【短編】痛いの痛いの飛んでいかない
今日も罪悪感という名の針千本が空から降り注いで、きみの自己肯定を殺します。豆腐のようにデリケートなきみの自尊心を無慈悲に切り刻みます。生きてたって虚しいだけ。わたしみたいな駄目人間、いっそのこと消えてしまえばいいんだ。そんな希死念慮たっぷりの戯言をきみはnoteに書いちゃったりするのかしら。闇が深い物騒な秘め事、書いちゃったりするのかしら。その気持ち、よくわかります。書いたって楽にはならないと思うけれど。
自分を愛せない人たちって大抵、人として大切な何かが致命的に欠落してるというか、なんていうか、救いようがない。世の中には心の広い奴と狭い奴の二種類がいると思うんですけど、大抵自分を愛せない人って心の狭い奴の方で、「あいつも嫌い!こいつも嫌い!みんな嫌い!そしてこんな寛容さのない私が一番嫌い!大っ嫌い!」とか意味不明なことほざくんです。でも言いたい気持ち、わかる。きっと心の広い奴には到底理解できないし、当然「そんなカリカリしてないで、もっとおおらかになりなよ!」てなるんだけど、でもね、それ本当なんだよ。心の狭い奴の誰しもが横柄で自分勝手なわけではないし、そういう人間ほど案外心の中ぐちゃぐちゃで苦しかったり手首切ったり酒に溺れてゲロ吐いたりしてるんです。
他者を大事にするどころか自分を大事にすることすらできない。なぜなら愛情不足だから。承認に飢えているから。必死にしがみついている拠り所ですら、ちょっと風が吹いただけでポキッと折れてしまいかねない弱々しい枯れ枝だから、常に孤独を恐れて、疎外を恐れて、卑屈になって、自己防衛という名のライフルを無差別にぶっ放して、暴発した弾が自分に当たって血をだらだら流して苦しんだりしてるんです。
ゆえに今日も罪悪感という名の針千本が空から降り注いで、永久に癒されることのない狭い心のきみを殺し、そして無関係を装って対岸から偉そうに講釈を垂れてるぼくもついでに殺し、すべてを抹殺します。きみの不完全な自己愛と、ぼくの過大な自惚れを、冷淡に嬲り侮辱した後、原型が無くなるまで細やかに切り刻みます。些細なことで傷ついてばかりいるきみは満たされない苦しみに、巻き込まれて強制的に死ぬぼくは不条理な秩序の地獄で、それぞれ互いに苛まれ続けるのです。人間は痛みの呪縛から逃れることはできません。有様は各々違えど、痛みは全ての人間に対して平等に、厳粛に、理に沿って降りかかるものなのです。
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