向かいの山の間を流れる川がそのまま凍ったような形で湖に流れ込んでいる。



青白い厚い川は、中央が黒く見える。よく目をこらせば、湖に被さっている部分はかなりギザギザしていて青く見える。

氷河ほぼ独り占め。ほぼっていうのは、トレイルでは誰とも出会わなかったけど、そろそろ戻ろうかというときになって、他の人たちがやってきたため。こういう淋しいところで人と会うと、本当にホッとするのだ。


帰り道も雨が上がることはなかったが、気持ちはすっきりと晴れていた。ただし、気持ち以外は全身びしょ濡れ。
わたしは靴の中までぐしゃぐしゃ、リュックは見栄えを無視してスーパーのビニールに包んだため、そこまでの被害はなかったが、夫のリュックは中までぐしゃぐしゃ。財布、免許証、果てはパスポートまで。
帰国危うしか、と思うほどだったしわしわになったけど、さすがジャパンクオリティー。問題なく帰れました。

ところで帰国して家族にその話をしたところ、義妹はパスポートをジーンズのポケットに入れたまま洗濯してしまったことがあるそう。それでも次の旅行のときに問題なかったということで、パスポートも妹もすごい。


ポーテージ パス トレイル (アラスカ州)
Portage Pass Trail (near Whittier, Alask)

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