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台湾は「民主主義のDX」、日本の「デジタル庁」はどこまでやれる?
台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏の自著「デジタルとAIの未来を語る」を読んだ。
デジタル化ではない
日本政府も今年デジタル庁が立ち上がるので「先行している台湾の事例を見ておこう」ぐらいの気持ちで読んでみたが、想像しているものとは全くがレベル違うことがわかった。
台湾政府のデジタル化とは、単に紙の書類を電子化し、申請をオンライン化する、というものではない。DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めているのだ。
しかも、国の根幹に関わる民主主義に関して。
DXとは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念」と言われている。「これまで電話で注文していたものを、メールにする」のはデジタル化。ウーバーというアプリができて「お店が自由に配達を頼め、自由な時間に働くことができる」ことがDXである(ウーバーについては賛否があるが)。
台湾は、これを民主主義に関して行なっているのだ。
民主主義のDX
例えば、国民が政策を自由に提案をできるサイトがあり、ここの投稿に対して2ヶ月で5,000件以上の賛同があれば「政策に反映させないといけない」というシステムを作り上げているそうだ。
これによって、これまで国会議員に届かなかった声が、どんどんと政策に反映されてきているという。16歳の女子高校生が提案したプラスチック製のストローの使用禁止が法案化されたり、ごく少数の障害を持つ方に影響する防虫剤の使用を制限する法律が成立しているという。
まさに民主主義のDXである。
タン氏は「傾聴の民主主義」と名付けているが、この姿勢があったからこそ、コロナ感染症の初期混乱期に、すぐにマスクの在庫状況がわかるマップが作成され、「ピンクのマスク」をバカにされた子供のために、政府の人間がみんなピンクのマスクをつけるといった対応ができたというのだ。
ちなみに、マスクの購入はID制にしたものの、ICカードを持たない老人のために、きちんと保険証での対応もしたところが「傾聴」の素晴らしいところである。
日本のデジタル庁は?
もちろん、日本と簡単に比較してはいけない。
タン氏も指摘している通り、台湾の民主主義は、80年代からの国民の努力で、90年台に勝ち取ったもので、国民のみんなが、民主主義を自ら手に入れたという実感を持っていて、政治参加への意欲が強いのだ。
でも、それにしても、今、日本人のほとんんどの頭の中にあるのはデジタル庁とは、「書類を電子化して、電子申請を進める部署」だと思う。
台湾のように、より良い民主主義を進められる、つまり民主主義のDXを成し遂げられるような部署になるよう、まず、ぼくたち国民の意識を変えていく必要があるのかもしれない。
そんなことを感じさせられた本であった。
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