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11月25日の手紙 痛みは世界の見方を歪める

拝啓

今日はひどく冷えます。
レギンスの上に、タイツを履いてもまだ寒いので、低音カイロを,貼りました。
分厚く重たいコートを着てもまあまあ寒いという恐ろしさ。
これからさらに、気温が下がって行くのかと思うと気が滅入ります。
何とか暖冬にならないものでしょうか。てるてる坊主を作って逆さにひっくり返して吊るすように、何らかのおまじないをすれば、寒さが和らぐということはないのかなぁと無駄なことを考えてしまいます。
ワクチンを受けました。
利き腕と反対に受ける予定だし、これまで大きな副作用が起きたことはないし、そう困ることはないだろうと思って、決まっていた用事の前に接種予約を入れました。
本当は用事とは、別日にしたかったのですが、病院の予定と自分の予定が合うところが見つからず、しぶしぶワクチン接種から用事という予約を入れることになりました。
ワクチン接種場所はかかりつけの病院です。
病院は恐ろしく混んでいて、老若男女が待合に座っていました。2人に1人はものすごい咳をしています。ワクチンを打つまでに余計なものに触れない、目を擦らないほうが良さそうだと判断しました。
受付の後は、ひたすら静かに順番を待ちます。
幼稚園の年長クラスか小学1年生くらいの子が、待合でご機嫌におしゃべりをしたり、ダウンコートを振り回したり、ソファによじ登ったり降りたりしています。元気そうなので、ワクチン接種に来ているのかもしれません。
大人は皆、黙っているものの、何となく悲壮な空気を漂わせており、体調が芳しくないのがよくわかります。スマホを眺めているか、壁を眺めているかの二択です。
その子はお父さんと思われる保護者と診察室へ入って行きました。次の瞬間、ものすごい金切り声が響き渡りました。内容は「今すぐそれをやめてくれ」というようなもので、ホラー映画でもなかなか聴かないレベルの悲鳴を伴っています。
おそらく、注射ではなく、診察をされているようで、わりと長い間、悲鳴と絶叫が響き渡っています。注射ではないのはわかっていて、自分はかなり歳を重ねた大人なのですが、聞いていると、怖くなってきました。
あの扉の向こうで、一体何が行われているのでしょう。そんなにも痛いのか…と自然と、眉をひそめてしまうくらいの叫び声です。聞くつもりもないのに、何が起きているのだろう…と耳をそば立ててしまいます。まあ、そんなことせずとも大音量で聞こえるのですが。
医師とお父さんがなだめている声も聞こえるのですが、切れ切れであまり効果があるようではありません。
注射を、さほど苦手だと思ったことはありませんし、こちらのワクチン注射とは何の関係もないのだろうとは思いますが、あの声はなかなかに動揺します。
痛みに怯える子どもの声は、かなり心臓に悪い、と思いました。
はらはらしてしばらく、診察室へ呼ばれ、流れるようにワクチン接種をされました。
お、あまり痛くない!とほっとしました。
しばらく待合室で待ってから帰宅します。
用事の前に食事をとりましたが、その間も特に異変はありません。
これなら、用事にも予定通りに行けそうです。
病院へ行った服から、着替え、用事へ向かいます。
時間より少し早めに辿り着いて、用事に臨んだのですが、何となく集中できません。
しかも集中できないだけでなく、とてもイライラします。
他者の無遠慮さ、気遣いの無さ、些細な事がうまくいかない様子、ひとつひとつが目に留まり、胸をざわつかせます。
室内の温度、換気されていない空気の濁った感じ、低い天井、暗い電灯までもが、気に触るのです。目の前で繰り広げられるもの全てにがっかりしたような気分になりました。
不快なまま用事を終えて、買い物をし、帰宅したのですが、そこで気づきました。
ワクチンを打った腕が、かなり痛いのです。
腕が上がらないということはありませんが、違和感が大きく、だるさがあります。
腕以外の関節にも筋肉痛のような鈍く重い感覚があります。
ワクチンの副作用で、腕に痛みが出ていたのに、きちんと自覚していなかったわけです。
痛みが体にあったから、イライラしていたのです。その痛みがあったから、見るもの全てに不快感を感じたのでしょう。

その昔、ぎっくり腰になった時にも、世界に対して呪詛を吐きながら生活していたことが蘇ってきました。
薄々わかってはいましたが、身体が痛い時、ものすごく心が狭く、怒りっぽくなるようです。
ひどい痛みなら、それにももう少し自覚的だと思うのですが、ほんの少しの痛みでもひどく影響が出ることは、わかっていませんでした。
少しの痛みでもじわじわとボディーブローのように効いてきて、調子がひどく崩れてしまうタイプのようです。
頭痛も薬の服薬を我慢すると、結局、吐き気が出るほどひどくなるものなぁ、と思います。
頭痛に関しては、早め早めに、漢方薬を飲むようにしていましたが、それ以外での痛みも同様に対応する必要がありそうです。

痛みがあると、世界は暗く見え、
痛みがあると、あらゆる人の弱さが、許しにくくなる。
今回は、身体の本当の痛みでしたが、心の痛みでも、変わらないような気がします。
自分の痛みを、まずは、和らげるということは、大切なのです。
自分の痛みを軽んじたり、無視したりしないほうがいいですね。
さあ、痛み止めを飲みます。





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