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ツルゲーネフの入口「初恋」

ツルゲーネフpic

(ややネタバレ)

ツルゲーネフは、ドストエフスキーやトルストイと同じ19世紀ロシアを生きた作家です。短い作品が多いのですが、中身が凝縮された傑作を数多く書いています。

代表作のひとつ「初恋」(1860)は、恋愛の残酷さを描き抜いた中編です。
物語は、今では40才になった主人公のウラジミールが、若い頃の「初恋」を回想するかたちで語られます。

16才になるウラジミールは、隣に越してきた5歳年上の公爵令嬢ジアイーダに一目ぼれをしてしまいます。

彼女は、様々な職種の男たちをはべらせています。彼女の「崇拝者」である男たちは、それぞれのかたちで彼女に恋をしています。

そしてまた、ジアイーダもある男性と恋に落ちます。その相手は誰なのか?ウラジミールは疑心暗鬼と嫉妬に苛まれます。

そしてやがて、自分の幼く一途な恋とは異なる「大人たちの恋愛」を知ることになります。

昔話を語る今、なぜか思い浮かぶのは、ジアイーダに恋をした最初の頃の夜、窓の外の遠い空に走っていた雷の光です。

恋愛の清と濁を知って大人になったウラジミールは、その稲光の光景を懐かしく語ります。

そして彼の不思議な恋愛譚は、苦く生々しいてん末によって締めくくられることになります。

ツルゲーネフ

イワン・ツルゲーネフ(1818-1883~ロシア・小説家、詩人)
ドストエフスキー、トルストイと並ぶ、19世紀ロシア文学を代表する文豪。代表作「猟人日記」では貧しい農民の生活を描き、農奴解放に大きな役割を果たした。他に「父と子」などで知られる。




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