マガジンのカバー画像

【小説】ヴァルキーザ(ルビ付き版)

105
小説『ヴァルキーザ』本文にルビを振った版のマガジンです。(本文の内容を少し改変しています)
運営しているクリエイター

2022年2月の記事一覧

小説『ヴァルキーザ』6章(2)

小説『ヴァルキーザ』6章(2)

アム=ガルンの力を見て、そして彼の言葉を聞いたグラファーンは、巡礼者たちを助け出し、ともにイリスタリアの都に行く途中、自分の考えついたことを彼に打ち明けた。

「アム=ガルン、失礼かもしれませんが、もしかしたら貴方は、呪いにかけられた人間を元に戻す力がおありではないですか?」

グラファーンは、今は亡き母マックリュートが占術を通して彼に語った言葉を思い出していた。
母は、私にかけられた死の呪いを解

もっとみる
小説『ヴァルキーザ』6章(1)

小説『ヴァルキーザ』6章(1)

6. 巡礼者たち

カルマンタの町を発ったユニオン・シップの冒険者たちは一路、イリスタリアの都を目指して歩く。数日後、イリスタリアに通じる街道を行くと、巡礼者の一団が六人の山賊らに襲われているのを見かけた。

グラファーンたちユニオン・シップの三人は、すぐに山賊たちを追い払い、巡礼者たちを助けた。

「おい、ケガはないか?」
エルハンストが、埃まみれの巡礼者たちのリーダーらしき若い男に声をかける。

もっとみる
小説『ヴァルキーザ』5章(4)

小説『ヴァルキーザ』5章(4)

すぐに、そばの壁に穴が空き、その隠し部屋の開口部から、何者かが出てくる気配がした。息づかいからみて男のようだが、夜目の利くグラファーンにもその姿は見えなかった。そう、何も…。

エルハンストが叫んだ。
「気をつけろ! 透明人間だ!」

だがすぐ突然、イオリィが
「痛っ!」
と自分の脚を反射的に押さえ、後ずさりした。

イオリィは、目に見えない者からの攻撃をかわすことができなかった。

グラファーン

もっとみる
小説『ヴァルキーザ』5章(3)

小説『ヴァルキーザ』5章(3)

よく見ると、右の方へ延びる通路は、すぐに、閉まった大扉のある壁に突き当たり行き止まりとなっている。左の方の通路は、遮るものもなくずっと先へ延びていて、奥はランタンの灯りが及ばない暗がりで、様子は分からない。

グラファーンたちは手短に話し合って、右の方へ進むことにした。大扉の前に立つと、力持ちのエルハンストがそれを開けにかかった。

扉は鍵がかかっておらず、すっと開いた。中は部屋のようだ。エルハン

もっとみる
小説『ヴァルキーザ』5章(2)

小説『ヴァルキーザ』5章(2)

イオリィは、通路を進んですぐ、二人の山賊たちと遭遇した。
運命の賽は振り放たれた!
山賊たちはあわてることなく、イオリィに短剣で打ちかかってきた。一人目の短剣が空を切って外れる。もう一人の短剣は、彼女の左肩を捉え、わずかだが鈍い痛みを及ぼす打撃を与えた。

恐怖を覚え、顔をしかめて後ずさりしたイオリィは、後ろに置いたランタンの光がより明るく届く範囲にまで、さらに後退する。
彼女は、グラファーンたち

もっとみる
小説『ヴァルキーザ』5章(1)

小説『ヴァルキーザ』5章(1)

5.無法者の洞窟

グラファーンたちは、お尋ね者のゴルクどもを討伐するため葡萄亭を発ち、「無法者の洞窟」へと向かった。

探してみると、たしかに、ジェイクをはじめカルマンタの町の人々から聞き込んだ話を総合して見当をつけた場所に、洞窟のありそうな森があった。

それはカルマンタからイリスタリアへ延びる道を数日ほど歩いた後に道を少し外れ、脇にある沼の縁を通り過ぎてしばらく歩いていった所だった。

見通

もっとみる