五十嵐有琉

いがらしうりゅう、と申します。ふだんは140字小説や呟怖などの短いものを書いてます。拙…

五十嵐有琉

いがらしうりゅう、と申します。ふだんは140字小説や呟怖などの短いものを書いてます。拙作の朗読はご自由に。カクヨムと小説家になろうにweb小説『怨霊大戦』投稿中。職業はAWSとGCPを操る末端のクラウドエンジニア。国際結婚組。

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怨霊大戦 あらすじと3話までのリンク 【#週刊少年マガジン原作大賞】

(あらすじ) 平将門の霊が蘇り日本政府に宣戦を布告した。 将門は反魂香を利用して歴史上の有名な怨霊たちを現世に受肉させ、政府に対し七番勝負を挑む。 勝負までの猶予は七年。政府機関『霊安室』はその企みに対し、クローン技術で英霊の魂と身体を現代に蘇らせて迎え討つ計画を実行に移す。 そこで作られたのは、七人の英霊の魂を体に宿した七人の少年少女たち。 彼らは七年の間にそれぞれの身体と技を鍛え、特殊な武装を整えて戦いの準備を進める。 彼ら自身の目線や、彼らを取り巻く大人たちの目線を織り

    • 怨霊大戦 第4話以降

      第4話以降は以下のサイトで公開しています。 応援よろしくお願いいたします。 (カクヨム) ・https://kakuyomu.jp/works/16817330663350067852 (小説家になろう) ・https://ncode.syosetu.com/n0414il/

      • 怨霊大戦 第3話

         突然、子供の頃に見た絵本の挿絵のイメージが、橘の頭の中でそいつとつながった。 ――狼、男、人狼――?  眼前の存在が童話や小説の中で見かける空想の産物であることに気づき、橘は安堵した。 ――ああ、これはきっと夢だ。悪い夢なんだ。目が覚めれば元の生活に戻り、いつもの妻の笑顔にも会える――  突然、バアンという音と共に、玄関の扉が蹴り破られた。  家に飛び込んで来たのは、黒スーツに身を包んだ男女の二人組だった。  女は素早く拳銃を取り出し、怪物に向けて構えた。  男は腰に差した

        • 怨霊大戦 第2話

           アテルイの斧が勢いよく振り下ろされ、少年晴明の方へ迫ってきた。 「借魂、観勒!」  晴明は顔の前で新たな紙片を振る。それは瞬く間に青い炎に変わった。  炎から座禅を組んだ老僧の姿が浮かび上がった。  老僧は胸の前で印を結ぶ。  その身体から水面に生じた波紋のような波動が広がった。  アテルイの斧が晴明の頭上でぴたりと止まった。  斧を握る腕の筋肉に浮き立つ筋が見える。  老僧の身体から発せられた波動が、斧の動きをはばんでいるかのようだ。  アテルイの額から一筋の汗がにじみ出

        怨霊大戦 あらすじと3話までのリンク 【#週刊少年マガジン原作大賞】

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        記事

          怨霊大戦 第1話

           しめり気をはらんだ夜の大気が、龍骸寺の境内をしっとりとつつみこんでいた。  月明かりが古びた石畳に銀色の光をさしかけ、寺塔を使って不穏なシルエットを描き出している。  山あいから吹き下ろす風が、うなりのような叫びのような、さびた音色を運んできた。  境内には、先ほどからはりつめた空気がただよっている。  戦いの予兆が目に見えぬ形をとり、夜の闇にまぎれてこっそりと忍びよってきたかのようだった。  ふいに、寺の鐘の音が時の流れを断ち切った。鐘は対決の幕開けを告げるために境内に響

          怨霊大戦 第1話

          トリック・オア【ショートショート】

           ハロウィンは好きではない。  日本には縁もゆかりもない、このくだらない祭りが流行り出して何年たったろう。この日の山手線に仮装した阿呆どもが乗ってくるのにももう慣れた。  ケロイド状の特殊メイクシートを顔に貼った女子高生や、狼男マスクを被った青年たち。看護師の制服を着た娘は額や口から血を流している。車両の中はさながらB級映画の撮影現場の様相を呈していた。  なんなら残業帰りでスーツ姿の俺の方がよほど異端者に思えてくる。  いま俺の肩にもたれてすやすや寝こけてる背広の男は

          トリック・オア【ショートショート】

          猫じぇらし【ショートショート】

           あたしは学校に行けなくなった。  彼氏の蓮くんがあたしの親友の真希と隠れてつきあってることがわかったのだ。  あの日、たまたま通りがかった喫茶店の窓には、にこやかに微笑み合う二人の姿が映っていた。  あたしは一晩泣いて泣いて、翌日学校を休んだ。  それをきっかけに、あたしの長い長い引きこもり生活が始まった。  あたしは部屋から一歩も出ないことに決めた。  とりあえずご飯は部屋の前に置いてもらい、食べ終わったら食器を部屋の前に返すことにした。  家族とも顔を合わせなくなっ

          猫じぇらし【ショートショート】

          ディープ・リアル【ショートショート】

           小さい頃から神童だ天才だと呼ばれていた俺は、独学でAIと画像処理の研究に没頭し、ついに完璧な『モザイク外し』の技術を開発した。  ディープフェイクなどでモザイクの上から別人の性器画像を重ね貼りするようなチャチな技法ではない。  動画の全フレームを解析し、あらゆる角度から見た本人の正確な性器の形を計算で求めるのだ。  俺の解析ロジックは実に完璧なものだった。たまたま流出した本家の無修正版と比較しても、大陰唇小陰唇の色やサイズ、ホクロの位置までが完全に一致していた。  俺

