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Vaio Stera ~転生先で推し変しかけてる~ 2章」#10 強情な騎士とどうしようもない偽花の二組の回 Vol.2

会議のメンバーに、ざわつきが走る。

それは、と続ける久遠多夢。

「面白さの総取りのシーンを目指す、という事か?」

「そうだね。でもボクが言いたいのはそうじゃない。なんていうか、短い映画を撮ろうという話さ」

「短い映画?」

「今バーチャルの星海に出ているアーカイブは、長い映画よろしく長い時間の者が多いからね。なら、短くまとめてこうインパクトをコンパクトに伝えるよう何かが欲しいのさ」

「まあ動画なら手軽に見れますからね」

相槌を打ちつつ、合わせる三億。なるほど、と久遠多夢は続ける。

「インパクトをコンパクトに、ねぇ。その発想は無かったが、具体的には何をやるのか決めているのか?」

「それは今後の企画会議で案を出していこうよ。ちなみにボクは『縛りを設けたホラーゲーム』なんか良いと思ってる」

「何故ホラー? 俺がホラーはそこまで怖がらないの知っているだろう?」

「時光さんは無駄にメンタル強いですからね。本当に無駄に」

三億からの嫌味に、うるさいと答える久遠多夢。

「ホラーである理由は、リアクションではなくて。『初見殺し』を狙っているんだ」

「しょ、初見殺しって、まあホラーゲームってそういう所あるよな。思ってもない所から罠とか出たり、追いかける敵が出たりとか」

「その初見殺しを回避しつつ、クリアを目指していくという話か?」

「それに加えて、縛りも考えているんだ」

それはね、と繋げるスノウ。

「腕立て伏せしながら、なんてのはどうかな!」

「え、腕立て伏せしながら、ですか?」

HALHALからの驚きの声に、そうだよと続けるスノウ。

「だってさ、ただゲームするだけでは皆飽きが来てるじゃん? だから要素を加えて面白くしていこうという話さ」

「いいだろう、受けて立つだがお前の華奢な体でできるのか?」

「それはキミだって同じじゃない? 左腕は耐えれそうだけど、右腕はどうかな?」

二の声もなく、同意する久遠多夢。それにHALHALが心配の声を出す。

「大丈夫ですか久遠多夢さん? 流石の体力お化けの久遠多夢さんでも、無茶は……」

「大丈夫だ。それなら、HALHALにも手伝ってもらうからな」

「……え?」

「スノウも俺もホラーゲーム、そこまで怖がらないんだ。だから、リアクション役をだな」

「何を言ってるんですか、二の声も無く同意ですよ」

「セレナ、そこは否定するとこ、じゃなくて?」

「待った待った!! 俺らもホラー、一緒にやるのか!?」

さも当たり前の事のように同意するセレナを見て、待ったを出すヴェイン。

「そうしゃなきゃコラボじゃないだろう?」

久遠多夢の何を当たり前のことを、という顔に、ヴェインが苦言を呈する。

そこで、ガテリアが。

「それいいな。ゲームは3人コラボという事でいこう。まあオレ様も遠目で見てるから安心しろよ。それならヴェインも怖くないだろう?」

「俺は嫌だぞ!? あとりぼんにゅーも確かホラーダメだったハズだぞ!? お前も反対しろよ!!」

「わたしは確かに苦手ではあるが、見てる分ならなんともないぞ。ホラー実況見ながらイラストを描いた事もある」

「HALHAL? お前も何かいってくれ!」

「セレナの手を、握ってがんばって、見ます!」

「チクショーーーーーーーーーー!! 危険へ真っすぐー-----!!」

ヴェインの悲鳴をよそに、三億はあらあら、と言う。

さて、とガテリアがここで会議をシメに出る言葉を出す。

「一旦はこれで決まりという事で。では、次回の会議では、具体案を抽出していこうと思う。というわけで解散」

ヴェイン以外のメンバーが、口々にお疲れという中で、ヴェインは震えたままだった。

「ホラー嫌だホラー嫌だホラー嫌だホラー嫌だホラー嫌だ……」

「震える子犬を運んでおきまーす」

「任せた」

「いやー-!! 助けてくれー!!」

スノウに連れていかれるヴェインの悲鳴をよそに、この後の日でも、会議の詳細は決まっていくのだった。

〇ー〇ー〇

収録当日。

覇王ヴェインは項垂れていた。

「とうとうこの日が来ちまったか……」 

「がんばりましょうヴェインさん! ガテリアさんの手を握るのもありですよ!」

「HALちゃん、俺には握れる相手がいねえんだよ……ガテは後ろで待機だし……りぼんにゅーは女子だし。アイツを握る程の男気はねえよ……いや握るとダメなのか……」

「ま、まあ。がんばってください」

「うう……がんばる、か……」

HALHALが応援するも、ヴェインは項垂れる他なかった。

「ぶぇいん、おまえはもう少ししっかりしろ。わたしなんてあの高慢ちきとの対決が残ってるんだぞ」

「うう……そうだな……俺もこの後頑張らせてもらうよ……」

「まぁまぁ。りぼんにゅー様。貴方も花に染まればより可憐さが映えると思いますので。花に染まらせてもらいますわ」

「百合漫画の読み過ぎだな。後悔させてやる」

「あいかわらずバチバチだ……もお自分で頑張るしかないのか……」

ヴェインは、胃が痛くなるばかりであった。

〇ー〇ー〇

「デハ、お二人とも始めてください」

メッセンジャーPの合図を皮切りに、撮影が始まる。

「こんにちはー王国住民の皆さんたちー? 反逆之従騎士達(リベル・サーヴァンツ)のスノウだよー!」

「どうも。Fakers Flowerの時光久遠多夢だ」

「今回はね、久遠多夢くんと一緒にこのショートなホラーゲーム、『マンションパニック』というのをやっていこうと思うんだ!!」

「このゲームはマンションの屋上に何故かいた主人公が、マンション1階を目指して脱出を目指すゲームだ。目的の部屋を探って、そこでキーアイテムを見つけていくというのがゲームのポイントだ。ちなみに大体のクリア時間は30分との事だ」

「しかも、今回は腕立て伏せしながら、という縛りを設けるんだ!! 対決のルールとしては、『どっちが早くクリア、かつどっちが腕立て伏せをしたか』というものになるよ!」

「その際、『膝をついてはいけない』というのがルールではある。一応、初見殺しが多いゲームだから、ゲームオーバーになっても大丈夫らしい」

「説明は以上なので、早速やっていくよー!!」

「他のメンバーも入ってきてくれ」

久遠多夢からの指示の元、反逆之従騎士達(リベル・サーヴァンツ)、Fakers Flowerのメンバーが入ってくる。その中で特に、ヴェインは酷く『見たくないオーラ』を出していた。

「HALHALです、よろしくお願いします。今回はリアクション役という事で、久遠多夢さんを応援します」

「三億セレナです。お嬢様のメンタル保持に努めます。そこの筋肉番組よろしく時光さん、必ず勝ってくださいね」

任せろ、と答える久遠多夢。

「べいんがうるさくなるとは思うが、かてよスノウ」

「……ああ。気だるい」

「ヴェインちゃん、もっと応援してね?」

「……おう、がんばれ、よ」

(先が心配だなあ)

スノウは若干ながらヴェインを心配し、ゲームプレイの位置につく。

司会はガテリアが就いており、そこで開始の合図をした。

「それでは、腕立て伏せしながら短いホラーゲーム、どちらが先にクリアできて、腕立て伏せしているかの対決、開始!!」

こうして、戦いの火蓋が切られた。

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