長編小説 Vaio Stera ~転生先で推し変しかけてる~ 2章#7 「おらぁ! 逆襲すっぞ!の回」
その後もNone Lose Dayとも話が進み、ここである事に興味を持った創田。
ここで気になったのは、フィン以外のメンバー、おでゅーと宇宙浩りゅうについてだった。
「おでゅーさんについては何だが危ない印象があるのですが、宇宙浩りゅうさんってどんな方なんですかね?」
「そうねー、りゅうはねぇ。なんというか、不思議と混沌をそのまま体現したようなやつよ」
「不思議と、混沌……??」
なんだろう。(それは結構両立するのでは)と言いそうになった創田だが、そこはぐっとこらえた。
「りゅう……宇宙浩りゅうは、いつも宇宙とネットの事を第一に考えている宇宙とネット好きの子でね。ネットをね、カオスの根源と言っているのよ」
「ある意味間違ってはないような気もしますが……凄い考え方ですね」
結局は言った事になった創田の失言。だが、None Lose Dayは気にせずそのまま続ける。
「凄いのはあの子、宇宙関係の知識なら大体答えられるのよ、スマホを見ずに。月の地名とか朝飯前よ。なんなら、外宇宙の知識まであの子集めてるから」
「凄い知識人だ……! そういう勉強熱心な人は素直に尊敬しますね」
「あの子にとっては勉強というよりかは、生きがいみたいなものらしいね。そのせいか、バーチャルの星海に来ても結構探検漬けで。あっちこっち行くもんだから、ホント世話するこっちは大変よ」
やれやれ、といった感じのNone Lose Day。その顔からは、創田は苦労と同時に、嬉しい感情を垣間見た。
None Lose Dayはプロデューサーというよりかは、チームの母親的な存在なのかなと創田は思った。
「一回りゅうと会話すると分かるわ。あの子、結構カルトじみた思想を持ってるから」
「カルト、なるほど……一度話してみようと思います。でも分からなくもないので」
「まあ熱意の方向があれな感じだけど気を付けてね」
気を付けてね、と言われるとは、少し危険なのだろうかと感じた創田。まぁ仲良くして欲しいとは言われたので、そのうち話そうかと思う。
次に気になったのは、おでゅーだった。
「おでゅーさんって普段は何をしてるんですか?」
「ウチのクリエイト担当、おでゅーね。おでゅーはね、まだ人間になりたてだから、バーチャルの星海をよくりゅうと一緒に散歩するのよ」
「散歩ですか?」
「そうね、本人は『もっといろんなことをしりたい』と言って、アバター達と積極的に交流をするのよね。それのおかげで、一部のファンからは親しみを持たれているのよ」
「なんていうか、結構ちゃんとアイドルしてる感、ありますね。あの子は凄い支持を得ていると思いますよ」
そうね、と答えるNone Lose Day。
「まだおでゅーは人間の常識とかを学んでない節があるから、そこで私が色々と教育をしているんだけどね。でもあの子は自分から良く勉強するのよね。小さい子がいるようで楽しいって思えてる」
創田は、None Lose Dayの表情を見て、彼女のやさしさを伺う。だがここである事を思い出す。
「そういやフィンさんには、レーザーをぶちかましてすみません銃を向けないでください」
「……そうね、おでゅーは特にカワイイものがスキでね。おでゅーは結構貴方に興味津々だったわね」
「(黙って銃をなおした……)そ、そうなんですか」
カワイイものスキと言われ、やはり自分はカワイイ見た目になっているのかなと思う創田。
そのせいで、スノウやフィンに狙われるのかなとも思ってしまった。
「おでゅーはクリエイト担当として何を作っているのかというと、要塞だった時からの着想と、可愛い動物アバターから着想を得て、動物型の兵器を作り出すわね。自身の要塞内に存在するエネルギーを用いて、作り出すのよ」
「物騒だ……」
「でもフィンが疲れてライブをしてない時は、おでゅーが動物型アバターと交流してるのを見るわ。大きな手でヨシヨシするのよ。まあ直タッチは止めなさいと言うんだけれどね、まあヨシとしてるわ」
(いやいいんかい)
