雨のコーヒーショップ
今日は雨の日
小雨から本降りになると
コーヒーショップの窓の外を
アノマロカリスが泳ぎ始めた
カンブリア紀の海棲生物だ
雨足がさらに増してゆき
ついにどしゃ降りになると
デボン紀の肺魚や三葉虫と一緒に
シーラカンスの群れが泳いでいる
まるで太古の水族館だ
しばらく見惚れていると
雨足がいくぶん穏やかになり
窓の外はイモリやサンショウウオや
カエルのご先祖さんみたいな
怪体な姿の両棲類ばかりになった
それでもずっと見ていたら
雨はすっかり小降りになり
ドスンドスンと音を立てて
T-レックスやトリケラトプスや
プラキオサウルスなどの恐竜が
駅前広場をのし歩いている
とうとう雨が上がり
空がカラリと晴れ渡ると
どこかで始祖鳥がひと声鳴いて
駅前広場の立木も大通りの街路樹も
カラフルな鳥達でいっぱいになった
囀り声がとっても心地よい
恐竜や両生類はいなくなったし
ずっとこのままだったらいいのに
だけどしばらく経つと
また空がどんよりと曇ってきた
鳥は平凡なスズメとハトだけになり
ヒヒとヒトが腕を組んで
駅前広場の噴水の前を歩いたり
バスに乗ったりしている
元に戻ったんだ
*マガジン:「コーヒーショップの物語」
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