残酷なその理由
私が患う病気の人たちは、往々にして、幼く見えたり、実際幼稚だったり、わがままで、社会的に立ち往生することがある。
その理由について、なんとなく分かっていることがある。
私も含めて、私が患うこの病気は発症する年齢が、大概成人になるかならないかの頃だと言われている。遅くても20代。
病気の発症と言っても、人によって症状の出方も違うし、重さも違うし、治り方も違うし、私のように長患いしながら生活する人や、寛解と言ってさっぱり(?)病気とも薬とも縁なく生きられる人もいるし、発症した頃と変わらず病気に苦しみ続ける人もいる。
様々な人がいる中で、割と共通しているのかなと私が思うのは、精神的な未熟さだ。
幼稚さとも言えるし、わがままとも言える。甘ったれとも。それ故に、社会的に適応できず、立ち往生することもある。
その理由のひとつは、発症する年齢だと私は考える。
20代という時期に、多くの人は社会に揉まれ、嫌なこと、いいこと、色々なことを経験しながら、「大人」になっていく。
でも、私の患う病気の人たちは、闘病生活であったり、病気による症状によって、大切な社会性を身につけていく時期に、社会に出られないことが多い。
病気という個人ではいかんともしがたいことがらから出発した問題なのに、一歩社会に出たら、自分の常識(外からは、わがまま、幼稚さ、社会常識のなさとみえる)がまったく通用しないことを意味する。
そんなわがままや、幼稚さ、当たり前に「大人」になれば通用しないことなんて分かるでしょ?
ーー分からない。気づけない。
分かるはず、分からなきゃならない時期や、機会を病気によって失う。
病気自体も過酷な人も多い中、病気になる時期というのは、そういう意味で二重にも三重にも残酷だ。
例えば、病気がすこしよくなって、社会に出られたとして、その後の人生すらも常識の欠如という病気に縛られるのだから。
どうしてそんな当たり前の常識がわからないの。
どうしてそんな子供みたいな、考えのないことをするの?
単純に病気による症状だけのせいではなくて、病気に奪われた時間によるせいも大きい。
時間は誰にも取り戻せない。
私も社会に出て、自分の甘いところ、考えの幼いところを日々実感する。
そこで軌道修正して、成長しなきゃと思っていくのだけど、毎度そんなことばかりだから、心が折れそうにもなる。
成長できる、変わっていけることもあれば、できずにそのまま固定してしまうものだってある。そういう人だっている。そのまま人生が空転していくこともある。
知らない人には、社会常識のない人として扱われがちで、冷たく対応される。常識がないのはこちらなので、仕方のないことなのだけど。
なにか別の病気でお医者にかかっても、病気の名前だけが独り歩きしていたりして、同伴者がいれば、お医者はそちらにむかって説明する(人もいる)。
その病気じゃ、説明しても分からないでしょ。
「お母さんは?」
シンプルに傷つく。
私は、自分が患う病気が特別だとは思っていない。
若年層がかかる病気というものは、多かれ少なかれそういう側面を持つものだと思う。
ただ、誰がなってもおかしくないと言われる病気なだけに、社会の分厚い壁や、自分の無能さや、幼稚さや、はたまた社会の無理解に思えることやにぶつかると、ものすごく悔しい。
どうしたらいいのかと思う。
答えは簡単。
1個ずつだ。
壁にぶつかったら、その壁の前でうろうろして、よじ登る方法を探す。壊す方法を探す。回避する方法を探す。
皆目分からなければ、解決方法を知っていそうな人を探す。
その繰り返し。
そんなの病気じゃなくても、誰でも同じ。と思ったあなた。
その通り。
でも、探す方法すら、探すという発想すら、病気の人には分からないこと、ないこともある。
壁の前で途方に暮れ、自分は不幸だとか、永遠にこの壁の前から逃れられないんだとか、そういうことをずっと言っている可能性もある。解決しようという気持ちが上手く芽生えないどころか、全く見当違いなところへ「怒り」が向いていく、病気の症状が出ることもある。
それが、病気が奪った残酷な「時間」がなす実態というもの。
単なる「幼稚さ」「甘ったれ」では終わらない問題の深さ。
私は、病気の人の擁護者ではない。どんなに大変でも、変わっていけることもある中で、親や庇護者のいるところでずっと気持ちよくいられることに慣れきって、社会は冷たいと言ってはばからない病気の人を、幼稚だと思う。ダメだと思う。
でも、これも私個人の意見で、特定の誰かを責めたりしたいわけではない。
辛いけど、現実を見ろ、もっと強くなれと思う。
【今日の英作文】
「映画のキャラクターがピンチに。自業自得ですが、私はかわいそうでたまらず、ハラハラします。」
"Characters in movie got in a critical situation. They were asking for it, but I felt so sorry for them and uneasy.''
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