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vol.1 「いま、ココ」を、心の赴く方向へ。

「大学生活をもっと充実させたい!」「やりたいことを見つけたい!」という想いを持ちながらも、なかなか行動に移せない北海道内の大学生に向けた連載企画「Knows」。

編集チームが独断と偏見で選んだ面白大学生の人生をお届けします。今回は記念すべき第1回目。ゲストは北海道大学文学院2年次を休学中の瀬川康さんです。

皆さんは、今という時間をどのような時間と捉えていますか?将来、いい仕事に就くための準備期間など、「将来のゴールを達成するための1ステップ」として捉えている方も多いのではないでしょうか?

瀬川さんもかつてはそうでした。しかし、次第にこの捉え方よりも「今はやりたいことをやるためにある」と捉えた方がしっくり来ることに気付いたとのこと。瀬川さんはこれまでにいったい何を考え、どんな人生を送ってきたのでしょうか?

将来の夢から逆算して行動していた少年時代

こう君幼少期 (2)

ーこんにちは!では早速、瀬川さんの自己紹介と今の活動について教えてください。
「北海道大学文学院人間科学専攻心理学講座心理学研究室修士2年の瀬川康です。休学2年目に突入しました。今は、シェアハウスの管理人、フリースクールでのお仕事、近くのお寺での寺子屋の立ち上げ準備などをしています。」

ーシェアハウス・フリースクール・寺子屋と色々なことに取り組まれているんですね!幼少期はいったいどんな子だったんですか?
「小学校の時は、周りと比べてそんなに特別な子どもではなかったと思います。他の子と同じように、将来の夢を先生から言われるがままに掲げていました。

6年生を送る会で将来の夢を言うときには「研究者」と言ってましたね。」

ー小学校の時の夢が研究者ですか。なんで研究者だったんですか?
「僕、昔から動物と触れることが多かったんです。その影響で「動物を人と同じように扱いたい」、「なぜ対等に扱わないんだろう?」という想いが強くて。

人間の快適な暮らしのために動物が犠牲になっている状況を何とかしたいという想いで研究者になりたいと言っていました。ドラマのガリレオで物理学者に憧れて。遠巻きにやりたいことをやりつつ動物を助けたいという想いもありましたけど(笑)」

ーガリレオ流行ってましたよね。中学の時はどうでしたか?
「先を見つめるタイプだったので、入学した当初から高校入試のことを考えて行動していました。授業中めっちゃ発言するとか、学級委員長をやったり。人前で話すことは苦手なのに、頑張ってましたね。」

ー努力家だったんですね。この頃、動物への想いはどうでしたか?
「中3あたりから動物行動学に興味を持ち始めました。最初は遠巻きにでも動物を助けられたらとか思ってたけど、だんだんと自分だけが頑張ってもだめじゃないかと思い始めて。

みんな動物を助けたいと思うには、直接動物の気持ちが分かるようになった方がいいんじゃないかと思ったんですよね。それでマイナーもマイナーな動物心理学という学問に興味を持ったという感じです。

高校に入ってからもその興味は変わらずに、志望校は動物心理学(正確には動物行動学)の研究室がある大学を選びました。1年浪人してしまいましたが、岩手大学農学部に入学することになりました。」

ーここまであまり迷うことなく進路を決められている印象ですが、実際迷いはなかったですか?
「正直、研究者に対して「これだ!!」感はなかったんですよね。高校の情報の時間の時に将来の夢について調べる機会があったんです。「やりたいことを実現する中で、自分の知っている中の選択肢で、強いて言えば研究者なのかなあ、、、」くらいの気持ちでした。

小さい頃から将来の夢を決めて、そこに向かっていくのが良いという考え方だったので、とりあえず研究者になるという夢を定めていました、常に夢は頑張って決めてましたね。」

20歳誕生日、フィリピンで迎えた転機

こう君大学生

ー大学生活は1年生の頃から順に聞いていきたいのですが、どんなことがありましたか?
「研究者になろうとしていたので海外の大学院に進学することを見据えて、1年の春にフィリピンに語学留学に行きました。この留学はある種ターニングポイントでしたね。

