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地域企業とCSR・アライアンスがもたらす価値を模索する|地域視考

地域にまつわる書籍を読んだ。最近は「読書記録」というテーマでも記事を出しているが、小説・文学ではない書籍については「地域視考」のテーマとして記事を出したいと思う。

「地域視考」として、前回は気仙沼地域をテーマに記事を出している。前回の記事においても少しだけ触れているが、「地域視考」は地域活性化にまつわる話を実際に視たものとリンクさせた内容について書く記事である。

今回、地域活性化にまつわる話の材料となるのは、書籍「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」である。静岡県の浜松市でLPガス販売を中心に多角的な事業を展開しているエネジン株式会社が、戦略的CSR活動を展開して業績拡大を果たした経緯をまとめた一冊である。

静岡県浜松市は人口70万人超の比較的大規模な都市であり、本書においてエネジン株式会社は大企業でないと書いているが、2022年9月実績で売上高80億円を超える大企業であるため、気仙沼市や気仙地域(大船渡市・陸前高田市・気仙郡住田町)近辺の企業にとって直接参考になるかは定かでない。

一方で、本書は地方の内需企業が、地域の中で実際に取り組んだ活動について具体的に書いており、活動の意図に関しても分かりやすく伝えている。また、実施した活動自体は、多くの地方自治体、地方の中小企業でも実施可能な範疇にあることから、読んで参考になる点は多いと思われる。

上記の書籍のリンクは広告であるが、興味が湧いたらぜひ読んで欲しい。読むのにかかる時間は1時間〜1時間30分程度なので、ちょっとした時間で読み切れる文量である。外食時の待ち時間や昼休みを使って読むのには丁度良い一冊だと感じる。

書籍「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」の感想

まず、書籍「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」に関する感想を書いておこうと思う。書籍の大まかな内容は、先述の通りである。本書籍において、エネジン株式会社は業績拡大にあたり、以下の活動を実施したと伝えている。

  1. CSR活動(地域のお役に立つ活動)

  2. アライアンス(他企業との提携)

  3. メディア出演(パブリック・リレーションズ)

早い話が、地域に役立つ活動をして地域内での会社の知名度を上げつつ、他企業との提携で自社の弱みを補い、かつそれらの活動をメディアに取り上げてもらい確固たるブランディングに繋げるといった話である。言葉で書くのは容易だが、実際に活動を持続させるのは容易でないと思われる。

アイデアを得たいなら価値ある一冊

繰り返しになるが、書かれている取り組みの内容は、恐らくほとんどの地方自治体、地方の中小企業・個人事業主でも行えるものである。もっと言えば、NPO法人などの非営利法人や有志団体、地方自治体行政でも実施可能な内容である。そのため、参考アイデアとしての価値は高い。

一方で、同じ規模で実施可能かは極めて疑わしい。何せ浜松市の人口は70万人超であり、本書籍に書かれている取り組みを始めた時点での業績は年商80億円もなかったと思われるが、とはいえ多くの中小企業・個人事業主と比べれば遥かに大きな規模だったと推察される。

そのため同様の取り組みを行ったとして、近しい規模の成果を得られる可能性は高くない。いっそ低いと見られる。つまり個々の活動は再現できるが、得られる効果の再現性が乏しい可能性が多分にある。

根本的な話をすれば、そもそも多くの中小企業・個人事業主にCSRを実施できるかどうかの問題が生じるだろうし、アライアンスを組めるほどのリソースが存在するかも疑わしい。

企業規模が小さいほどにメディアに取り上げられる可能性は低下するため、書籍に記載されている活動をしたところでメディアが相手にしてくれるかは何とも言えない。

また、厳しい言い方をすると、本書籍に書かれている各種活動に関して、成果のファクトとなる数字がほとんど記載されていない。確かに業績は伸びたのだろうが、それぞれの活動が実際にどれだけの数字に跳ね返ったのか、最も重要な情報が欠落している。

あくまで筆者の個人的な考えを伝えるとすれば、業績が行き詰まっている会社が新しい取り組みを何かしたいと思ったとき、新しいアイデアを得る一点において役立つと考える。経営力や企画力、そのもの業績の向上を目的として読む一冊としては、あまりお勧めできる書籍ではないと感じている。

