東京都産業労働局に〝エンジェル〟が現れる。チャットボット開発ツールを提供するスタートアップ企業のhachidoriが、問い合わせ業務の効率化に貢献(第16回優勝社 hachidori株式会社)
hachidori(東京都千代田区)との連携
エンジェル税制という言葉をご存じでしょうか。スタートアップ企業に投資した個人が税金の優遇を受けられる制度です。2020年に制度が拡充されたこともあって全国の自治体には、制度に関する問い合わせが急増しています。東京都にも確定申告の2~3カ月前辺りから殺到するようになりました。問い合わせ業務の負担軽減に向けて都が連携したスタートアップが、hachidori株式会社(東京都千代田区)です。
産業労働局。電話対応に多大な負担
東京都の場合、制度の窓口は産業労働局で、2~3人の職員が対応しています。制度の要件は複雑で必要書類も多いため、一人につき電話で20~30分かけて説明するといったケースも珍しくはありません。これでは申請が集中する時期に迅速な確認作業を行うのも困難です。また、休日や時間外の問いに対しては応えることができません。Webサイトと連携して対応しようとしましたが、「サイトにたどりつくのが難しい」といった声も上がっていました。
プログラミングが不要なチャットボットの開発ツール
東京都は2019年度から、都政課題の解決を目指したピッチイベント「UPGRADE with TOKYO」を開催しています。昨年11月の第16回イベントでは「カスタマーサクセスにつながる申請受付サービス」がテーマとなり、hachidoriが優勝しました。その縁があって、同社の「プログラミングが不要なチャットボット(自動応答システム)」の開発ツールが導入されることになりました。
チャットボットの中には、Webサイトが単に形を変えたようなものもありますが、同社のプラットフォームではきめ細かな対応を行えるようにします。まず、「情報収集の段階なのか」「ある程度、エンジェル税制を知っており、知識を深めようとしているのか」「最終手続きの段階なのか」といったように、問い合わせた人が置かれている状況を掘り下げます。その上で「あなたにとって必要な情報はこれです」といった具合に回答します。ベースになっているのは、これまで都に寄せられた約1300の問い合わせ。それらをAIで分析し、カテゴライズ化したことによって、電話に近い形で対応できるようにするのが特徴です。
ピッチを通じ効率的な出会いをサポート
ピッチイベントなどを通じ高度な技術を備えたスタートアップと都が出会い、行政課題を解決する。そういったケースが今後も顕在化しそうです。
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