デザインスクールで進路相談をしたら。 #136
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春学期も半分ほどが終了し、夏休みをどう過ごそうかと考える時期に来ています。「夏休みはインターンをして卒業後の就職に備えよう」と学校からのメールなどで見聞きするので、「私もインターンをしたほうがいいのかな」と思っていました。
しかし、デザイン経験の乏しい留学生である私が、どうすれば現地でデザイン系インターンに就けるのか見当もつきません。目ぼしい進捗もなく途方に暮れていたので、私が留学中のパーソンズ美術大学・Transdisciplinary Designの学部長(ディレクター)に1時間ほど進路相談に乗っていただきました。
せっかく用意していただいた時間を有意義なものにするべく、私はレジュメとポートフォリオを準備して臨みました。添削してもらおうと思っていましたが、結局どちらも見せることなく面談は終わりました。その代わりに、私のマインドセットを大きく書きかえてくれました。
MBAではなく、MFAだから。
「どうすれば夏休みのインターンに就けるか?」を相談したいとメールを送り、今回の場を設けていただきました。なので、インターン先の探し方、採用されやすいレジュメやポートフォリオの作り方など実用的なアドバイスを聞こうと思っていました。あわよくば学校内のインターンの機会を紹介してもらえたらいいなとも目論んでいました。
しかし、面談が始まって開口一番「私からインターン先の紹介はできない」という答えでした。というのも、MBA(経営学修士)などであれば学校側が斡旋してインターン先の紹介をする仕組みが整っていることもあるようですが、留学中のデザインスクールではそのような仕組みはありません。卒業生からインターンの紹介もあるにはあるのですが、希望すれば全員がインターンをできるというわけではありません。
MFA(美術学修士)の場合、卒業後の就職が約束されるレールなんてありません。むしろ、卒業と同時に宙に投げ出され、自らの力で飛ばなければならばいカタパルトのようです。
興味のあることから始めるのがいい。
では、MFAで学ぶ学生はどうやって進路を切り拓いていけばいいのか。それは「自分に問う」しかないとのことです。
「夏休みの過ごし方を考える前に、あなたは何に興味があるの?」と聞かれました。私は「工学やビジネスを日本で学んで、今はデザインを学んでいて……」と面接で求められそうな答えをしました。
すると、「じゃ、過去の経歴の延長線上のことができるインターンや仕事をしたいの?」と聞かれました。その質問をされた時に「いや、そういうわけではないなぁ」と思う自分に気づきました。ただ「なんとなく」という理由でインターン先を探していたのかもしれません。「アメリカで就職するならインターンをしたほうがいい」という型にはまって安心したかったのかもしれません。
だからといって、自分で全てを決めていけるほど、何に興味があるのか明確でもありません。今の私には進路を決める指標が何もない状態のようです。これでは「夏休みをどう過ごすのか」という問いにも答えが出るはずがありません。
凝り固まった私の頭をほぐすために、「魔法で何でも叶うとしたら、何をしたい?」という質問をしてくれました。「お金など心配事がないとしたら何がしたい?」とも言い換えられるかもしれません。将来のことを考えると、どうしても現実的に考えてしまいます。
いつから私は「つまらない大人」になってしまったのでしょう。就職の心配ばかりしていたことに気づかされました。自分はデザインが持つ「自由さ」に憧れてはるばるアメリカまで来たのだという初心を思い出したような気がします。自分の好きなように生きればいい。もちろん、生きるためにはお金を稼がないといけないけれど、そればかりでは心が乾いてしまいます。
まだ若いから失敗してもいい。
「人生は1回だけだ」とも言われました。「一回きりだから失敗したくない」とも考えられますが、「一回きりだからやりたいことをやればいい」とも考えられます。
「他人と同じように生きたり、他人の視線を気にしながら生きたりする必要はないのだ」とも言われました。誰も自分の人生に責任を持ってくれないのだから、どう生きるのかは自分次第ですね。
「受験のために、就職のために、昇進のために、老後のために」と将来の心配ばかりしていると今を楽しめません。私の場合、死ぬ直前まで「相続はどうしよう、葬式はどうしよう」と悩んでいることでしょう。そんな人生はもったいない。
自分のやりたいことがあるのならば、どこかのタイミングで「えいや」とやってみなければ何も始まりません。もっといいタイミングがあるのではないかと待っていても、その時は一向に訪れません。このことは、私が留学を決意した時に学んだはずなのに、すっかり忘れていました。
自分の興味があることを見つけたら、それを深掘りする過ごし方をしてみればいいのかなぁと背中を押してもらえました。自分が何に興味があるのかわからないのならば、それを見つけることを目標にすることだってできます。
まとめ
「どうすれば夏休みのインターンに就けるか?」から、「自分は何に一番興味があるのか?」という質問にリフレーミングされていきました。2年前にコーチングを受けて留学を決意した時を思い出します。「自分は何がしたいの?何を望むの?」という質問は、自分軸で生きることを思い出させてくれますね。
進路相談をされた時に、就職の話だけでなく人生という視点で相談に乗るという学部長の姿勢にも感銘を受けました。私も誰かの相談に乗る時には、相手の人生に寄り添える人になりたいものです。
とはいえ、「有給インターンができれば経済的にはありがたいなぁ」という打算的な気持ちもなくはない。はぁ、人生は悩みが尽きない。
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