12. 継続的にクライエントを確保したいなら
フリーランスの日本語教師が継続的にクライエントを確保するために必要なことは何か。
半年でも1年でも2年でもクライエントが自分の下で日本語を学び続けるようにするにはどうすればよいのか。
そんなの決まってます。
クライエントの日本語学習における目標を実際に達成させてあげればいい。
クライエントが教師と共に自分の目標を達成すれば、そのクライエントは教師を学習パートナーとして絶対的に信頼してくれます。例えばクライエントが日本語能力試験(JLPT)のN2の合格を達成し、それは教師の力添えがあってこそだと思えば、そのクライエントが今度はN1を受験しようと思ったとき、経済面が許す限り同じ教師に声をかけるでしょう。
ですから、クラス契約を結ぶ前にはクライエントが日本語で何を成し遂げたいのかを明確化しておくことが必要です。
「日本語が上手になりたい」というような漠然としてものではなく、例えば「〇年△月に、日本の学会で日本語で自分の研究内容について発表をしたい」とか、「〇年後、翻訳版ではないマンガのワンピースを辞書なしで読めるようになりたい」とか、「公認心理士になるために〇年△月に〇〇大学の✘✘学部△△科の修士課程に入りたい」とか、「今度の7月に行われるJLPTのN1に合格したい」とか、とにかく限界まで具体的にクライエントに目標を設定してもらうのです。
これを聞き出すためだけに、報酬も貰わずに1時間使ったっていいくらいです。
教師はその目標とクライエントの実力と学習特性とをよく見極め、クライエントに合った教材と選び、学習スケジュールを作ってクライエントに提案します。クライエントが納得すればクラス契約は成立です。
クライエントにもうこれ以上は具体的にできませんというくらい具体的に目標を設定させると、その目標の達成のために何が必要かということも非常に絞りやすくなります。
日本語で研究発表がしたいなら、実際に発表させてみればいい。レッスン中いくら間違えたって、それは学びの過程ですから何の問題もありません。
辞書なしでマンガを読みたいなら、実際に日本語のを読んでみればいい。漢字が読めないというなら、それにフリガナを振ってあげれば十分な教材になります。
日本の大学院に行きたいなら、そこで指導を受けたい教官に会いに行かせればいい。直接、教官からどのような勉強や心構えが必要かを聞き出させたうえで、専門書を読ませたり、受験問題の過去問を実際に解かせてみればいい。
JLPTのように参考書があるものは楽ですが、クライエントが中上級以上のレベルとなれば、教科書では教えられないことが多いです。目標に到達した時にクライエントが手にしているはずの日本語の何かこそが、クライエントの教材になります。いわゆるレアリア(生教材)です。こういうタイプのレアリアを使うと、クライエントはそれを使う自分の姿がイメージできますから、目標を見失うことなく学習を継続できるわけです。
ただし、レアリアをそのままクライエントに渡したところで、彼らには手も足も出ません。そのレアリアを彼らにとって「ちょっと難しいかな?」と思えるくらいの難度に分割し、手が伸ばせるように落とし込んであげるのが教師の役目です。
そうやって進めた学習の結果、目標が達成されたら、また次の目標を立ててもらえばいい。もしかしたら、次の目標が立つまでにしばらく時間が空いてしまうかもしれません。でも、クライエントが本当に日本語を学びたいと思っているなら、クライエントとの信頼関係をゆるぎないものにしている限り、必ずまたこちらに帰ってきてくれます。言語学習なんて一生物の学習ですから、半年や1年の継続なんて当たり前です。
これは経験から保証できます。
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