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ビバリーヒルズでエディマフィンを売ればいいのにと思った話~背伸びしていたあの頃と、映画のこと~

こんばんは!『Vale tudo』編集長の暮石引です。
今回はエッセイと、少々映画紹介をさせていただきますね。

5月のテーマ「あの頃、俺たちが見ていた物」として、私がカフェで体験したことを軸に書かせて頂きます。

それでは、なんでもありな『Vale tudo』をお楽しみください。

◆謎のマフィン

「エディマフィンの映画知ってる?」
「しらなーい」

という会話を聞いたのは、井の頭公園付近のカフェでコーヒー飲んでる時でした。

店員さんは若い大学生の男女。

客が私しかいないことから、のんびりと二人で会話をしていた。

エディマフィン?エディ・マーフィじゃなくて?


そんなことを思いながら聞き耳を立てて、会話を聞いている。

若い男性は「自分のみぞ知る名作」のように、自分が見たエディ・マーフィの映画のことを女性に話していた。

女性の方はあんまり興味はなさそうだが、二人の会話は進んでいく。

エディマフィン…エディ・マーフィ…

もしかしたら、女性の方はその間違いを知っていて、黙っているのかもしれない。

間違いを正してあげたい。ただ一言「マーフィだよ」と言ってあげたい。

しかし彼の話はそのまま続く。

過ちは正されることなく、日曜日の夕方、他愛もない会話はカフェという空間を漂っていく。

「エディ・マーフィの映画なら、わざわざ説明する必要もないだろ」

と、思った時、私は自分の年齢と、今カウンターで会話をする彼との年齢を考えてみた。

まだ大学1年生くらい。

だとすれば、エディ・マーフィの映画を知らない同年代の方が圧倒的に多いのではないか?

知っていても1998年公開のドクタードリトル
とかだろう。

あとはやっぱりエディマーフィの代表作といえばビバリーヒルズコップとか…しかしこちらは1984年公開の映画だ。

一体何の映画を見たんだろう。
ほとんど知らないに等しいエディ・マーフィの出演作を思い出してみる。

しかし、いくら考えてもドクタードリトルとビバリーヒルズコップしか出てこない。


周りがマーベルだなんだと言っている中で「俺はビバリーヒルズコップ好きでさぁ」と話すことは、もしかしたら彼にとってはとても背伸びをしていたのかもしれない。

私達が当たり前のように見ていた作品を、当時を経験してない者が懐かしむ。

なんだが、前に鬼マングローブ(Vale tudoの企画・イラスト担当)と話をしていた時を思い出して、また歳を取ったなぁと感じるのでした。


◆多くの背伸びが、自分になる。

思えば自分の若い頃も、背伸びばかりしていました。

聞いている音楽はほとんど同年代の聞いている物でなく、少し古めのアーティストの曲ばかり。

クラスの友人がオレンジレンジやEXILEの話をしている中で、私は桑田佳祐とか小田和正とか、あとエルヴィス・プレスリーとか聞いていました。

もちろん映画もそう。

みんなが海猿だとか恋空だとか見ている中で、私は少し古めの映画ばっかりみていたことを覚えています。

しかし今思い返してみると、あの頃自分が「みんなとは違う」と思っていた感性は、別になんてこともなくて、むしろ多くの人が知っているタイトルだっただろう。

「古い知識を持っていることが一つのステータス」だと思っていた自分が、恥ずかしい。

しかし、その背伸びのおかげで本当に好きになる物だってあるんです。

コーヒーだって背伸びして飲んでいたが、今ではカフェ巡りとハンドドリップや器具集めが趣味です。

寝つきが悪いということから、夜にカフェインの摂取はしてはいけないというのに、どうしても飲みたくなってしまうほど、コーヒーが好き。

あの時の背伸びがなかったら、今の娯楽はない。

音楽も、映画も、何もかも、あの時の背伸びがあったからこそ、身についたこともある。

もちろん、何の身にもならなかったことの方が多い。いや、身にならないことのほうが断然多い。

◆いつだって過去はよく見える。

私の好きな映画で「ミットナイトインパリ」という映画があるんですが、その主人公は「1920年代の文化めっちゃ好き。あの頃の作家とかめっちゃ好き」って言ってる人物なんですよ。

けどラストは「どんな時代よりも、今が大事」っていうことに気がつくんです。


おそらく、それが真実なんだと思います。

「あの頃、俺たちが見ていた物」というテーマで今月はやっていますが、正直に言うと純粋にあの頃を振り返れない自分がいます。なぜかというと、背伸びをしてあの時あった物に目を向けていなかったから、だと。