また、メディアに関する内容については、その多くが個人的な感想に終始しており、鵜呑みにできる内容ではない。『そういう意見もありますよね』くらいの感覚で読んだ方が良い。

本来的にメディア戦略とは、本書籍に書かれているような単純なものではない。現代ではメディア活用に関する環境・条件が大きく変わっているため、本書籍を鵜呑みにすると時間・労力・金を浪費するだけになる可能性が低くない。

気仙沼市を舞台に「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」のアイデアを活用してみる

度々書いた通り、「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」に書かれているアイデアは、地方自治体や企業・団体を選ばずに活用できる内容である。そのため、今回の「地域視考」では、気仙沼市を舞台としてどのような活用の途があるのか検討したい。

とはいえ、実のところ本書に書かれているような活動の多くは、既に多くの企業・団体が行っている内容と言える。戦略的CSR活動やアライアンスといった言葉を用いていないだけである。

多くの地方自治体、企業・団体がエネジン株式会社ほど成果を出せないのはなぜなのか

それでは、なぜエネジン株式会社のように大きな成果を出せないのか? 多くの理由が考えられるが、やはり大きなところで言えば、そもそも自治体の規模や企業規模が異なる点が挙げられる。

異論はあると思われるが、現実問題として自治体の規模や企業規模が諸々の取り組みに与える影響は大きい。実施効果も大きく異なってくる。たとえば、本書で書かれているCSR活動の多くは、人が集まってこそ意味のある活動(イベント)である。

仮に同じ活動(イベント)をしたとして、人口70万人超の自治体と人口6万人程度の自治体では、1回の活動(イベント)に集められる人数が全く変わってくる。同じ人数を集めようと思ったら、人口6万人程度の自治体では活動(イベント)回数を増やす必要があり、となれば企業の体力が求められる。

それでも「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」が役立つ理由

そうだとしたら、本書を参考に地域の活性化や企業の業績改善を語るのは不適切でないか? と思われるかもしれない。それは違う。あくまで同じ規模で実施すること、同じ規模の成果を出すのが難しいだけで、活動そのものに価値がないわけでない。

CSR活動(地域のお役に立つ活動)が、企業の知名度や評価を上げるのは確かであるし、その結果として仕事の引き合いが増えるのは確かである。それを戦略的に実施すれば、間違いなく業績を伸ばせるだろう。

アライアンスにしたところで、その価値は高い。何せ、多くの地方の中小企業・団体・個人は、十分なリソースを持っていない。強みよりも弱みを数多く持っている企業・団体・個人が圧倒的に多いと見られ、それを他社(他者)によって補う意義は大きい。

そもそもアライアンスは、大手企業も頻繁に行っている活動である。寧ろ大手企業はアライアンスを重視しており、絶対的に必要な活動に位置付けて日々アライアンス相手を模索している。

豊富なリソースを社内に有している大手企業でさえ実施している活動を、リソースに欠ける中小企業・団体・個人が実施しないのは、いっそ怠慢と言って良いほどである。アライアンスに関しては、やる価値が高いどころかやらなければならないと言った方が良い活動と言える。

メディアの活用にしたところで、本書に書かれている内容に問題があるだけで、それ自体はやらなければならない活動に違いない。やればやるほど成果が出る活動と言えないため、緻密な戦略や計画が必要になるが、やらない理由は全くない。

以上より、本書を参考にして地域や地域で事業を営んでいる企業・団体・個人について思考することには大きな価値がある。というわけで、本noteでは、気仙沼市内の企業・団体・個人の活動と「なぜ、地域のお役に立つと会社は成長するのか」をリンクさせ、地域について視考していきたいと思う。

その内容は、次回に伝えるため、ぜひ更新を待って欲しい。申し訳ないが、次回の地域視考の更新日は未定である。早期にはできるようにしたいと思っている。本noteをフォローすると、その情報が通知されるので、ぜひフォローいただきたい。

※続編

※上記3冊は広告です。興味が惹かれたらぜひ読んでください。

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