ARクラウドによってエリア・施設間の回遊性を向上、臨海副都心の魅力を高めていく(第13回優勝社 プレティア・テクノロジーズ株式会社)
プレティア・テクノロジーズ(東京都品川区)との連携
広さが約442万平方メートルに及ぶ埋立地に、住・遊・働の場が共存する東京臨海副都心。街が本格的に稼働して4分の1世紀以上の時が経過しましたが、昨年に閉館した大型商業施設の跡地で新たな開発が進められるなど、過渡期に差し掛かっています。街の魅力を発信する上でこれから重要になってくるのが、各エリア・施設間の回遊性向上。それには回遊そのものを楽しくできるようなサービスが必要となります。このため東京都は、拡張現実(AR)クラウドを提供するプレティア・テクノロジーズ株式会社(東京都品川区)と、デジタルテクノロジーの実装に向けて協働を行いました。
屋外利用のAR謎解きゲームは、映画館のようなエンタメ
娯楽施設などハードに依存しなくても、エンターテインメントを活用して人の移動を創出できるのが、ARの特徴です。代表的なサービスが、現実の場所に出向いてポケモンを捕まえるという米ナイアンティックのゲーム「ポケモンGO」です。プレティア・テクノロジーズ社が提供するのは、特定の地域内を謎を解きながら巡ることでクリアを目指す、AR謎解きゲームです。屋外を利用しますが、牛尾湧社長によると「映画館のようなエンターテインメント」だそうです。最初にチケット代を支払うと、1~2時間をかけて街を歩き、楽しみながら街の新たな魅力を知ることができるからです。また、地域側にとっては、来訪したユーザーが店舗などに立ち寄ることで生まれる経済効果にも期待できます。これまでプレティアのイベントに参加した人のうち、6~7割近くがドリンクや食事、グッズ購入にお金を支払っているそうです。
ゲームを通じ目的地以外の場所に人を誘導
東京都とプレティアによるAR謎解きゲーム「メガマウっさんを解き放て!」は、昨年3月に行われました。アクアシティお台場や日本科学未来館など、お台場内に配置された7つのチェックポイントでミッションを解くことにより、臨海エリア観光大使であるメガマウっさんの「空を飛んでみたい」という夢を叶えてあげるストーリーです。ゲームの狙いは、目的地以外の場所に人を誘導することですが、参加者の多くが「このゲームがあったから、この場所に立ち寄った」と回答していました。また、一定の消費行動もありました。一方、臨海副都心内で回遊性を高めるだけではなく、都心部からお台場へといった人の流れを作ることが重要との課題が見えてきました。行政を横断するような連携が必要なためハードルは高いですが、東京都とプレティア・テクノロジーズの今後の協働が原動力となって、ぜひとも実現してほしいところです。
ツーリズム効果を生み出し、都市部と地方の格差を縮める
新海誠監督のアニメ映画に登場する店などのモデルは、熱心なファンの「聖地巡礼」の場にもなっています。ARのプラットフォームによって、こうしたツーリズム効果を生み、都市部と地方の格差を縮めていくのがプレティア・テクノロジーズとして目指す、ARによる社会貢献の一つです。今回のプロジェクトは、「0」から「1」を創り出すゼロイチに類するもの。意見の集約の進め方など難しい作業はありましたが、それを乗り越えて成果を残したことは、他の自治体に対しインパクトを与えプレティア社の信用力を高めました。臨海副都心で培ったARによる回遊のビジネスモデルが、全国に広がることに期待が高まります。
プレティア・テクノロジーズ株式会社との協働について東京都港湾局の担当者へインタビュー
臨海副都心の課題にアプローチしたUPGRADE with TOKYO第13回。優勝社が選ばれたポイントや協働の進捗について、東京都港湾局の担当者にも話を聞きました。
――第13回のテーマを「臨海副都心のまちの魅力発見と向上」とした理由は何ですか
臨海副都心は住・遊・働の場が集積しているものの、エリアが非常に広く施設間の往来が乏しい、という回遊性の向上がかねてより課題とされていました。
こうした課題に対し、スタートアップの先端技術を活かすことで、新たなまちの魅力を見出し、新しい解決の糸口を見出せるのではないか、と考えたのがテーマ設定の理由です。
――スタートアップの発表に対しては、どのようなことに期待していましたか
今回設定させていただいたテーマは、エリア内の商業施設等でもいろいろな取り組みを打ち出している切り口なので、そうした中でも先進性が感じられる発表がされることを期待していました。
――プレティア・テクノロジーズが優勝した要因は
回遊性というテーマに対し、一番ストレートに回答してくれたプレゼンテーションだったと思います。また、先進性が感じられることはもちろん、プレティア・テクノロジーズさんの提案はエリア内事業者との連携も意識されていて実現性が高く、この先進性と実現性のバランスが魅力的に映りました。
――プレティア・テクノロジーズとの協働では、どういった効果が表れましたか
協働では、まちのキャラクターを活用し、その魅力の掘り起こしにつなげることができました。
もともと、キャラクターやライブ等のエンターテイメント分野が、臨海副都心というまちの強みだと認識していたのですが、先端技術との効果的な組み合わせイメージが湧かないのが悩みの一つでした。
今回の協働で、先端技術を活用した具体的な事例ができたことにより、行政とまちの事業者双方が、どのようにお互いの強みを活かせるかという発想を膨らませることができ、行政とまちの事業者双方にとってよい刺激になったのではないかと思います。
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