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チおびたQ
2020年4月16日 04:52
時々、耳を塞ぐ。冷え切った手で両耳を覆えば、ごごごごご、と血潮が忙しなく走る音がする。海底から全てを攫う津波のような音。あぁ、彼は此れを海の音だと言ったのか。この轟を生きる音だと。「ざああ」と形容したのか。故郷の海とはまるで違う潮鳴りに、彼との距離は永遠に遠いのだと思い知らされる。結局私は、彼を知った気になっているだけなのだ。誰とも結びつかず寂寞した彼の過去を、遠くから追想することしかできない。
2020年2月4日 08:57
あぁ、朝焼けってなんでこんなに美しいんだろう!私は朝を迎えるたびにそう思わずにはいられない。燦々と昼に輝く暖かいお日様ではなく、夜を連れ去る一矢の閃光。燃えるような黄金で、遠くまで透き通って、青白く新しい朝を連れてくる希望の色。陰鬱の底まで届く強烈な光。なんて綺麗なんだろう! 闇夜を越えた人々は朝焼けの眩さに目をしぱたく。夜明け前が1番暗いという言葉通りの暗闇を切り裂き、平等に公平に誠実に朝の