見出し画像

望み

吉田美紀子さんの「消えていく家族の顔」という漫画を何気なく読んだら、涙が止まらなくなった。

好きで認知症になる人も、
好きで家族に迷惑をかける人も、
好きで認知症になった家族を叩いてしまう人もいないのだ。

認知症になってしまい、
娘に怒られたお母さんが、
朝目が覚めた時に自分がめちゃくちゃにしてしまった部屋の状態に驚愕し、
入ってきた娘に向かって、
「頭の中がね、いつもモヤモヤしてるの…
ごめんね、バカになってごめんね」
と言いながら、ハサミで自分の髪を切っている。それを見た娘が、お母さんの前に立って泣いている場面。
夜、頭の中で若い頃に戻ってしまったお母さんが、自分の娘がどこかでお腹を空かせているのではと探しに行こうとすると、すでに大人になっている娘に見つかり、怒られてびっくりしておしっこを漏らしてしまう。イライラが頂点に達した娘はお母さんにビンタを食らわせてしまう。
娘が旦那さんに向かって泣きながら呟く。
「お母さん、一緒に死んでくれないかな…」
娘が項垂れる机の上にはたくさんの薬が…
その頃お母さんは、娘にビンタされた頬を赤く腫らして、頭の中では小さいままの娘を探して、夜の街を徘徊している…

つらすぎて涙が止まらなかった。
これがたくさんの家庭で実際に起きているし、
自分だって
娘でもあり、母でもある。
どちらの立場にもなり得るのだ。

自分の親の、頼りになって元気だった頃を知っているからこそつらいんだよなぁ。
家族だからこそのつらさがある。

うちの親は、もし自分がそうなったら早めに施設に入れてね、その分のお金はとっておくから。
と言っている。そうなってしまった自分を子どもには見られたくないのだと、自分も親になった今ならそう思う。

私は自分の娘に、
この漫画に出てくる娘さんと同じ思いはしてほしくないと切実に思う。
もし自分がそうなったら生きていたくないとさえ思う。
でも本当は、誰だってそうじゃないか。
人生は、ままならないものだとつくづく思う。

日本は長寿国だ。
だけど、健康寿命は決して長くない。
たくさんの管に繋がれて、意識もなく、
会話もできず、食べ物を直接胃に流し込むようになってまで、生きていたいとは思わない。

健康で、
意識がはっきりしていて、
自分のことが自分でできるうちに、
苦痛もなくある日突然ぽっくり逝きたい。
これが私の最高にわがままな願いでもある。

私の曽祖母と祖父は、私の祖母と父母に在宅で介護されていた時期がある。
祖母も父母も声を荒げたり、手を出したりすることはなかったが、とても大変だったと思う。
だから、誰にも助けを求められず、在宅介護の末に手を出してしまい、自首するニュースを見ると、本当に胸が痛くなる。

健康寿命が尽きる時に寿命も一緒に尽きた方が幸せなのかもしれない。
そういう風になったら救われる人が多いのではないか。
少なくとも私はそうだったらいい。

そんなことを考えてしまった夜。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?