英語喋れるようになりたいという想いだけでフィリピンに行ったので、最初はストリートチルドレンとか見たくなかったんですよ。行く前からかわいそうだなってのを思い知らされると思ってたので。

けど、実際に会ってみると、なんか日本よりよっぽど温かみあって元気で幸せそうだなって思っちゃって。そこから、ガラッと価値観変わりましたね。貧富の差もそうですが、勝手にかわいそうだと思っていた人だったり、動物も全然かわいそうじゃないんじゃないかって。

だから先々のために世のために頑張ってどうこうしようじゃなくて、いま自分が幸せになって目の前の人を幸せにして、そっから伝播させてこうって。
それが転機で、だいぶ根暗で無表情だったのが、表情豊かになって、いろいろチャレンジしてみようと思えるようになりました。

切磋琢磨して高め合える大学生活最高の友だちに出会えたのもこの時でした。」

ーでは、留学後はどんな生活をしていましたか?
「もう、そこからの思い出は山ほどありますね。それも自分から前にグイグイ進んでいくのではなく、周りの人たちに導かれるかのように。

留学でできた友達から他学部の講義を受けれることを教えてもらったことがきっかけで他学部履修をたくさんしていました。実は、2年生の時に履修した言語学系の講義の教授がたまたま同じ大学内にあった心理学の教授を紹介してくれたおかげで、動物を学びつつ心理学の道に足を踏み入れることになったんです。」

ーこれまた大きな転機ですね。どうして心理学だったんですか?
「動物心理学を学びたい想いとは裏腹に、家畜生産の事ばかりやっていた学部に嫌気が指していて。それを心理学の教授に相談したら、心理学のアプローチで学びたいことが学べるかもしれないと気付いたんですね。

人間だけでなく、動物の行動理解にも応用できるアプローチでした。この出会いは本当に偶然でしたが、想いを持ってたからこそ、その偶然を手繰り寄せることができたんだなって思います。」

ーちなみに、大学3年生になると周りが就活を開始すると思うんですが、焦りは感じませんでしたか?
「みんな就活してて、「おれ大丈夫かな?」って不安もありはしたんですけど、その程度で。自分の道はそこにしかないと思っていたので、迷うどころか就活するということを1ミリも考えることなく院進に向けて勉強していました。」

今やりたいことをやる

こう君E-LINK

ー4年生の時にはどんなことがありましたか?
「ようやく研究者の卵となる研究を始められたのですが、そこで気づいちゃったんですよね。狭い専門分野の研究にすべてつぎ込んでも、いざ人に伝えるとなると、専門的過ぎて伝わらないって現状に。

あーこれまで積み上げてきたけど、こうもあっさり夢って変わるんだなって。変わったというかよりやりたいことが明確になったというか。それまでの過程に後悔は微塵もありませんけどね。

そこで、自分は「今やりたいことをやる」方が性に合ってるなって気付いたんです。研究したいなら、できる形でいま試してみればいい。「先じゃなきゃできない」じゃなく、いま、この瞬間にやりたいを実践してみようと。

その発見によって”仮決め”していた研究者という将来の夢に縛られることなく、やりたいと思ったものに手を出せるようになりました。」

ー大きな変化ですよね。どんなことをやったんですか?
「もうひたすら挑戦でしたね。キャリアに関する企画運営をやっている学生団体の代表をやってみたり、起業したいわけでもないですが起業家育成講座で、誰もが安心してやりたいことに挑戦する居場所づくりを考えたり。

そこの芯には、目の前の存在(自分も人も動物も)を大切にしたいという想いがありました。」

ーちなみに岩手大学を卒業後に北大の文学院に入学されたのはなぜですか?
「研究したいというより脳科学の分野で特に「共感」について知りたくて。さらに行く前から超絶北海道の”人”に恵まれていたんですよね。

北大のオープンキャンパスに来た時に空き時間があったんです。それでFacebookを開いて、北海道で何かイベントがないかなと探していたらすごく面白そうなものを見つけて。「北海道の楽しい100人」というイベントに参加しました。

