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太乙金華の帰還
コーヒーを飲みながら
窓の外をぼんやり眺めていると
巨大な金バエの王様が
家臣とウジ虫の軍隊を引き連れて
大通りを行進しているような気配がする
あるいは推定138億年振りに
太乙金華が隣りの噴飯宇宙から
タンスの奥のヘソの緒経由でワープして
帰還祝賀パレードをしているのか?
私のモジャモジャ頭に巣を作って
卵を温めているカラスに聞いてみると
全長三百メートルの黄金の百足が
大通りを這って行くところだと言う
それはスゴいやらキモいやら
席を立って見に行こうとすると
「動くな! 卵が孵ってからにしろ」
カラスはそう言って私に釘を刺し
自分はムカデをつつきに飛んで行った
世界中のカラスが集結するらしい
私は卵を三段腹のしわの間に挟んで
温めながらコーヒーを飲んだ
コーヒーカップを皿に戻した途端
ペリリッ、殻の割れ目から
小さなお目目がコンニチハ
カラスの雛だと思ったら
赤ん坊の私だった
太乙金華のご帰還だ!
*マガジン:「コーヒーショップの物語」
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ユング/ウィルヘルム著『黄金の華の秘密』
(ヘッダ画像)のタネ本
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