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「事業に活かすリサーチ」の組織浸透 - ペパボがべぢまきさんに社外顧問をお願いした話 -

この記事に興味を持っていただき、ありがとうございます!
GMOペパボ で全社のリサーチを推進しているプロダクトデザイナーのまあやと申します。

この記事では、リサーチを事業成果につなげるため「社外顧問と協力してモデルケースをつくり、リサーチの組織浸透を進めた事例」を書きます!

💡 こんなお悩みを抱えてる方のヒントになればと思います。

・デザイン、ディレクションなど目の前のタスクに追われていて、効率的にリサーチをしたいと思いつつ、中々できない兼業リサーチャーの方

・現場のリソースが足りないため、組織的にリサーチが浸透しない状況に悩まれているマネジメントラインの方

リサーチに限らず、「組織浸透」にお悩みを感じてらっしゃる方に何かしらのヒントとなるかもしれませんので、ぜひ読み進めていただけると嬉しいです🏃

リサーチを組織で取り組む上での課題

前提として、ペパボには個人のスキル向上のためのガイドを目的としたスキルエリアシステムがあります。 その中で、私が専攻しているリサーチは次のように定義されています。

デザインは仮説立案と意思決定の連続及び繰り返しである。
良い仮説の発見と意思決定のためには十分の量の判断材料が必要である。

私が入社する前から、リサーチスキルエリアを専攻された先輩デザイナー方が「なぜリサーチが必要なのか?」など、デザイナー勉強会で伝えたり、積極的にリサーチを含めたプロダクト開発を推進したりしていました。
しかし、ペパボでは、カラーミーショップ、ロリポップ、SUZURI、minne、レンシュなどの複数サービスを運営しており、

各サービスごとにリサーチの実施状況に差分がある
・リサーチの効果に対し、懐疑的
・リサーチを資産として活用できていない
・また、具体的な対策に至れるほど、各サービスにおけるお悩みごとが明確にされていない

という課題がありました。

社外からノウハウを獲得するために、べぢまきさんにリサーチ顧問を依頼

課題に対して、サービス全体を見渡しているデザイン部が動いてくれました…❤️‍🔥下記をゴールとして設定し、社外へのリサーチ顧問を検討し始めました。

  • 結果として組織でリサーチに取り組める文化を醸成し、体制強化につなげる

  • 社内のリサーチスキルの底上げとして、社内では得られない外部のエキスパートの知識・スキルを獲得する

上記をゴールとして、ペパボと同じ「事業会社の組織の中で泥臭くリサーチに取り組んでいる」という点や、自社及び外部の組織でもリサーチ活動を導入・定着する活動をしているソフトスキル面も含めて支援いただく期待を込めて、他社でUXリサーチ組織をリードされているべぢまきさんに、社外顧問としてリサーチの組織浸透する仕組みづくりを約半年間ご指導いただくこととなりました。

社内共通の課題「リサーチしても施策に活きない」への対応

まず、リサーチチーム(ueponさん / 私)からべぢまきさんにご相談しながら、プロジェクトにおける大方針2つを決めました。

  1. リサーチスター案件をつくる

    • リサーチの成果が目に見えて分かりやすいモデルケースとして、特定のサービスに伴走し、実施事業インパクトのある「スター案件」をまず生み出す。それにより、見聞きした社内メンバーが「リサーチは意味のあるもの」を実感しやすくなる状態をつくる

  2. 社内におけるリサーチの課題・ゴールを構造化し、組織的な活用の体制づくりにつなげる

    • 社内における課題の把握・構造化

    • 今後注力すべき課題の可視化

次は「社内リサーチ」として、全社に対して、現場・役職者それぞれにアンケートに回答いただき、各サービスでポイントとなりそうな回答をいただいた方に1on1のヒアリングを行いました。サービス特有の課題が見えてきたと同時に、共通のメイン課題が見えてきました。

社内リサーチで浮き彫りになった「リサーチしても施策に活きない」

・リサーチの目的が達成できない
・コストに見合うリターンを実感できない
施策に活用された事例がない

リサーチの重要性を感じつつも、多忙な業務や、リサーチに対する敷居の高さのイメージ、ゴールから逆算されたリサーチがなされないことなど、こういったお悩みを抱えている方は、ペパボ以外でも少なくないかと思います。

モデルケースとしてSUZURIを選択

以下の理由から、モデルケースとしてSUZURIメンバーとチーム結成しました🤝

  • SUZURIの課題感が、他サービスが抱えている課題感とも共通しており、横展開のポテンシャルが高い

  • SUZURIがリサーチ強化の取り組みをしようとしていた時期と、プロジェクトの活動時期が一致していた

プロジェクト体制図


全貌をこの記事に掲載するとボリューム過多のため、以下についてはSUZURI miruteさんが記事にバッチリまとめてくださってるので、ぜひご参照ください!

