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『メンチカツとコロッケ』

昔ながらのお店が集まる場所。
私は商店街が好きだ。

商店街のなにが良い、って、小さなお店がひしめき合っているところがもう素敵。
お惣菜屋さん、八百屋さん、魚屋さん。
小さな中華料理店、居酒屋さん、お茶屋さん。
ぐるりと四方を見渡せば、ありとあらゆる面白そうなお店が並んでいる。

ショッピングモールも確かに似たようなモノではあるけれど、チェーン店には出せない魅力が、個人のお店にはあると思ってる。


我が街にも一応、商店街ぽいものはあって。
あくまで“ぽい“だから、実際は商店街なんて立派なものじゃなくて、学生が多く住むエリアに、申し訳程度に横たわっているだけのモノだけど。

でも、楽しいんだよね、歩いているの。

店先に並んだ野菜とか、果物。
つん、と鼻にくる魚屋さんの匂い。
惣菜屋さんのショーケースに並んだ揚げ物。
中華料理店の炒飯やラーメンの食品サンプル。
絶対に入らないけど、花柄の洋服や婆ちゃんが着てたような服を並べたお店。
ボーッと歩いているだけで楽しい。

その中に、馴染みのお惣菜屋さんがある。
そのお店はとにかくめちゃくちゃ安くて、ポテトコロッケが1個60円。10年前は40円だった記憶があるけど、当時から20円しか値上げしてないって、このご時世では結構すごい気がする。

別にすっごい美味しい!ってワケじゃなくて、チープな味ではあるんだけど、その安っぽい味が、恋しくなるコトもあるのだ。

私はいつも、そこでメンチカツを1つ買う。
メンチカツも100円で、あまりにも安すぎて、昔は「きっと豚や牛じゃない、謎の肉を使ってるんだ」と信じ込んでた。

ひとつだけ買ったメンチカツを、お行儀が悪いけど歩きながら食べて、ひと通り近所を散歩して。
飽きたら家に帰る。それがお決まりのパターン。

某感染症が落ち着いてきて、外でもマスクを外せるようになって、なんとなく、懐かしくなったからメンチカツを買いに行った。
ずっと出来なかったけど。ひさしぶりに外で食べるメンチカツは、昔と変わらない味がした。


そうして歩いていると、ふと前から歩いてくる学生ふたりとすれ違う。男の子2人組。
ひとりは自転車を押して、もうひとりはその横を歩いて。

その歩いているほうの男の子の手には、60円のコロッケが握られていた。

メンチカツとコロッケがすれ違う。
なんとなく嬉しくなった。
時代が変わっても、世間の潮目が変わっても、そして私が大人になっても。
変わらずに愛されるモノはちゃんとある。

安心した、って言ったらおかしいけど。

男の子の背中を見送りながら、今度はコロッケを食べよう、と思うある春の日の話。


\配信やるよ〜!!/

ヤスさんをお迎えして、のんびりと話します。
果たして人見知りの根暗が、ヤスさんを質問攻めにすることは出来るのか!?
乞うご期待!(やめて…ハードルあげるのやめて…)

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