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小説『ヴァルキーザ』5章(2)
イオリィは、通路を進んですぐ、二人の山賊たちと遭遇した。
運命の賽は振り放たれた!
山賊たちはあわてることなく、イオリィに短剣で打ちかかってきた。一人目の短剣が空を切って外れる。もう一人の短剣は、彼女の左肩を捉え、わずかだが鈍い痛みを及ぼす打撃を与えた。
恐怖を覚え、顔をしかめて後ずさりしたイオリィは、後ろに置いたランタンの光がより明るく届く範囲にまで、さらに後退する。
彼女は、グラファーンたちが応援に来るまで、この範囲内で戦わざるをえなかった。
三、四度斬り合ううちに、イオリィは一人の賊を倒すことに成功した。またもう一人の賊は、途中から駆けつけ参戦したグラファーンによって、一撃で倒された。グラファーンは暗視の能力があるので、暗がりの中でも正確に相手を捉えて打つことができた。
こうして二人の賊は倒れ、あとから来たエルハンストとともに、三人の冒険者たちはさらに通路を先へと進む。
次は、右手の壁に扉が見えてきた。硬い木でできた重い観音開きの扉だ。
エルハンストが武器を置いて、力強い両腕で、その重い扉を開ける。その脇から、グラファーンが、さっと中の部屋に入る。
そこは食糧庫だった。グラファーンは短剣をかざしたが、誰もいないようだ。
「何か食っていこうか?」
エルハンストがグラファーンにささやく。
「よせよ、奴等が来るぞ」
「ちぇっ、冗談の通じないフォロスだな」
早々と食糧庫を出て、通路をまた先に進んでゆくと、左手の壁に広い開口部が見つかった。
おそるおそる入ってみると、中には誰も居ず、とくに罠のようなものも無かった。
そこはやはり部屋で、床は大理石のタイルが一面に敷きつめられている。
グラファーンたちは部屋を出て、さらに通路を先へ進んでいった。一本道のその通路はやがて右に曲がり、沿って進んでゆくと、また北へ曲がった。
警戒しながら歩くと、目の前に、通路を塞ぐようにして立つ、二人の重武装した山賊が現れた。
侵入者を見つけた山賊たちは、短剣を構え、襲いかかってきた!
再び剣の打ち合いになったが、グラファーン、イオリィ、エルハンストの三人は、この賊たちを素早く片付けた。
グラファーンたちは、また歩き始めた。
前方のすぐ右手に、部屋の入口が見える。今、戦ったバンディットたちの居住室のようだ。中には誰もいない。
部屋を出て、また通路を奥に進むと、今度は丁字路へ出た。前は突き当りで、右と左に道が延びている。グラファーンは立ち止まって、辺りを見回した。
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