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夢間欧
2023年1月31日 05:37
ひとしきり頭を殴ったら、だいぶスッキリした。「エリス、もう大丈夫だよ。スッキリしたから」「……ユメオ、今日は休もう。ね?」「平気だって。ほら、もういつもの配信時間を過ぎちゃったよ」「こんな状態でさせられないよ。ねえ、なんで泣いてたのか話してくれる?」 エリスが僕を、心から心配してくれていた。(ああ、エリス。きみはなんていい子なんだ。きみにだけは、僕は隠し事をしたくない)
2023年1月30日 05:33
一晩寝たら、昨日の妄想がバカらしく思えてきた。(僕はなにを考えてたんだろう。エリスは昔からあんな感じじゃないか。単に人の欠点に寛容なだけだ。僕の性癖を見抜いて、似た者同士だと思ったわけじゃない。勝手に変態にしちゃってゴメンね、エリス) 放課後、エリスと一緒に家に行き、リビングで紅茶をいただいた。 エリスがクッキーを食べた。 僕の心臓が、キュッとなった。(ボリボリ、ボリボリ、ク
2023年1月29日 08:35
次回、いよいよ二刀流同士の対決、というところで、ゲーム配信を終了した。 ベッドギアを外すと、僕はエリスに沈黙されるのが怖くて、すぐに話し始めた。「視聴者数はどうだった?」「途中、150人までいったよ」「マジで? 記録更新じゃん!」「でも最後は90人に減ったけど」「そっかー。もっと松井選手に、見せ場をつくってあげたほうが良かったかな?」「そういうことじゃないよ。視聴者数
2023年1月28日 05:44
巨大チュンチュンは、最後に飴をガリガリと噛むと、ようやく満足したのか、腰を振りながらバックネット裏に戻っていった。 僕は気を取り直して、バッターに集中した。 スーパースターズの4番は、松井選手だった。 実況席のエリウサも、気を取り直した様子で声を張り上げた。「出ました! 世界の4番。ゴーゴー、ゴリラ。ゴリラ松井選手です!」 実のところ、エリスは野球に詳しくない。だから松井選手
2023年1月27日 05:24
転ゲーを終了させて、エリスのベッドでベッドギアを外したとき、待っていたのは気まずい沈黙だった。「……今日の視聴者数、どうだった?」「140」「えっ、140? すごいじゃん。過去最高だよね?」「そうだね」「……エリス、怒ってる?」「別に」「チュンチュンだろ?」「は? 怒ってないって言ってんじゃん。意味わかんない」 僕はもう、この話題には触れまいと決めた。「今
2023年1月26日 05:30
観客席に飛ばされたジャイアンが、タケコプターで戻ってくると、試合が再開された。 一回表、ワンアウトランナーなし。相手チームのバッターは、3番センター新庄。♢ぐーぐー:新庄さん、普通にかっこいいです!♠︎仮面人:よっ、千両役者!♣︎風雲降り龍:レッツ・シンジョイ!♡糸車:ホームランをリクエストします!♣︎顔しゃもじ:大河内志保も出して! 新庄選手の人気もすごかった。なん
2023年1月25日 05:28
「ユメオ、今回は視聴者数が増えたわ。110人」「よしっ!」 100以上という数字を聞くと、やっぱり嬉しい。あなたがもし底辺Vチューバーなら、きっとこの気持ちをわかってくれるだろう。1桁だったらどうしよう、という不安に脅えている者にとって、2桁ならまあまあ、3桁はちょっとしたご褒美に感じるのだ。 野球に関しては、これで傾向がはっきりした。 ロッカールームで清原選手に注射をされたり、落
2023年1月24日 05:38
♢ぐーぐー:仮面人さん、出ましたよ!♠︎仮面人:待ってました。よっ、千両役者!♣︎風雲降り龍:イッツ・ショータイム!♡糸車:ホームランをリクエストします!♣︎顔しゃもじ:もっとチアリーダーを映して! 大谷選手が出てきたら、とたんにチャットが入りだした。しかも応援は、あっち一色である。プレイヤーの僕としては、立場がなかった。「えーと、みなさん。僕の奪三振ショーよりも、大谷選手
2023年1月23日 05:56
「ユメオ、視聴者また減ったわ。34人」「マジ?」「仕方ないわね。ユメオ、試合をやるって言ったのに、落合さんちに泊まってるんだもん。あれじゃあ私だって、観るのをやめようと思ったわ」「……怒ってる?」「怒ってはないけど、なにあれ? 風呂場で男の子がおしっこするなんて、くだらない」「転ゲーは難しいんだよ。自分でストーリーを作ってるわけじゃないから」「AIが、ユメオの脳内の願望を読
2023年1月22日 10:58
「今回の視聴者数はどうだった?」「67人」「え?」 前回のライブ配信中の視聴者は、120人だった。その続きをやって67人ということは……「なにかマズかったのかな。あんなにオールスターが出演して、人気の清原選手も出ずっぱりだったのに、半分に減っちゃうなんて」「難しいわよね。別になにが悪いってわけでもないんじゃない?」「やっぱり野球選手を出すなら、試合をしたほうが良かった。ロッ
2023年1月21日 18:19
♢ぐーぐー:ユメオさん、ロッカールームは危険です。行かないでください!♠︎仮面人:クスリだけはいけません。子どもたちの夢を壊さないで!♣︎風雲降り龍:キヨ、なにしてんねん。吉永小百合さんが泣くで!♡糸車:清原さんのこと、信じています。もう決してヤクは射たないと……♣︎顔しゃもじ:ロッカールームで二岡とモナを対決させて! 僕と清原選手は、ロッカールームに入った。 ほかにも選手
2023年1月20日 21:36
「ねえ、ユメオ」「なに?」「今回の視聴者数、過去最高だったよ」「ホント?」「120人観てくれてた。それに、チャンネル登録者数も、倍の10人になったわ」「えっ、10人?」 僕はエリスのベッドで、ガッツポーズをした。「やったー。やっと手応えを感じたよ。長嶋監督や新庄選手が出てきたのが良かったのかな?」「野球だったら、みんな見方がわかってるから楽しめたんじゃない? 豆腐の
2023年1月19日 17:37
一晩寝たら、不思議なことに、低い数字が嬉しく思えてきた。「視聴者6人、チャンネル登録者数5人!」 心の中で唱えると、妙に清々しい気分になった。「これぞ底辺。これ以上低い数字は、見つけるほうが難しい。まさしく底辺中の底辺Vチューバーさまだ。ということは、ここからは上に上がるしかない。つまり僕たちには未来しかない。よーし、やるぞー。未来があるって、なんて楽しいんだ!」 放課後、エリス
2023年1月18日 21:20
ゲームを終了させた僕は、慌ててヘッドギアを外した。 エリスのベッドでエビ反りになり、ズボンの上からお尻に手を当てる。 コンプライアンスが出ている感触は……ない。 鼻をヒクヒクさせた。匂いは特に、感じられなかった。 強いて言えば、エリスのシャンプーの匂いが仄かにしたくらいだった。「ユメオ、ごめんね。もらしたと言ったのは嘘」 僕は浮かした尻をそっと降ろし、ベッドに坐る恰好にな