見出し画像

ショートストーリー『空の深さ』

「空の深さを測ってみたいと思わない?」

火照る頬を冷まそうと涼しい風にあたる夜。

そう、君は呟いた。

「そうだね。きっと、ものすごくものすごく深いんだろうね」

✳︎

空の深さってなんだろう。

それはどうやって測るのだろう。

君はいま何を考えているのだろう。

いくつもの疑問が頭を浮遊するけれど、口に出るのはいつもほんの少しの言葉でしかない。

✳︎

君の隣に僕がいなくても、君はきっと何も変わらない。

ひとりで夜空を眺めるだろうし、ひとりで思いのまま感じたままを呟くだろう。

僕の隣に君がいなくても、僕もきっと何も変わらない。

いろんなことを考え、そのなかの少しだけを言葉にしてそばにいる誰かに伝えるだろう。

✳︎

それでもいま、

僕は隣にいる君をいとおしく思う。

君の隣にいる僕をいとおしく思う。

だから、

空の深さを、測りたい。

君とふたりで、どこまでも深く。

〈おわり〉




今ならあなたがよもやまサポーター第1号です!このご恩は忘れません…!