魚柄仁之助の生活防衛レシピ 第18回

魚柄仁之助の生活防衛レシピ
〜第十八回 昆布締め刺身〜

ちょっと気の利いた料理屋のお品書きには
刺し身とは別に、昆布締め刺身というのが有ります。
刺し身よりはちょっと高いですけど、実はコレ
刺し身を10倍おいしくする方法なんですの。

おうちで作れる鯛の昆布締め

近所のスーパーで買ってきた鯛の刺身パックです。

図1

真鯛を三枚に下ろして、皮を剥いた「片身」で800円でした。
普通はこの片身を包丁で引いて刺身にいたします。
今回は食べたい気持ちをグッと抑えて
昆布締めにいたしましょう。

図2

鯛の片身と同じくらいの大きさの昆布をサッと拭いて、塩を振ります。
普通の出汁昆布で構いません。
昆布は乾物ですからカチコチに乾いていますが
濡らす必要はナシ❣
料理本なんかで「ぬれ布巾で拭いて」と書かれたのが有りますが
濡らすとウマミが減るから埃をとるだけにします。

図3

塩を振った昆布の上に鯛の片身を乗せます。
ハイ❣これで おーしまいっ
ウソみたいですが、刺身の昆布締めって
基本的には、これだけなんですの。
この片身の上にもう一枚昆布を乗せてもいいですが
乗せずに昆布と片身をラップでしっかり包んで
冷蔵庫に入れちゃえば、あとはただ待つだけなのです。

種明かししますと・・・

昆布に振りかけておいた塩の作用で
鯛から水分が抜け出て、鯛の身が締まって来る
鯛から抜け出た水分が、昆布に浸みこむ
昆布が軟らかく戻り、ウマミ成分が溶けて出る
そのウマミ成分が、鯛に浸みこんでゆく
これが普通の刺身を10倍おいしくするメカニズムなのです。

あとはこのべっ甲色の昆布締めを
庖丁で好きなように切って食べればいいのです。
今回は三枚におろした鯛の片身(さくどりと言います)を
使いましたが、すでに刺身に引いてあるパックでもできます。
その時は、塩を振った昆布の上に
刺し身を一枚ずつ並べればOK
カーンタンでしょ?

Q:48時間待たなきゃなんないの?

いーえ、5~6時間置くだけでも結構味が付きますが
時間が経てば、より濃いウマミが付きますので
どのくらいが自分の好みに合うか?は
何度かやって見極めてくださいまし。

Q:傷まないの?

買ってきたままの刺身パックは一日経てば
傷み始めるし、臭いもしてきますね。
しかし、塩を振って昆布で締め、ラップでしっかり
包んで冷蔵庫に入れておけば、2~3日は傷みません。
かつて冷蔵庫が無かった時代は塩と昆布で締めることで
生の刺身を保存していました。
塩が防腐剤の役割をしていて、
昆布で包むことで外気に触れないようにしていたんです。

昆布締めって、美味しくするだけでなく
保存のための技術でもあったのです。
保存のための知恵だったのか?
美味しくするための知恵だったのか?
あたしゃ、男をあげるための知恵ぢゃと
思っとりますが・・・・・・
(女を上げるため…でもいいんですぅ)

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今回は編集部Kさんよりレポートをお預かりしております!

昆布締めのお刺身というと手間のかかるイメージですが、昆布を戻す必要もなく、塩をして包むだけでいいとは耳より情報、さっそくやってみました。
スーパーで真鯛のサクとソデイカの切り身を買ってきて、塩をして昆布で巻きます。

画像4

イカは切り身のまま昆布に包むものと、

画像5

4-5ミリに細切りにして少し叩いたものを、

画像6

それぞれ試します。叩いたイカも塩をした昆布に盛って、

画像7

ぴっちりラップをして冷蔵庫に。

夜になり、5時間経過したものを開けてみました。

画像8

インスタント昆布締めですが、すでに昆布の色がついておいしそうです。

我慢できず、「ものは試し」とばかり、サクのままのイカを刺身にして、夕食の一品にしてしまいました。これが美味しいんです! わずかなひと手間で、旨味が倍増するのですからたまりません。

画像9

叩いたイカと真鯛は、魚柄先生の指南通り48時間しっかり待ちました。待望の夕食、前の日に買ってきておいた日本酒もしっかり冷えて、準備万端です。

画像10

これは旨い!! べっこう色の真鯛は言わずもがな、叩いたイカの昆布締めはさらに格別で、お店で出てくるイカよりずっとおいしいのにびっくりしてしまいました。これを出せば、味にうるさいゲストも唸ること間違いなしです。手間いらずの美食三昧、お酒との相性も抜群でおススメ。さすが魚柄先生、今夜も先生に感謝しつつ乾杯!

今週もレポートありがとうございます。昆布締め、いいですねえ!
スーパーで買うとすぐに食べなきゃいけないお刺身ですが、
48時間保存できて、さらに美味しくなるなんて、一石二鳥です!
皆様もぜひお試しください。(編集部A)

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魚柄先生から追加のコメントが届いております!

なーんで今頃昆布締めなのか?

コロナ騒動で居酒屋さんや料亭がほぼ営業停止状態になったのは
ご存知の通りです。
そうなると、豊洲市場の魚介類が売れなくなります。
特に高級魚である鯛などは需要が激減しました。
各地の漁協は出荷を控え、漁師は漁を控えるが、ある程度は獲らなきゃならない。
また、鯛の養殖業者は出荷しないとだぶついてしまう。
そこで料理屋とか寿司屋のような飲食店向きでなく
一般消費者を対象にして、「サク取りのパック詰め」を
スーパーに出し始めました。
しかし、「サク取りを包丁で切って刺身にする」事すら
できない…したくないいまどきの消費者はなかなか購入しません。
そんな人々が「昆布締めって、こんなに簡単なんだぁ、かっこいいし・・・」と
感じてもらう事が今回の昆布締め原稿の本音です。

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魚柄先生のご著書の中では、いわしを〆るのがオススメされていました!
昆布や乾物の美味しく手頃な活用法もたっぷり紹介されています。

魚柄仁之助先生の台所リストラ術をもっと知りたい方は、飛鳥新社のページをチェックしてみてください。

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