見出し画像

10月7日の手紙 10代の私へ

拝啓 10代の私へ

今思い返すと、10代の頃、1番怖かったことは、大人になってどうやって生きていけばいいのだろうということだった。
ここで言う「生きていく」は、ただ「生き物として生き残る」という意味ではなく、「糊口をしのげるようになる=生きるためにお金を稼げるようになる」とか、「世の中の仕組みや人間と渡り合う」という意味である。でもあんたの年頃にはそこまで言語化できていなかった。
だから今のあんたは、とにかく、「大人になってどうやって生きていけばいいのだろう」と思って、焦って、ドキドキして、苛立っている。
優れて美しいわけでもなく、並外れて賢いわけでもなく、ものすごく運動ができるわけでもなく、ひどく優しいわけでもないと言うことくらいは自覚している。何の特別な才能もない。愛想が悪く、口が悪く、捻くれていて、高慢であることの自覚もある。その上、不安が強くて、不器用だから、アルバイトをするのも怖い。
八方塞がりで、恐怖の真っ只中にいる。でもあんたは、何か行動を起こすことはなかなかない。
ただひたすらに山のように本を読んで、周りを、クラスメートや大人や社会を馬鹿にしている。本当は自分がやって行けそうになくて恐ろしいのに、それを真っ当に受け止めることはないから、他人に転嫁している。
勉強やスポーツにコツコツ取り組むのも、馬鹿馬鹿しいように思えて、食事や完食の量を際限なく増やしている。「ストレスがあるから仕方ない」とか言い訳しながら。
それが悪いって言うわけではない。全くもって、悪くはない。
ただ色んなことを経験した今だから言うとそのやり方は全く効率的ではないし、言い訳しても人生は楽しめない。
出来ることならもっと近道を通って欲しい。
楽しく生きるために。
嫌そうな、不貞腐顔が目に浮かぶよ。そういう「楽しい人生」みたいなものは、自分のような人間には縁遠いと思っているんだろう。
メディアで見るような「楽しい人生」があんたにとっても楽しい人生では確かにないし、そんなものは手に入らない。
でも、あんたなりの「楽しい人生」は手に入れることができる。そこは心配しないで欲しい。安心してくれ。

まず第一に、体験を面倒くさがるところがあるのが、あなたの大きな欠点だ。読書やネットでの情報で分かった気になるのはやめろ。人の数倍、読書をしているのは、特技として置いておけばいい。ただそれにこだわるな。何でもやってみろ。そしてしばらく続けよう。
あなたには格好つけのところがある。少しやって結果が出ないと読書以外はやめてしまう。
ぐだぐだ悩んでいるのは暇だからだ。
身体を動かした方がいい。
今、ジムに通っているというとあなたは驚き慄くだろう。「お金を払って運動するとかどうかしたのか」と思っているはずだ。今でも運動は苦手だし億劫だが、健康のために行っている。少しずつ慣れてきて、身体が以前よりうまく動くようになってきた。もしかするとあなたより、筋肉量は上がったかもしれない。苦手だと思っていること、好きではないことでも、気持ちをフラットにして体験してみて欲しい。そしてしばらく続けて欲しい。
あなたは思っている以上に体験で伸びるタイプだ。蓄積した知識が体験と合わさると、なかなか強力だ。
これは人間関係においてもそうだ。好き嫌いせず、話してみた方がいいし、素敵だと思った人とは友達になってみた方がいい。遠くからじっとり見つめたり、妄想したりするのはやめろ。関係性はそういうのでは育まれない。とにかく、何か一緒に体験した方がいい。
体験を大切にするんだ。

次に、仕事についてだが、仕事そのものは思っているより、何とかなる。あなたは自分で思っているより、強運だ。出来ないなりに真面目にやっているうちに仕事で食べていけるようになる。むしろ、仕事がどんどんと面白くなって、のめり込むようになる。気をつけて欲しいのはむしろその点だ。仕事はほどほどにしろ。やりすぎては行けない。「仕事は人生ではない」のだ。懸命にやればよいが、仕事だけの日常にならないように気をつけろ。仕事をして、寝て、仕事をしての繰り返しだけが、しばらく続くと、仕事の質も下がる。仕事以外のことができる程度に仕事を減らし、趣味や余暇の時間も作った方がいい。
仕事のストレスを美味しいもので埋めようとするのは注意だ。結局太ってストレスが溜まる。元々食べる量が多すぎるから、少し管理した方がいい。あなたが思っている量は健康的な量の2倍だ。太っていることが原因で他の不調も出ている可能性がある、少しだけ量を調整しよう。どうも忙しすぎると食べすぎる傾向があるみたいだから、仕事の量は増やしすぎないように。やれる量より、少し減らして行く方が健康的になる。

3つめは人間関係についてだ。こちらも何とかやれるようになるから、あまり不安に思わなくていい。いい人だなと思う人の振る舞いを真似ること。「自分はそういうタイプじゃない」と思わずに、挨拶と謝罪は素直にしろ。仕事だと思えば出来るようになる。そうやってやったいるうちに身につく。自分らしさはそうなっても消えたりしない。ちゃんと偏屈で、高慢だ。安心しろ。
耳に痛い厳しいことも言ってくれる友達、先輩、恩師は大切にした方がいい。あなたに必要なのは、ちやほやしてくれる奴らではない。時にハッとするほど厳しいことを言ってくれる友達、先輩、恩師がいるはずだ。その人たちを大事にしよう。でもこちらを搾取してくるような奴は友達じゃない。距離を取れ。
あなたは万人に受ける人間ではないが、時々、とても気に入ってくれる人がいる。その人の好意が嫌でない場合は、受け取り、好意を返すといい。あなたは苛烈なところがあるから、好意を持っていてもそれを表現したものか…と悩む人もいるようだ。はっきり表現しない人に苛立つのではなく、自らも行動しよう。自分可愛さに、相手に求めるのはダサい。

あなたが心配しているようなことにはなってない。
仕事があって、安全に生活していて、家族がいえ友達や仕事仲間との交流もある。
大丈夫だ。
だから思い切って何にでも挑戦して欲しい。
「これが自分の性格だから」と決めつけず、体験に飛び込んで欲しい。
そして仕事をやりすぎず、周りの人を大切にして欲しい。
これが、暗い部屋で泣き喚いている10代のあなたに言えることだ。
大丈夫、未来のあなたが保証する。
楽しく、生きているよ。

#ウェルビーイングのために

気に入ったら、サポートお願いします。いただいたサポートは、書籍費に使わせていただきます。