背伸びして手に入れた物もあるが、あの時あった物を見ずに生きて来たことも、少々心残りだなぁと、思うのです。

今という時間にある物に目を向けることも大切かもしれないですね。

決して過去を懐かしむな、とは言ってないですよ。
過去を振り返りつつ、今を生きれるように、バランスよく生きて行きたいです。

◆全ての最新作は、Oldiesになる。


しかし、あの頃当たり前に金曜ロードショーでやってた映画はもう随分古い映画としてカウントされてしまうのか。ミッドナイトインパリだって、もう10年前の映画!?時間の流れが速すぎる…

今、放映されている映画も、全て懐かしい作品になる。
何十年後に、恐らく同じように、若い人が「自分だけが知る名作」として語ることになる。

それの繰り返しですね。なんだかPUNPEEの「Oldies」が聞きたくなって来たなぁ。

ヒップホップMC・PANPEEが「良い未来が訪れて欲しい」という思いを込めて作られた曲。ノスタルジーを感じるメロディと、あらゆるものが過去になり、未来はどうなるかわからないが、あがきながらも進んでいこうというリリックが素晴らしい一曲。

余談ですが、私はエディ・マーフィの映画を一作も見ていません。

あの若い男性のことを「エディ・マーフィのことなんて…」という資格も、私には本当はないんですよね。

素直に、何かを語る人の話に耳を貸し、その情熱を共有できる度量が、今の私には本当に一番必要なもかもしれないですね。

しかし、エディマフィンって、いいよね。
ビバリーヒルズの新名物として、新しく売り出せばいいのに。


<今回出て来た映画紹介>

◆ドクタードリトル

ヒュー・ロフティングという方の書いた児童文学。

第一次大戦を経験した著者が、殺処分される軍馬を見て心を痛めたことから、動物と会話が出来るドリトル先生のお話が作られた。

第1作『ドリトル先生アフリカゆき』が刊行されたのは1920年。(上記した「ミットナイトインパリ」で主人公が憧れた時代の作家である。)

原作はビクトリア時代のイギリスが舞台だが、エディ・マーフィがドクトル先生を演じた本作では、舞台は現代のサンフランシスコに、職業は獣医に変更されている。

2020年にあのロバート・ダウニー・Jrが主演でリメイク。

最低の映画を選んで表彰する「ゴールデンラズベリー賞」において、2021年度の最低作品賞をはじめ、最低監督賞、最低主演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr)、最低スクリーンコンボ賞、最低脚本賞、最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞の最多6部門でノミネート。

このうち最低前日譚・リメイク・盗作・続編賞を受賞した。


◆ビバリーヒルズコップ

1984年公開。エディ・マーフィの初主演映画。

腕はいいけど問題ばかり起こす刑事、アクセル・フォーリーは友人を殺され、犯人を捜しに休暇を使ってビバリーヒルズへ単身乗り込む。

このnoteを書くために早朝に視聴。
「ザ・娯楽映画」と言った単純明快なストーリー。
金曜ロードショーで見るのに最適と言った印象。面白かった。

1984年に公開されていた映画は「グレムリン」「ターミネーター」「インディ・ジョーンズ魔宮の伝説」などそうそうたる顔ぶれの中で興行収入第2位である。(2億3476万ドル)

ちなみに1位は「ゴーストバスターズ」(2億4221万ドル)

◆ミッドナイト・イン・パリ

2011年公開。オーウェン・ウィルソン主演。
ウディ・アレン監督の名作。

小説家になりたい脚本家のギルは、婚約者とパリ旅行中にひょんなことから1920年代のパリにタイムスリップしてしまう。

「失われた世代」と呼ばれた作家達や、画家、音楽家などの芸術家達に会い、そして尊敬する作家、ヘミングウェイに出会う。
ヘミングウェイの紹介で師との言えるガートルート・スタインに自分の小説を読んでもらえることに。ギルは、婚約者とのパリ旅行そっちのけで執筆活動に勤しむ。

主人公ギルはまさに懐古主義であるウディ・アレンの化身と言って過言ではない。(主人公演じるオーウェン・ウィルソンは監督の物真似をして演技している。)ロマンティックな作品だが、監督自身は女性関係は少々だらしないことで有名。だらしないというか結構下衆なことしてるので、気になった人は検索してみてください。

監督の趣味丸出しで撮られたこの映画だが2011年のアカデミー賞脚本賞を受賞。低迷していたウディ・アレンを救った作品。

暮石の今まで見た映画の中で、かなり好きな映画。

◆まとめ、れるのか?

いかがでしたでしょうか?
出来れば私の大好きなジェームズボンドシリーズや、バックトゥザフューチャー、ジャッキーチェンの作品なんかも紹介もしたかったのですが、それはまた別の機会に…。

これからも私はきっと背伸びをしていくと思います。その背伸びが、未来の自分を作りあげてくれるといいなと思います。

次回更新は5月22日です。

それでは、良い土曜日の夜をお過ごしください。

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