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【小説】ヴァルキーザ(ルビ付き版)

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小説『ヴァルキーザ』本文にルビを振った版のマガジンです。(本文の内容を少し改変しています)
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2022年4月の記事一覧

小説『ヴァルキーザ』 11章(5)

小説『ヴァルキーザ』 11章(5)

次に入った小部屋の主は、ソボルという名の、小さな子供のワグル(妖鬼と呼ばれる精霊)だった。ソボルは気さくな性格だった。

「ボクね、パパとママの帰るのを待っているんだ」
ソボルは言う。

イオリィが膝を屈めてソボルに訊く。
「パパとママはいつ帰ってくるの?」

「わかんない。いつも遅いんだ。それに、いつも決まった時間じゃないし」

「そう…」

イオリィたち冒険者は、子供には悪い気が起きなかったの

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小説『ヴァルキーザ』 11章(4)

小説『ヴァルキーザ』 11章(4)

さらに地下2階の中を進んでゆくと、ユニオン・シップの冒険者たちは、行く先の通路の隅の大部屋から、美味しそうな食べ物の匂いが漂ってくるのに気づいた。

匂いに惹かれて様子を見に行くと、部屋からは明るい灯火の光がもれてきており、入り口には何か文字の書かれた立て看板がある。

さらに近づいて中の様子を見ると、大部屋の中には様々な料理の出店が並んでいる。そして何人かの客がいて、立ち喰いしている者もいる。

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小説『ヴァルキーザ』 11章(3)

小説『ヴァルキーザ』 11章(3)

地下2階に降りると、グラファーンたちは、1階と違い、廊下の両側の壁に照明用のたいまつが灯っていることに気づいた。たいまつは、一定の間隔で配置されている。

そのおかげで、やや明るい通路を歩いてゆくと、この階には、普通の人たちがいることが分かった。

はじめに立ち寄った手前の数部屋は、いずれも空き部屋だった。

その後に寄った次の部屋は牢屋になっており、外から鍵のかけられた格子戸の向こう側の部屋のな

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小説『ヴァルキーザ』 11章(2)

小説『ヴァルキーザ』 11章(2)

地下に降りると、迷宮の中は真っ暗で、ゼラの持つ「光の棒杖」がもたらす魔法による照明がなければ、通路を歩いていくことはきわめて困難だった。

石畳の床の上を縦一列になって歩いてゆくと、やがて一団は、2体の、迷宮の中を彷徨いている怪物と遭遇した。

それは、ファントムという幽霊の化物だったのだが、グラファーンたちはその正体を知らずに打ちかかっていった。

ファントムの体は半透明で実体がなく、下半身のな

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小説『ヴァルキーザ』 11章(1)

小説『ヴァルキーザ』 11章(1)

11.曠野の地下迷宮
ユニオン・シップ団は、外交特使のアム=ガルンを団長におき、ゼラを団の顧問に任じて団長を支援させた。そしてその二人を護衛するための役にグラファーン、イオリィ、エルハンスト、ラフィアが就く、という態勢を取った。
また、組合規約に基づく組合事務の執行など、団の実務上の指揮はグラファーンが担い、副長にエルハンストが就いた。

こうして役割分担を決めた一団は、丈の高い草の生い茂る、果て

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小説『ヴァルキーザ』10章(4)

小説『ヴァルキーザ』10章(4)

グラファーンたちユニオン・シップ団は、新たにゼラを六人目の仲間として受け入れた。

彼女は組合としてのユニオン・シップについて興味を持った。とくにその規約についてグラファーンから説明を受けると、彼女は組合のために、それをきちんと文書化してはどうかと提案した。

そこで塔から少し離れた城内の会議室を借りて、グラファーンたちはゼラの助言のもと、互いに平等に話し合った。そして組合の自主性と組合員の自由を

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小説『ヴァルキーザ』10章(3)

小説『ヴァルキーザ』10章(3)

その後ユニオン・シップの団員たちは、レッド親衛隊長と三人の侯に連れられ、城塞の隅にある高い塔へ行き、塔の階段を登っていった。

「この城を出る前に、君たちに会わせたい人がいる」
レッド隊長に、そう言われたのだ。

塔の階段を登ると、突き当たりに、木製の大きくて重い扉がある。

「ゼラ様、ユニオン・シップの方々を連れて参りました」
ひと声をかけると、レッド隊長は、その部屋の扉を開けた。

その先にあ

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小説『ヴァルキーザ』10章(2)

小説『ヴァルキーザ』10章(2)

翌日の寒い朝、教練室でレッド親衛隊長は、イリスタリアからの指令を三人の侯に伝えた。ユニオン・シップの冒険者たちにこのエルゴッド城を通過させ、城門外の世界に出させるよう命じたのだ。

すると、ダイエス侯が答えた。
「レッド隊長、ご存知かと思いますが、このエルゴッド城から発つには、われら三人の侯の全員の同意が必要です」

「然り。たとえ、形式的な手続きとはいえ…」
ドライヤー侯が引き継ぐ。

「その通

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小説『ヴァルキーザ』10章(1)

小説『ヴァルキーザ』10章(1)

10. エルゴッド

レッド親衛隊長に引率され、イリスタリアの都を発ったユニオン・シップは、エルゴッド城に向かい北へと道を進んだ。

隊長の説明によると、これから行くエルゴッドは、イリスタリアの誇る難攻不落の巨大な城塞なのだそうだ。そしてエルゴッドは国の北限に位置して国境を守っており、オーガー(食人鬼)やワグル(妖鬼)をはじめ、イリスタリアの領域外の者たちが国へ侵入するのを防いでいるのだという。

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