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アオハルVチューバー〜連載まとめ(全42話 完結済)

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連載小説です。ゲーム関連のYouTube公式動画を埋め込んでいます。普通の書籍では実現できないことができて楽しいです。kei02様のイラストが素敵なので使用させていただいています。
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2023年1月の記事一覧

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第30回配信 危険なトーク

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第30回配信 危険なトーク

 ひとしきり頭を殴ったら、だいぶスッキリした。

「エリス、もう大丈夫だよ。スッキリしたから」

「……ユメオ、今日は休もう。ね?」

「平気だって。ほら、もういつもの配信時間を過ぎちゃったよ」

「こんな状態でさせられないよ。ねえ、なんで泣いてたのか話してくれる?」

 エリスが僕を、心から心配してくれていた。

(ああ、エリス。きみはなんていい子なんだ。きみにだけは、僕は隠し事をしたくない)

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第29回配信 彼女の部屋での闘い

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第29回配信 彼女の部屋での闘い

 一晩寝たら、昨日の妄想がバカらしく思えてきた。

(僕はなにを考えてたんだろう。エリスは昔からあんな感じじゃないか。単に人の欠点に寛容なだけだ。僕の性癖を見抜いて、似た者同士だと思ったわけじゃない。勝手に変態にしちゃってゴメンね、エリス)

 放課後、エリスと一緒に家に行き、リビングで紅茶をいただいた。

 エリスがクッキーを食べた。

 僕の心臓が、キュッとなった。

(ボリボリ、ボリボリ、ク

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第28回配信 妄想爆発!

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第28回配信 妄想爆発!

 次回、いよいよ二刀流同士の対決、というところで、ゲーム配信を終了した。

 ベッドギアを外すと、僕はエリスに沈黙されるのが怖くて、すぐに話し始めた。

「視聴者数はどうだった?」

「途中、150人までいったよ」

「マジで? 記録更新じゃん!」

「でも最後は90人に減ったけど」

「そっかー。もっと松井選手に、見せ場をつくってあげたほうが良かったかな?」

「そういうことじゃないよ。視聴者数

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第27回配信 小学生の闇

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第27回配信 小学生の闇

 巨大チュンチュンは、最後に飴をガリガリと噛むと、ようやく満足したのか、腰を振りながらバックネット裏に戻っていった。

 僕は気を取り直して、バッターに集中した。

 スーパースターズの4番は、松井選手だった。

 実況席のエリウサも、気を取り直した様子で声を張り上げた。

「出ました! 世界の4番。ゴーゴー、ゴリラ。ゴリラ松井選手です!」

 実のところ、エリスは野球に詳しくない。だから松井選手

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第26回配信 ASMRの世界

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第26回配信 ASMRの世界

 転ゲーを終了させて、エリスのベッドでベッドギアを外したとき、待っていたのは気まずい沈黙だった。

「……今日の視聴者数、どうだった?」

「140」

「えっ、140? すごいじゃん。過去最高だよね?」

「そうだね」

「……エリス、怒ってる?」

「別に」

「チュンチュンだろ?」

「は? 怒ってないって言ってんじゃん。意味わかんない」

 僕はもう、この話題には触れまいと決めた。

「今

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第25回配信 最高のチアリーダー

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第25回配信 最高のチアリーダー

 観客席に飛ばされたジャイアンが、タケコプターで戻ってくると、試合が再開された。

 一回表、ワンアウトランナーなし。相手チームのバッターは、3番センター新庄。

♢ぐーぐー:新庄さん、普通にかっこいいです!

♠︎仮面人:よっ、千両役者!

♣︎風雲降り龍:レッツ・シンジョイ!

♡糸車:ホームランをリクエストします!

♣︎顔しゃもじ:大河内志保も出して!

 新庄選手の人気もすごかった。なん

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第24回配信 アンチコメント

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第24回配信 アンチコメント

「ユメオ、今回は視聴者数が増えたわ。110人」

「よしっ!」

 100以上という数字を聞くと、やっぱり嬉しい。あなたがもし底辺Vチューバーなら、きっとこの気持ちをわかってくれるだろう。1桁だったらどうしよう、という不安に脅えている者にとって、2桁ならまあまあ、3桁はちょっとしたご褒美に感じるのだ。

 野球に関しては、これで傾向がはっきりした。

 ロッカールームで清原選手に注射をされたり、落

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第23回配信 勝負の行方

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第23回配信 勝負の行方

♢ぐーぐー:仮面人さん、出ましたよ!