Vstarが直接触って交流は少々危険が危ないのでは? と思ったが、そういうのが許される世界なんだろうと(まあレンが散々アバターを吹き飛ばしていたりするので)、創田はそう解釈する事にした。
〇ー〇ー〇
ソングバトルの結果。勝ったのはフェニだった。
フェニが最後に放った長めのリリックで、フィンに止めをさし、フェニが勝利を飾る事になった。
これによりねおんわーるどのファンが増える事になっており、彼女(?)らのフォロワーは今現在増えている。
そしてフィンの方は、全力で落ち込んでいた。
「もう、マジ無理……フェニカスに負けるなんて……死んじゃう……もう、むりぃ……」
「あーあー、フィンさんすねてますねー。おでゅーさん、拾って隅に置いて布かけて大量に水を用意しといてください。この時のフィンさんどんどん飲むんで」
「わかったー。ふぃん、かたきとるからねー」
「おおう……たの、むうう……ガクリ……」
その後、フィンは静かになっていたのだった。
「フェニちゃん、お疲れ~。流石にフィンちゃんは手ごわかったね~」
「はぁ……はぁ……。もう立てない。頭が動かない……。もうマジこっちも無理……」
「フェニちゃん、座っててください。後のゲームバトルは、こっちが勝ちを収めてきます」
「たのんだ、よー。ガクリ……」
汗だくだったフェニは、スタジオの休憩スペースで濡れたタオルを頭に被り、地べたに寝そべって休んでいた。
ソングバトルで戦ったお互い二人とも、満身創痍だったのだ。
その後はゲームバトルとクリエイトバトルが行われる想定だったのだが、ソングバトルが思ったよりも長引き、時間が押してる状態となっている。
そこで、スタッフアバターから提案されたのが、『タッグバトル』である。
今回の形式だと、二人一組になって戦うという事になる。
さらに出された対決内容は、「50対50のテトリス対決」。
これはお互いのチームに分かれてテトリスをし、テトリスのブロックを消す事によって、敵対するチームへ邪魔をするブロックを乗せるという形式のテトリスである。
スタッフが集めた一般アバターを参加させて、チームのメンバーを合わせて50体同士の対決で戦うのが、今回の企画である。
「時間が押してるとはいえ、容赦しないからね~!」
「まあXesyさんが荒れるとは思いますが、まあ仕方なし。何とかします」
「ぜしー、げーむするとき、こわい……」
「まぁまぁ、手を出すワケではないので。アティクシが策でなんとかします」
四人の女性(?)達が会話するうちに、ゲーム開始準備が整い、お互いゲーム筐体が置かれている席に座る。
用意された筐体は、まるでゲームセンターにあるゲーム筐体の様であり、画面の周りに青い重厚なフレームが飾られていた。
「こういうおしゃれなゲーム筐体、あるよね~。ワタシこういうのスキ~」
「私はあまり見なかったのですが、このおしゃれさはわかりますね」
「おでゅーは、よくわからない」
「とりあえず、触ってみて……まあ、アティクシでもこれなら何とかなりますかね」
異世界転生者達用のゲーム筐体の周りには、ゲーム筐体がそれぞれ48機置かれてある。
そこに、選り取り見取りな多種多様のアバター達が席に座っていく。
ねおんわーるどの側には、ロボットのようなアバター。宇宙人のようなアバター。戦車のようなアバター。中には、とても小さいマスコットのようなアバターがいる。
Cat Flying Galaxy側には、主におでゅーが普段から仲良くしてる動物アバター達がメインに座っていく。
普通の一般人が見たら、『中に人が入ってますか?』とツッコみたくなるような感じで、ボタンに手を添えて、レバーを握る姿がそこにあった。
「じゃ、みんな、いっくよ~!」
「では皆々の衆、作戦どおりでおねげえしま~し!」
「さ、作戦通り?」
レンの疑問にりゅうは答えず、『50対50のテトリス対決』ゲームが開始される。
「いくよ~! ってなんかいきなり集中攻撃が始まっている~~!?」
Cat Flying Galaxy側が取った戦略は。
集中攻撃だった。
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