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【ワットインターラーム】トンブリー王朝一代きりの王・タークシン王が眠る美しい寺院
東南アジア史を少しでもかじったことがある方なら「トンブリー王朝」の名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。
たった15年間だけ、一代きりの王であったタークシン王が眠る【ワットインターラーム】をご紹介します。
トンブリー地区の宝とも言える寺院
ワットインターラームの門には、馬に乗ったタークシン王のレリーフが付いています。
タークシン王の生い立ちや最期については後にして、まずは境内の美しい建物や仏像を見ていきましょう。
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広々とした境内には、本堂を挟んで珍しいネイビーを基調にしたプラーンが2つ建っています。
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土台には陶器の皿が埋め込まれており、こちらもネイビーで支柱のホワイトとのコントラストがとても美しいです。
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夕方5時頃に着いたので、あまり参拝客もおらず風でサラサラと木の葉が擦れる音と、鳥の鳴き声が聞こえる中で見る境内は、なんとも神秘的で美しかったです。
控えめながら荘厳な本堂
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屋根はチョーファーの付いたタイらしい装飾ですが、壁や柱などはあまり凝った作りではなく、凛とした雰囲気の本堂です。
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本堂内もさっぱりとしていて、連続パターンの花柄と仏像後ろの菩提樹の壁画だけですが、落ち着いた装飾だけに中央の仏像が際立ちます。
菩提樹の壁画も玉座のように描かれていて、一層神々しく見えます。
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こちらの仏像はキリっとしたお顔で、正面から見ると微笑んでいるのに斜め下から見るとちょっと厳しい感じに見えます。
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きわめてシンプルな礼拝堂
ワットインターラームはこの周辺にたくさんある寺院の中でも、比較的大きいのですが、本堂と同じく礼拝堂も過剰な装飾のない簡素なつくりです。
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内部の壁画などもなく、トライアングル状に設置されたニッチ棚のような場所に小さな仏像が並んでいるだけです。
これはこれで趣深くて好きですが、極彩色の華やかな寺院が好きな方には物足りないかもしれません。
観光客が少ないのはそういう理由もあるのでしょうね。
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両端に立つ立像がカンボジア系の少し古い時代を思わせる顔でなかなか興味深いです。
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道路側の4体の仏像は必見
境内の道路側には4つの小さなお堂が並んでいます。
中は3人以上は入れないくらいのせまさです。
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こちらも白を基調にした美しい建物なのですが、それぞれに祀られている仏像と壁画が素晴らしいのです。
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涅槃仏(左側臥位)
通常涅槃仏は右側を下にして寝ているものがほとんどなので、このように左側を下にして寝ている姿は珍しいですね。
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涅槃への喜びかもしれません
小さなお堂内にゆったりと横になる姿と、今にも消えてしまいそうな古い壁画が儚さを感じさせます。
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割と保存状態が良いです
仏足石
ここは小さな仏像が数体と仏足石があるだけの簡素なお堂です。
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数段の階段を上って見るようになっています
中心の仏像の背後にある壁画を見ると、元々は大きなお堂の中に仏像が祀られているように描かれていたのが分かります。
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鮮やかだったころはどんなに美しかったのだろう、と想像がふくらみますね。
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当時のものなのでしょうか?
涅槃仏と3人の弟子
こちらはとても珍しい仏像です。
棺桶におさめられた釈尊が、一番最後に到着した愛弟子のために足だけを出してお別れの挨拶をした様子です。
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カッサパ尊者と言われています
過去記事でも書いたのですがこれの小さな仏像を、バンコク国立博物館の特別展で見たことがあります。
しかし、こうやってお堂の中で見るのと展示物で見るのでは全く異なりました。
少しひんやりと湿った匂い、かつては華やかだったであろう壁画、信者から金箔が貼られた仏像達の肌。
全てがひとつになったときに、さらに畏敬の念が生まれてきます。
どんな人でも逃れられない死の姿が、なぜか清々しく感じられます。
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談笑している姿が愛らしいですね
涅槃仏(右側臥位)
ワットポーなどでもよく見られる、右側を下にして寝ている一般的な涅槃像です。
とある病院のブログで面白い見解を読みましたのでシェアします。
こういう視点で見ると釈迦も人間であったのだな、と自然の摂理を実感せざるを得ません。
体中に血液を送る力が衰えた心不全の場合、心臓から出る大動脈と心臓に帰る大静脈との高低差、また、心臓と肺との位置関係により、涅槃像の体位が、心不全からくる諸症状を最も軽くすると考えられます。
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この部屋には中華風の宝物図がたくさん描かれており、他のお堂よりいっそう華やかです。
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もし観光中にこの寺院を訪れた時に、あまり時間がない!という場合や平日だったから本堂が開いていなかったという場合はぜひこの4つのお堂だけでも見ていただきたいです。
運命のいたずらを感じる歴史
タークシン王の眠る場所を見る前に、彼の功績と生涯を振り返ってみます。
ビルマの軍勢に占拠された王都アユタヤを奪還した猛将として名高いタークシン王。
彼はアユタヤ陥落直前に兵団を率いてタイ南東部に退去し、兵力を再統合して都を急襲。
この作戦によってビルマ軍は完全に撃破されました。
その後、トンブリーに都をうつし、みずから王朝を開いて王位に就きました。
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タークシン王像もあります
タークシン王は純血のタイ人ではなく、タイ人の母と中国人の父の間に生まれました。
非常に才にたけた少年で、官吏の元に養子に出されます。
寺院に預けられている間は、タークシン王在位中に彼をそばで支え、彼の最期にはタークシン王を処刑した、のちのラーマ1世となったチャクリーと共に学んでいたそうで、運命のいたずらを感じます。
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タークシン王が眠っています
右側にあるのがタークシン王廟です。
タークシン王は熱心な仏教徒でしたが、自分の出自が高官ではないことに劣等感を抱き、次第に心を病み、僧侶に無礼な振る舞いをしたとのことで処刑されてしまいます。
もしかしたら、続く内乱に不満を募らせた反タークシン派がタークシン王を処刑するための理由のひとつに過ぎなかったのかもしれません。
熱心な仏教徒でありながら、身分や地位に執着し最後には三宝のうちのひとつを粗末に扱ったせいで処刑されてしまうとは皮肉な話ですが、今は俗世を離れこの金色の仏塔の下に静かに眠っています。
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悲劇の最期をとげたタークシン王ですが、現在まで続くタイの国土を作りあげた人として、今でも「救国の英雄」とタイ人に愛されています。
私が行ったときは、もう寺院を閉める間際だったのでタークシン王の像があるお堂には入ることができませんでした。
次はぜひ早めに行って、見てみたいものです。
2024年12月に訪タイした際に最も印象に残った寺院です。
仏教美術の視点からは4つのお堂に祀られた貴重な仏像や壁画に、タイの歴史の視点からは激動の15年間を生きた王の思いを感じ、胸にこみあげるものがありました。
トンブリーの宝ともいえるこの寺院、機会があればぜひ訪問してみてください。
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