♠︎仮面人:待ってました。よっ、千両役者!

♣︎風雲降り龍:イッツ・ショータイム!

♡糸車:ホームランをリクエストします!

♣︎顔しゃもじ:もっとチアリーダーを映して!

 大谷選手が出てきたら、とたんにチャットが入りだした。しかも応援は、あっち一色である。プレイヤーの僕としては、立場がなかった。

「えーと、みなさん。僕の奪三振ショーよりも、大谷選手

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第22回配信 激突、二刀流!

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第22回配信 激突、二刀流!

「ユメオ、視聴者また減ったわ。34人」

「マジ?」

「仕方ないわね。ユメオ、試合をやるって言ったのに、落合さんちに泊まってるんだもん。あれじゃあ私だって、観るのをやめようと思ったわ」

「……怒ってる?」

「怒ってはないけど、なにあれ? 風呂場で男の子がおしっこするなんて、くだらない」

「転ゲーは難しいんだよ。自分でストーリーを作ってるわけじゃないから」

「AIが、ユメオの脳内の願望を読

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第21回配信 野球選手のプライベート

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第21回配信 野球選手のプライベート

「今回の視聴者数はどうだった?」

「67人」

「え?」

 前回のライブ配信中の視聴者は、120人だった。その続きをやって67人ということは……

「なにかマズかったのかな。あんなにオールスターが出演して、人気の清原選手も出ずっぱりだったのに、半分に減っちゃうなんて」

「難しいわよね。別になにが悪いってわけでもないんじゃない?」

「やっぱり野球選手を出すなら、試合をしたほうが良かった。ロッ

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第20回配信 禁断のクスリ

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第20回配信 禁断のクスリ

♢ぐーぐー:ユメオさん、ロッカールームは危険です。行かないでください!

♠︎仮面人:クスリだけはいけません。子どもたちの夢を壊さないで!

♣︎風雲降り龍:キヨ、なにしてんねん。吉永小百合さんが泣くで!

♡糸車:清原さんのこと、信じています。もう決してヤクは射たないと……

♣︎顔しゃもじ:ロッカールームで二岡とモナを対決させて!

 僕と清原選手は、ロッカールームに入った。

 ほかにも選手

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第19回配信 スーパースターとの共演!

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第19回配信 スーパースターとの共演!

「ねえ、ユメオ」

「なに?」

「今回の視聴者数、過去最高だったよ」

「ホント?」

「120人観てくれてた。それに、チャンネル登録者数も、倍の10人になったわ」

「えっ、10人?」

 僕はエリスのベッドで、ガッツポーズをした。

「やったー。やっと手応えを感じたよ。長嶋監督や新庄選手が出てきたのが良かったのかな?」

「野球だったら、みんな見方がわかってるから楽しめたんじゃない? 豆腐の

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第18回配信 めざせ三冠王

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第18回配信 めざせ三冠王

 一晩寝たら、不思議なことに、低い数字が嬉しく思えてきた。

「視聴者6人、チャンネル登録者数5人!」

 心の中で唱えると、妙に清々しい気分になった。

「これぞ底辺。これ以上低い数字は、見つけるほうが難しい。まさしく底辺中の底辺Vチューバーさまだ。ということは、ここからは上に上がるしかない。つまり僕たちには未来しかない。よーし、やるぞー。未来があるって、なんて楽しいんだ!」

 放課後、エリス

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アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第17回配信 敗北からの幸福

アオハルVチューバー+YouTube公式動画〜第17回配信 敗北からの幸福

 ゲームを終了させた僕は、慌ててヘッドギアを外した。

 エリスのベッドでエビ反りになり、ズボンの上からお尻に手を当てる。

 コンプライアンスが出ている感触は……ない。

 鼻をヒクヒクさせた。匂いは特に、感じられなかった。

 強いて言えば、エリスのシャンプーの匂いが仄かにしたくらいだった。

「ユメオ、ごめんね。もらしたと言ったのは嘘」

 僕は浮かした尻をそっと降ろし、ベッドに坐る恰好にな

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