マガジンのカバー画像

沸騰する流星群

69
20代の頃から今まで自身が書いてきた詞(と思っている)を、FBやnoteで公開してきましたが、未公開のものも含めマガジンにまとめてみようと思いました。 このマガジンは基本終わり…
運営しているクリエイター

記事一覧

「選択の森」

「選択の森」

大切なものが二つあったとして
それを選べないのは
覚悟が足りないことだろうか

大切なものが二つある人生は
きみにいわれるほど
代わりばえのない怠惰だろうか

それは
自分自身が
一番わかっている

深い霧が立ち込めるように感情は
森の中に影をおとし
どうどうめぐりなのだろうか

浅い眠りに気持ちは縛られたまま
目の前のカードを
引けずに去るのだろうか

それは
自分自身ですら
もうわからない

もっとみる
「祈りの匣」

「祈りの匣」

希をもつことはいけないことだと思っていた

夢をみるのはおろかなことだと信じていた

気後ればかりして 何も言えなかった

だれかを好きになるのは恥ずかしいことだった

ともだちがなんなのかずっとわからなかった

それが普通だった 普通は苦しかった

だから 「王様の耳はロバの耳」みたいに希と夢を書いて 匣にしまって埋めたんだ

人は誰とも話さないと言葉が消えてしまう人は誰かと一緒にいないと消えて

もっとみる
「ひとりおちる」

「ひとりおちる」

やりたいこと やれない現実
望むこと 望みの外側
絡み付く 日々の生計(たつき)
微睡みと 覚醒と

ざわめきながら走り抜く
後悔なら先に済ませて
長く伸びる影を追って
足跡すら残りはしない

墜ちていく 見えない深み
溺れてく 暗い湖
掴まれる 両の脚
不自由と 不在と

伝わらない言葉の残像
眩惑できない視界から
感情も曖昧なままに
行方すらもうわからない

引きずり込まれるままに
確かなもの

もっとみる
「たぐりよせて」

「たぐりよせて」

気持ちを言葉に換えて
気持ちを言葉に乗せて
それが届く前に墜ちてしまっても
どうかそれを繰り返して

繋がりは心を充たし
繋がりは影を射す
長く延びていく影の向こう側に
誰かがじっと待っている

たぐりよせる
想いが描く世界を見つめるために
果たせない
想いが溢れていびつになるなら

でも 月が欠けていても誰も不満は抱かない
だから、どうかそのままでいて

満ちていても欠けていても
あるがままに

もっとみる
「鮮蝕」

「鮮蝕」

過去は鮮やかであって欲しい
そしてとっとと忘れて欲しい

記憶は宿主を探し
宿主は記憶に依存する

わたしは眩しくなんかないし
迷ったって構いはしない

過去は鮮やかなふりをしながら
素知らぬ顔をして未来を欺むく

記憶は宿主を捕食して
宿主は記憶を改竄する

わたしはすでに純ではないけど
偽るような自我など要らない

記憶は宿主を擬態して
宿主は記憶に融けていく

わたしはきっと間違い続ける

もっとみる
「秘密の匣」

「秘密の匣」

片付けられない有象無象を
無かったことのように仕舞って
そもそも
片付けられるとすら思ってもいないくせ
匣を開けて
また仕舞って
とっちらかったままに生きる

君は楽しいのかな
なら良かった
それならいいんだ

僕かい?
そんなことを聞いても
面白くなんかないよ

面白いことが何かもわかんなくて
また匣を覗いてみるけど
わかってるんだ
そんなことわかりっこないって

だからね
秘密なんだよ

「MEMORIES」

「MEMORIES」

思い出の中で生きるのなら
追憶の日々が美しいなら
あなたがそれを望むのなら
それは光だ

光はすべて善だと
神は言ったと聞いた

思い出が永遠であるなら
追憶が色褪せないなら
あなたがそれでよければ

昨日に生きていける
時間を止めたままに

あなたさえよければ
あなたがそれを望むなら

それであなたが傷付かないのなら

いや

傷付いてもかまわないのなら

「海がこんな日は」

「海がこんな日は」

一つ 一つしかないその出口に
君みたいな人が群がっている
両手で目をふさぎ見ないふりをして
指の間からそれを眺めていた
喉がカラカラに渇いて
聴こえない音が聴こえてくる

女たちが奪いにやってきた
不幸はきっと 彼女たちを肥らせる
笑う犬乗った僧侶が説教していると
赤い雪がこの道を覆った

海がこんな風に冷たい日は
静かに人生が終わるといいなと思う
でも満ちてくその瞬間が地獄のように苦しい

海が

もっとみる
「キスをする」

「キスをする」

この世界では誰もが傷付いている
あいつもこいつも おれもおまえも
だから、キスをしようじゃないか
おまえは恋に墜ちればいい
このおれと

この世界はみんなくそったれだ
あいつもこいつも おれもおまえも
だからキスをして忘れよう
おまえは恋に墜ちるんだ
このおれと

あんたのことなんか知らないのにって
そんな顔してるよおまえは
大丈夫さ うまくいかなかったら
思い出を消せる消ゴムをやるから
おれのこ

もっとみる
「排水溝」

「排水溝」

書けない物書きは翼のない鳥
書けない物書きは溺れる魚
そんな詩的なものでなく
単なる私的という間抜け

書けない自分に罪悪感を覚えるほどの
うぶな自尊心などありはしない

焦れろ 愚か者
やけつくよくな気持ちのままに

排水溝に流すがいい

「きこえない」

「きこえない」

誰に話すでもなく
自分を慰めるでもなく
止しとけばいいものを
虫の羽音のような声で

誰に?

本当は
人に言えないような
気持ちを抱えている

抱えて生き延びろ
気持ちだけを

気持ちだけなら
すべてお前のもの

誰に話すでもなく
自分を慰めるでもなく
止しとけばいいものを
虫の羽音のような声で

きこえない
きこえないふり
死んだ
死んだふり

「11月」

「11月」

少年が疲れた瞳で少女を眺め
怠惰な一日の終わりを想う
少女の曖昧な気持ちは手探りで
自分が小さく見えると微笑んでも

月日は凍りつくように速く
君たちが目眩を覚えるその若さは
何ものをも償うことができない

二人して歩く乾いた秋の山道なのに
君には独りだけの心持ちしかない
何ができるというのか?
君が彼女の裡まで届かなくても
それは恥ずべきことじゃないんだ

薄汚れたクーペのサイドシート
幾つもの

もっとみる
「同衾の宴」

「同衾の宴」

好きにすればいい、わたしを
あなたが思うように
女が女を買う 男が買うよりましではないか
女はお前らが思うほど耐久できない。
欲望は隠そうとするくせ
欲望のままに買おうとするお前らと
女は違う

好きなだけ買え
わたしを
好きなように抱けばいい
女は

同性に肌を重ねて
同性に唇を重ねて
わたしは生きている
女に身体を提供して
生計(たつき)を為していく

「おかえりなさい」と言った時
笑みが零れ

もっとみる
「あいさつの坂道」

「あいさつの坂道」

彼を語りたがっている有象無象が
その家の前で「愛」を待ってるけど
彼はそんな期待を必要としないし
歌の報酬を捨てたい気分らしい

昨日言っていたことは嘘に変わり
やっぱり彼は歌を歌い出した
好きにやってるのは気分の問題で
ぼくらは涎を垂らして見てるだけ

家の前の坂道を上がっていく 録音機を隠して
家の前の坂道を登っていく 君にあいさつがしたいとうそぶき

家の前の坂道を上がっていく "評価"を花

もっとみる