・リサーチにおけるSUZURIの課題
・プロジェクトを通して達成したかったこと
・実際にどのように進めたのか
・結果どうなったのか

Research Portal 運用中

リサーチスキルを持ったデザイナーが全サービスに所属しているわけではないので、サービスによって質が偏らないよう、担保していく必要があります。 プロジェクトで感じたリサーチに対する課題の解決・強化ツールとして、全社で活用するためのResearch PortalをNotionで作成しました。 経緯・中身の詳細については、これまたボリューム過多のため、こちらの記事をご参照ください!

Slackで「Research Portal使ってください」とアナウンスするだけでは、中々 実務で手が伸びない方も多いと予想したため、PM・デザイナーを中心にプロジェクトで得た結果・知見の説明会も全社で行いました。

わいわいスレ、みなさんのめっちゃ嬉しいお言葉…

展開時の盛り上がりだけでなく、「使っています!めっちゃいい」という声や、「こんな情報も載せていこう!」など積極的な提案もいただき、嬉しい限りです。 「作って終わり」ではなく、複数サービスを運用しているペパボの強みを活かし、様々な厚みのある視点でドキュメントをブラッシュアップし、全社のリサーチ体制強化に繋がるよう、社内でリサーチに取り組むメンバーで引き続き運用していきたいと思います💪

べぢまきさん視点の「リサーチの効果的な進め方や組織づくり支援」

べぢまきさん(通称:師匠)に改めて、今回のプロジェクトについてお話を伺いました!

🎤 べぢまきさんについて自己紹介をお願いします
現在は主にUXリサーチャーとして、リサーチの実施だけでなく、組織内でのリサーチの効果的な進め方や組織づくりも推進しています。 副業でもUXリサーチの指導やレビューしたり、今回のプロジェクトのように「組織の中にどうやったら風土ができるか?」などの相談も受けています。


🎤 ペパボの顧問業に承諾された理由を教えていただけますか?
最近の副業で、社内に指導者がいないジュニアメンバーの育成をしていて、「リサーチがしやすい環境にするにはどうすればよいか?」という話がよく出ていました。 「リサーチ実施スキルのクオリティやサポートより前に、解決すべき点がある」と考えていたタイミングで、ペパボからまさにそこの相談をしたい!とお話をいただきました。


🎤 そういった悩みを抱える企業の共通項はありますか?
「リサーチしなくても、今までなんとなく回っていた」という状態でリサーチするため、「リサーチによって、何が変わるのか体感できない。けれども、やったほうがいい」という話はよく聞きます。 「リサーチによる、明確な変化がわかれば、GOが出る」といった相談もよく受けました。 「ユーザーのことをもっと知った方がいいよね!」とみんな同じ方向を向いているけれど、活動のROIを高めるにあたり、リサーチをしたことがあまりないので、アウトカムがどういうものなのか?事業インパクトの効果とは?がわからない人同士で議論しても、明確な答えが出せず、リサーチ実施前で止まってしまうケースが多いように感じます。

🎤 顧問を受けていただく前に持っていたペパボのイメージについて教えてください
デザイナーのスキルエリアがとても良いと感じていました。
また、最初はリサーチの理解を促進する講座やインプットの役割を予想していたので「他の方が最適かもしれない」とお伝えしましたが、CDOからご依頼いただき、お話を深堀ってお伺いすると「ペパボのメンバーは講座やOJTより、ウェットな伴走型の方がマッチする」とのことだったので、それであれば、これまでの自分の経験とマッチすると思いました。

🎤 プロジェクト中に、顧問視点で感じたことを教えてください
実査をすると、プロジェクトが終わったらそれで終わってしまい、携わったメンバーのスキルは伸びるけれども、組織的な効果は継続しづらいと思います。しかし、今回作られていたResearch Portalなどは、リサーチしやすい環境作りに繋がり、顧問がいなくなっても、組織に残り、効果継続が見込めると思います。 また、組織課題に対する調査と議論は重要なため、最初に社内リサーチにしっかりと時間をかけたこと、表層的に上がってくる課題や期待に対して、「これを解決することによって、組織は本当に変わるか?」という視点で、インサイトや、そもそもの方向性を深ぼり、真の課題を探れた動きがとても良かったです。

