インドネシアの小さな村で
「アティー!ジャランジャランしよう!」
子どもたちが勢いよくわたしの部屋に入ってくる。
マンディを終えたばかりの私の髪はまだ濡れたままだ。
「アティー!はやくはやく!」
背中を押され、腕を引かれる。
アティーとは、ここでもらった名前だ。
わたしは急かされながら表に出る。
土煙舞う、乾いた道が何処までも続く。
灼熱の太陽の下、私たちは歩く。
あてもなく、どこまでも。
太陽みたいな子どもたちが歌いだす。
単純なメロディー。気持ちの良いメロディー。
わたしはこの歌を忘れないように
五線譜に書き留める。
こころの五線譜に。
ジャランジャラン(JalanJalan)とはお散歩のことだ。Jalanは、動詞で「行く」、名詞だと「〜通り」を意味する。
インドネシアの小さな村で過ごした日々と
ジャランジャランという言葉の響きを
わたしはずっと覚えている。
*
今日の一冊 『世界のことばアイウエオ』黒田龍之介(筑摩書房)
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