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ミツバチが食卓を左右する:ミツバチ減少と食糧供給問題の解決のためのテック4選

ミツバチが私たちの生活を大きく支えているという事実をご存知でしょうか?

実は、世界の食糧供給のうちおよそ30%はミツバチによる花粉交配によって支えられているといいます。例えば、イチゴ、メロン、かぼちゃ、アーモンドなど......。米国ではミツバチによる花粉交配の経済価値は年間50~100億ドルに達すると言われているほど。
ミツバチは私たちの食卓に密接に関連しているのです。

そして今、ミツバチの数の減少が問題になっています。
特に米国では、1947年には590万あったというミツバチの巣が巣が2008年には244万にまで減少。また、ここ数年は安定してきているものの、2006年以降はその減少率がより深刻になものになったといいます。ミツバチの死亡や失踪原因は未だ解明されていませんが、病気や殺虫剤、農薬、また気候変動や住処の減少といった理由が考えられています。

今回は、このミツバチの減少にテクノロジーで立ち向かう企業や取り組みを紹介します。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。このマガジンでは、海外の情報を中心に様々な社会課題の解決のために開発されたロボットを紹介しています。また弊社では最新ロボットの導入支援も行っております!今回ご紹介した製品に興味がございましたら、お気軽にご相談ください。

データ化された巣箱でミツバチの生存率を向上させるBeewise社

イスラエル発のテックスタートアップであるBeewise社。この会社は従来の木製の蜂の巣箱をデータドリブンかつ自動化されたシステム「BEEHOME」に生まれ変わらせました。

屋外に設置されたBEEHOME 24コロニーがBEEHOME内に設置可能 Beewise社公式サイトより

Beewise社によると、従来の巣箱の場合、巣箱内の点検は1巣箱あたり3~4週間に1度が限界だそうです。そして、点検を行った時にはミツバチがすでに亡くなっていたり、巣の一部が壊れていたりということが問題となっていました。ミツバチの死亡原因は気候変動、農薬、病気、害虫などと考えられています。

Beewise社の開発したBEEHOMEは、巣箱内をシステムが常にモニタリングします。温度や湿度を適切に保ち、また化学薬品を使うことなく害虫を駆除します。また、収穫に十分な量のハチミツが貯まった場合や問題が発生した場合は、養蜂家にリアルタイムに通知。ミツバチを守り、様々なプロセスを自動化することで、ハチミツの収穫量やミツバチによる花粉交配を改善することができると言います。

パソコンにリアルタイムでデータが送信される Beewise社公式サイトより

CEOのSaar Safra氏によれば、過去3年間、数千の巣をBEEHOME内で養蜂家に利用してもらった結果、BEEHOME使用前は35%だったコロニーの崩壊率を使用後は7%まで減らすことに成功したとのこと。8,000万ドルの投資を受けることになったというニュースも先日発表されました。これから先、さらなる利用の拡大が期待されそうです。

ミツバチのための予防接種!? 注目の学生スタートアップ・beemmunity社

beemmunity社は2022年5月から本格始動予定、米国名門のコーネル大学の研究から始まった注目のスタートアップ企業です。beemmunity社はミツバチにとって理想的な環境の巣箱と、ミツバチが農薬への免疫をつけることができる栄養素の提供を目指しています。

NPR 米国公共ラジオ放送によるインタビュー内では、beemmunity 設立者のJames Webb氏が研究チームと共同でミツバチにとって有害な農薬を分解することができる酵素を発見。そしてその酵素を砂糖や花粉に混ぜると、ミツバチがその酵素を摂取することを確認したと話しています。この酵素を摂取したミツバチと摂取しなかったミツバチを致死量の農薬に晒したところ、摂取済みのグループは100%生き残り、未摂取のグループは100%死亡したそうです。

WildHive設置の様子 beemmunity社公式サイトより

beemmunity社は「WildHive」と名付けた人工巣箱キットの提供を2022年春に開始予定です。この巣箱はミツバチにシェルターや栄養補給の場を提供します。この「WildHive」内では上記のミツバチ健康増進のための栄養素も設置されるそうです。

Techcrunchなど各種メディアに注目のスタートアップとして取り上げられているbeemmunity社。これからの活躍が楽しみですね。

花粉交配のプロセスを自動化?ロボット開発の研究を進めるウェストバージニア大学

次に紹介するのは、ミツバチを守るのではなく、花粉交配のプロセスそのものを機械化しようという取り組みです。

ウエストバージニア大学のYu Gu准教授が率いる研究チームは「StickBug」と名付けたロボットの開発を進めています。

StickBugの利用イメージとモデル図 WVUTODAYより

StickBugはグリーンハウス内での稼働が前提となっています。設計では、StickBugはグリーンハウス全体のマッピング実施後、各植物の詳細なマッピングも行い、どこに花があるか、どの花に受粉する必要があるかを把握するそうです。そしてその情報に基づいて行動の計画を立て、それぞれの植物に近づいて、花粉を落とす作業に進む形を目指しているとのこと。
StickBugには6本のアームがついており、そのアームが植物に合わせて花粉を落とすように開発を進めているそうです。

StickBugは実際に大学内のグリーンハウスに設置され、ブラックベリーとトマトを用いて実験を行う予定だそうです。将来、もしかしたらこのStickBugが私たちの食卓を支えているかもしれません。

ドローンとシャボン玉が花粉を運ぶ!?日本でも進む花粉交配手法の研究

実は日本でも、このポリネーターの減少問題に対応するための研究が進められています。

北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科の都 英次郎准教授は、ドローンを用いて人工受粉を行う実験を実施しました。

シャボン玉メーカー付きドローンと飛行の様子 iScinece Volume 23, Issue6, Soap Bubble Pollinationより

実験では、ドローンにシャボン玉メーカーを取り付け、一列に並べた植物に花粉を含んだシャボン玉を飛ばしました。シャボン玉特有の粘着性や柔らかさにより、効果的に花粉を植物に付着させることができたといいます。また研究の過程で、風に耐えることのできるシャボン玉の構造を用意することもできたそうです。

シャボン玉が花につく様子 iScinece Volume 23, Issue6, Soap Bubble Pollinationより

私たちにできることは? No Mow May キャンペーン

世界で研究や開発が進むミツバチやポリネーターの減少問題。安定した食糧供給のためにも、解決や事態の改善を祈るばかりです。

ちなみに、このミツバチの減少問題に私たち個人ができることのひとつは、庭の芝刈りをしないことだそうです。草花が生い茂った庭では、芝刈りをされた庭と比べて5倍のハチが生息していたとのこと。

花が多く咲く時期にハチに生息地を与え、花粉の運搬を促進するための No Mow May (5月は芝刈りをしない)キャンペーンがイギリスや米国では行われています。お庭を放っておくだけで、環境問題に貢献できるなんて素敵なことです。皆様も試してみてはいかがでしょうか?

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。当社では、新規ロボット・ITシステムソフトウェアの開発や最新ロボットの導入支援を行っております! 今回ご紹介した製品含め、ご関心がございましたら、こちらのページからお気軽にご相談ください。






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