そこで今でも関係が続いている素敵すぎる場づくりをしている人に出会ったんですよ。その人のプレゼンがすごすぎて、鳥肌を通り越して、呆然としながら聞いていたくらい(笑)。

懇談会にでる時間もなかったので、もう咄嗟にメッセージ送って、それで仲良くなれて。たまたま参加したイベントがきっかけで北海道につながりができたんです。この出来事が北海道に来た一番の理由です。」

ー瀬川さん、本当に人との出会いに恵まれていますよね。院に入ってからはどんなことがありましたか?
「1年の前期はひたすら脳科学の勉強をしていました。その時に学びたいことは大体全て学べてしまったんですよね。そして気付きとして、自分がこんなに面白いと思ってやっている脳科学を実践の場に移すのが難しいことに気付いたんです。

今後研究するときには、研究対象を絞ってより狭い範囲の話になっていきます。また、自分の友達に脳科学の話をしようとしてもみんな全然興味を持ってくれなくて(笑)。

この事実に気付いたことで、このまま脳科学の研究をするのではなく、興味があって今までやってきたことが生かせる実践の場の教育の道に進もうと思ったんですね。」

ー1年生が終わってから休学されましたよね?
「そうですねー。「どうなるかわからない予測できない世界に飛び込んでいきたい!」と思って大学を休学することを決めました。だから、「休学後は○○をしよう」というような目的はなにも決めていませんでした。

自分の確固たる想いを持ちつつ、それに共感してくれる人間関係の中にいれば絶対にいい方向に進むし、楽しくなると思ってました。実際休学2年目に突入した今もいろんなことにチャレンジしてますし楽しくやれています。」

ー今という時間をやりたいことをやる時間と捉えたからこそできた決断ですね。

今後の展望とメッセージ

こうくん雪結

ー瀬川さんの今後の展望を教えてください。
「やっぱり先(未来)ばかり見たくないんですよね。目標立ててこなすだけの見え切った世界より、想像つかない幸せを楽しみにしたい。

今は僕がやっている学童やシェアハウスにプラスして”おちゃのま”という居場所の活動、”オカッテ”という地域食堂を通して「街ぐるみで子育て」をしていきたい。

いま目の前にあることを自分なりにガムシャラにやっていく。1年後どうなっているかは本当にわかりません。でも僕は本当に人に恵まれているし、自分の想いに共感する人ばかり引き寄せるので失敗ということはあり得ないです(笑)。ガムシャラに取り組んだ先に広がっている景色がすごく気になります。

あと、僕は今までぼんやり「家族の拡張」ということをやりたいと思っていました。今まで意図して活動していたわけではないんですが、気付いたらシェアハウスであったり、居場所であったりで実現しつつあって。

無意識的に思っているものってちょっとずつ形になっていくんですよね。別に将来の夢を定めなくたっていいんです。」

ー最後に、想いはあるけど動きだせない大学生に対してのメッセージをください。
「自分の心に正直に生きてほしいですね。そのために、「無理に動かない」ということと「やりたくないことはやめる」ことです。

周りに流されて無理に動く必要はないと思います。本当にやりたいことなのかを考えて、やりたいことじゃなかったのであれば、それを頑張ってやる必要はないです。これは逃げじゃない。積極的選択。

自分の本当に心の底から思っていることって、周りは意外と気づいているし、それが分かる人が近い存在になって、自分の道がおのずと開けてくる。だって結局自分を形成するものって周りの人間関係だから。

やりたいこととまで言えなくとも、自分の想うまま、心の赴く方へ。頑張って何かをやろうとしなくていいんです。”ケセラセラ、なるようになる、未来は見えないお楽しみ”です。」





以上でインタビューは終了です。瀬川さんは幼少期と今では全く考え方が異なっています。将来の夢・目標を定めない生き方、面白いですよね!皆さんはどちらの生き方が自分に合っていると思いますか?

瀬川さんの人生を書いたこの文章から何かのきっかけを得てもらえたら嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

取材・文:金子新太郎(FacebookTwitter

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