🎤 他社と比較して感じられたペパボの特性があれば教えてください
これはメンバーの特性ですが、動きがクイックでした。
毎回のMTGで「これだけアウトプットでるのか!」と予想外の分量での進行・レビュー依頼など、確動性が高いと感じました。 顧問という形で入ると、「べぢまきさんが考える組織のあるべきを教えてください。それに設定します。」という流れになりがちだが、そうではなく、私は顧問として「問いを投げる役」で、それに対してペパボメンバーが考える役割分担がすぐにできたのも良かったです。 「答えを教えてください」ではなく、「何を考えないといけないのか?」をペパボ側でねってくれました。
また、施策やプロダクトに反映しないと「リサーチしても変わらなかったね」となりやすいため、miruteさんがPMとしてリサーチで得たものの活用ムーブを引っ張ってくれた点も素敵でした。

🎤 プロジェクトで感じられた効果を教えてください
これまでの経験を統合する必要があったので、私自身の経験にもなりました。 「今までの経験を他の人に伝える、教えると、こういう言語化になるんだな」など感じることができましたし、ペパボから「こういう進め方をするとスムーズなんだな」と学びを得るシーンもありました。
あとは「役職者に対するアンケートは、一般的に難航する企業が多い」と無意識に選択肢から除外していましたが、ペパボでは役職者の方もアンケートやヒアリングに協力的な方が多く、驚きました。今後別の企業をサポートする際にアドバイスする選択肢が増えたなと感じます。
リサーチ結果をどのように使っていくかが大事なので、今後、プロダクト開発においてペルソナを主語にして話し続ける、ペルソナも完璧ではないので、アップデートし続ける・必要に応じてペルソナを入れ替えするなど、継続的な取り組みを期待しています。


🕵️‍♀️ 毎回MTGで、べぢまきさんの具体な経験談や、文化醸成する上で社内に対する適切な表現に関するアドバイスなど、学びが目白押しでした。
(「べぢまきさんMTGがあった日は、1日気持ちよく仕事ができる」とSUZURI nagamiさんがおっしゃってましたが、全員首もげるくらい賛同です☀️ )

ペパボ視点の「プロジェクト中に意識したこと」「当初の課題に対する効果の実感」

ペパボメンバーにも、それぞれの視点で今回のプロジェクトについてお話を伺いました!

デザイン部
べぢまきさんに指導いただいたことで、リサーチチームをはじめとして、関わった全員が大きな刺激を受けたように感じます。
特にSUZURIのPM、事業部長にもリサーチによる事業インパクトを感じてもらうことができ、組織としてリサーチに取り組むための文化醸成につながる成果を生み出せたと感じます。 リサーチチームメンバーの自信につながっていったこと、実際の事案を通じて関わる人が増えともに実行した実績が生まれたこと、今後も継続するモメンタムが生まれたこと、この辺りがプロジェクト当初の目論見通りにできたことは、成功と言えそうです。

SUZURI
「リサーチ結果の活用」を推進する上で意識していた点は、「プロジェクトをやって満足」にならないためには、どうすればいいか?を常に考え、「いかにサービスの資産にできるか?」をとても意識していました。 今回のリサーチ結果から分析した「ターゲット層の属性」は、今後サービスで長く活用していくものであるため、「腹落ちできていないロジックはないか?」をしっかり見極め、必要な時間は捻出するようにしました。それに対して、リサーチャーたちもとことん伴走してくれたと思います。
メンバーそれぞれの強みをベースに役割分担できていたと感じていて、モデレーターをしたメンバーが回数を重ねるたびにインタビューが上手になったり、これまでリサーチに取り組んでいなかったメンバーもリサーチの流れを一通り経験したうえで自分のスキルにされていたり。みんなそれぞれにリサーチスキルを成長させる機会になったことも良かったです。
プロジェクトで得た結果として、新たに発足したプロジェクトにおいて、「ターゲット層の属性」を共通言語として活用し、クリエイターさんへの施策を実施する上で、適切なアプローチについてチームメンバーで会話できるようになりました。
机上の空論から、リサーチ結果を踏まえた議論にしよう、という雰囲気が、 今回のリサーチに関わったパートナー以外も含めてSUZURI全体で醸成されたことが大きな変化だと思います。