          ディープ・リアル【ショートショート】

          エア【ショートショート】

          「長生きの秘訣? 油ものを一切食べないことですかね」  この道80年のラーメン評論家が肩を揺すって笑う。 「私ぐらいになると、スープの匂いを嗅いで麺を持ち上げただけで、もう味が判ってしまうからね。じっさいに食べる必要がないのです」  なるほど『技を極める』というのはそういう境地を指すのかも知れない。  それを耳にして、営業70年の店の主が忍び笑いを漏らした。 「それが何だって話でさぁ。アッシぐらいになれば麺もスープも無しに客をうならせることができますがね」  店主が右手

          エア【ショートショート】

          自作品を朗読していただきました

          ※2021/09/21更新 いろいろな方に、素敵なお声で私の作品を朗読していただいております。 皆さま、いつも本当にありがとうございます。 1.ひゅうが様『リア充』(2021/03/27朗読) 『事故物件』(2021/03/28朗読) 2.ロ玄小布(ろくろこぎれ)様『ユメデアエルヨ』(2021/09/20朗読) ●Twitterリンク先 『優しい死神』(2021/09/05朗読) ●Twitterリンク先 『ナッツコーヒーが売りの喫茶店』(2021/08/05朗読)

          自作品を朗読していただきました

          サマー・スポット【ショートショート】

          ――こんなことになるのなら、やめておけばよかった。  大学4年の夏休み、友達と心霊スポットを見に行った。  メンバーは僕と友人の山崎、僕の彼女と山崎の彼女、合わせて4人。  そのスポットは山奥の学校で、最後に残った一人の生徒が自殺したために廃校になったらしい。それから二十年以上はたっているそうだが、今でもそこを訪れた人は必ず何らかの怪奇現象に襲われるのだという。  廃校のある場所は電車も通っていないような田舎だったので、僕たちはレンタカーを借りてそこに向かった。  僕の

          サマー・スポット【ショートショート】

          人の金で焼肉が食べたい【ショートショート】

          「やばいぞ陽太! 『人の金で焼肉が食べたい』が盗まれた!」  Zoom画面の中の菜月(なつき)が突然叫んだ。 「いきなりなに言ってんの?」  Zoom越しに僕が返す。  菜月と僕は幼なじみ。同じ中学・高校を出て、今年から揃って地元の大学に通っている。いわゆるクサレ縁ってやつだ。  友達付き合いも7年におよび、なんだかんだ気が合うので、三日に一度ぐらいは二人でリモート飲み会を開いている。  まあ飲み会といっても未成年なので、コーラとポテチ程度の健全な会だ。とは言え菜月の方は

          人の金で焼肉が食べたい【ショートショート】

          ストリート・ビュー【ショートショート】

           幼い頃住んでいた故郷の町を、ストリートビューで探索する。  ここは友達の家、こっちは自分ち……  気ままに歩いているうちに、何となく違和感を覚えた。グーグルの撮影車が到底入っていけないような細い脇道にも進めるようなのだ。 ――バージョンアップか何かで、仕様が変わったのかな?  興味を惹かれ、脇道に足を踏み入れてみた。  昔とは風景が少し変化しているが、それでも記憶の中にうっすら残っている道だ。どんどん進んでいくとその先に古ぼけた家があった。木造一階建ての小さな、みすぼらし

          ストリート・ビュー【ショートショート】

          命日【ショートショート】

           キャメルに火を点け、線香代わりに探偵の墓前に供える。 「お前は立派だったよ。殺られた後輩と情報屋の仇をきっちり取った。撃たれてズタボロになってまでな……」  あの日、事務所に帰ってきた探偵が目にしたのは、後輩の探偵と情報屋の血塗れの死体だった。二人が依頼人の若者をかばって死んだことはすぐにわかった。  依頼人の死体も翌日東京湾に上がった。依頼人はある黒い取引の目撃者だったが、愚かにもそれをネタに組を強請ろうとしたのだ。  怒りにまかせて組に押し入った挙げ句に、奪った長

          命日【ショートショート】

          コールド・プレイ【ショートショート】

           由紀。白磁のように透明感のある肌の女だった。 「生い立ちのせいかな。わたしの身体はとても冷めているの。あなたはきっと後悔するわ」  不感症か?過去に何かがあったのだろうか。  それでも構わない、と思った。 「大丈夫さ。俺がきっと君の心と身体を溶かしてみせる」  俺は少々強引に彼女と付き合い始めた。  初めての夜が来た。  服を脱がせて身体を合わせると、確かに彼女の身体はヒヤリとしていた。  しかし俺の指が丁寧に肌から乳首を這い、さらに秘部までをほぐしていくうち、彼女は歓

          コールド・プレイ【ショートショート】

          犬と月【ショートショート】

          八月、強い風の日に赤い髪の娘と出会った。 ――捨て犬か。アタシと同じね。 失礼だな。俺は捨て犬なんかじゃねぇ。 だが娘の差し出したフライドチキンは断れなかった。 九月、あの娘がぼろぼろの姿で道路に横たわっているのを見た。 複数の男らに襲われた末、屋上から身を投げたらしい。 十月、ぼろぼろになった男達の死体が見つかった。 すべての死体は、身体じゅう野良犬に噛まれた跡があったそうだ。 失礼だな。野良犬なんかじゃねぇ。 ……俺は狼だ。

          犬と月【ショートショート】