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自作の詩まとめ

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16歳から30代前半までに書いた詩をまとめたものに、2023年から再び書き始めた詩を混ぜて発表しています。先入観なく読んでいただきたいため、一切の説明を省くようにしました。記事の…
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#現代詩

【詩】隣人とわたし

【詩】隣人とわたし

かすかな振動が
ほほえみのふるえが
隣人を目覚めさせた
わたしは白い陽の中に
堕ちた
隣人のつまびらかな密告によって

誤りに満ちた新月に復讐を宣言する
それでも新月はうたう
白い陽を反転させながら

うたは近づき
やがてわたしの戸を叩く

激しい焦燥の嚥下をしくじり
嘔吐する
わたしのまなこは虚空をさまよい
青いくちびるが冷徹に陳述した
—こころで見たかっただけなのです—

新月のうたが戸を開け

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【詩】未完の夢

【詩】未完の夢

        未完の夢

_____咲き乱れる白と黄の百合
  それらをむしっては撒き散らし
  坂道を大股で駆け下りる私

  下りきるとそこには
  閉ざされた棺の上に横たわった
  あなた
  白くて冷たい あなた

  遅かったか!
  あなたは私が卑怯なやり方で
  気付かせようとしていた
  「人間」を
  すでに超越していたのですね……

  そしてこの愚か者は絶望、したのです__

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【詩】無人駅

【詩】無人駅

太古より刻まれし記憶という絞首台に常駐しながら
この虚は自己の記憶を持たない

あなたは知らない
私があなたの指先でソナタを弾いたことを
私は知らない
あなたが私の指先でエチュードを弾いたことを

時を殺すため余儀なく冷然と暗黒をうかがう

跡形もなき空を滑り
発作的にして難解な罪を追い越し
違法な満月を今ここに抱いてみる

しかし時は
この虚の濁り目さえ歯牙にもかけず
煮え切らぬ悪意の切れ端を機

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