リサーチチーム
このプロジェクトは初期段階から「組織におけるリサーチ活用のゴールとは何か?どう言語化すべき?」「このリサーチプロジェクトの定性/定量的な評価指針は?」など、高い視座で理想像を描くことが求められたため、普段行っているリサーチとは異なる頭の使い方が必要でした。
そんな悩みに対し、べぢまきさんは常に経営・リサーチャー視点をスイッチしたアドバイスをくださり、毎回「この視点見えてなかった」という発見と刺激をいただいていました。 組織にコミットするリサーチャーとしての在り方を、まさに「師匠と弟子」のような関係で学ばせていただいたように感じます。
SUZURIメンバーのスタンスも最高でした。私たちは「脳内同期」と合言葉的に使っていたのですが、徹底して同じ目線で実行できたことが大きかったように感じます。例えば、リサーチチーム側が「SUZURIのドメイン理解が浅く、どこまで踏み込んでいいのか…」と足踏みしそうになった時、「遠慮せずMTG時間確保してください!」「お互いどんどん意見出しましょう!こちらも気にせず言っていきます!」と声をかけてくださったことで、明確なゴール・役割分担はしつつも、お互いの強みを活かしながら、全員が責任感を持って前のめりで進行できました。 記事冒頭で行った社内リサーチで、全社の方のインサイトを深掘りできた結果、プロジェクト後にSUZURI以外のサービスのメンバーとも連携できている点も、大きな実りです。

まとめ

・リサーチの組織浸透を推進するためのノウハウを外部から得るために、ペパボは社外顧問を選択し、現場のリサーチのノウハウだけでなく、「事業に活かすリサーチ」の組織浸透の知見と成果を得た
事業インパクトのある「リサーチスター案件」を生み出すことで、全社に対してリサーチの重要性を示しやすくなる
・社内におけるリサーチの課題・ゴールの構造化を明確にすることで、組織的な活用の体制づくりにつながる
得たリサーチデータを資産として活かし続ける姿勢が重要。また、組織浸透のツールとしてドキュメント運用も効果的である

打ち上げの時に記事に載せる写真撮るぞぉぉ!!
> 楽しすぎて撮るの完全に忘れる🍻
> だいぶ後半に思い出してパシャリした1枚

べぢまきさん師匠へのご相談
社内で指導者不足のお悩みを抱えてらっしゃる企業の方がいらっしゃったら、「社外顧問」という1つの手法もご検討されると良いかもしれません。べぢまきさんにご相談してみてはいかがでしょうか🫶

ペパボ、絶賛デザイナー採用募集中です
リサーチに限らず、ペパボにはデザイナーが活躍できるスキルエリア、サービスが複数あります! ぜひお気軽にお問い合わせください。社内一同、大歓迎です🫶

「どんな人が働いてるんだろう?」と気なった方、ペパボのデザイナーの様子が見えるアウトプットまとめも、ぜひご参照ください🥳

最後に

プロジェクトメンバーの意見中心にまとめてきたので、最後に自分の声を書きます✍️
以前から「リサーチは目的ではなく手段」という言葉を社内でよく叫ばせていただいてたのですが、意思決定を迅速にする手段としてリサーチを活用することで、

・チームメンバーの共通認識・共通言語を生み出し、脳内同期がスムーズに行われる
・リサーチ結果を共有資産として広く長く活用できる
・リソース配分や、今後の施策の優先順位を検討できる

という結果を、しっかりと全社にお伝えできる学び多きプロジェクトでした。主導・推進役として走らせていただき、感謝です…😭

プロジェクト後も、全社に対する報告会など行うことから「リサーチを施策に活かしたいけれど…どう進行すればよいか…」など、積極的な質問やコメントをいただく機会が増え、ペパボ内で前向きな変化が訪れ、感無量です..😭

そして…プロジェクトメンバーのみなさま、最高でした!
本当にありがとうございました!!(n回目)
(内輪ノリ記事にならないよう、ここまで心の中に抑えていましたが、溢れ出る感情)

読んでくださった方にとって、「組織浸透に対する課題あるわ〜」と共感いただけたり、「こういう打開策もあるのか〜」と少しでもお悩み解決の糸口になったら幸いです。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました💌


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