あさひ市で暮らそう@宇水涼麻

千葉県北東部太平洋沿いにある旭市の応援小説です。景色、面白いお店、美味しいお店、楽しい…

あさひ市で暮らそう@宇水涼麻

千葉県北東部太平洋沿いにある旭市の応援小説です。景色、面白いお店、美味しいお店、楽しい人たちを紹介していきます。リアルと空想が織りなすハーモニーを楽しんでください。

最近の記事

あさひ市で暮らそう72話 ファッションの初手

「お前ら、後ろから見ると笑えるくらいそっくりなんだけど」  川上少年は友人から言われたそのからかいの一言にプライドが傷ついた。目立つことを良しとしていた中学校生活の中で週末のプライベートでの出来事だった。誰かと一緒であることは目立つことと相反する。ガンガンと頭にショックを受けた川上少年はその友人の追加の一言で雷に撃たれたような衝撃を受けた。 「服の色くらい別のにしろよ。わはははは!」  隣を見ると自分と似たような地味目色のシャツに安いジーパン。 『そうか…………。洋服

    • あさひ市で暮らそう71話 古きを愛する

       モンゴルマン斎藤とチカオと井上は地図を見ながら感嘆の声をもらした。 「こんなに協力してくれるなんて嬉しいな」 「ああ。予想以上だね」 「作品が足りるか心配なくらいだよ」  満面の笑みで話しているこの三人は『あさげー』事務局のメンバーである。あさげーは旭市を芸術で元気にしていこうというコンセプトでモンゴルマン斎藤が立ち上げたグループだ。  モンゴルマン斎藤については是非36話をお読みいただきたい。  あさげーアーティストの中で数名は小説内で紹介させてもらっている。

      • あさひ市で暮らそう70話 おひテラ同窓会

         ローカルチャレンジャーがきっかけで『おひさまテラス』のイベントを知った水萌里は、そこで行われる読書会に参加することにした。  読書会は前館長永井大輔の発案で、第一回目は『グッドライフ・幸せになるのに遅すぎることはない』が課題図書に選ばれた。  水萌里はその企画の数日前に知ったので数ページほどしか読む時間がなかったのだが、大輔がそれでもいいというので遠慮がちに参加を決めた。  読書会には『おひさまテラス』の六千四百冊に上る蔵書の管理をしているというかがみとなかむらも参加

        • あさひ市で暮らそう69話 正体不明の主催者

           海上地区にある『遊戯場ヴィーナス』の駐車場においてとあるイベント第一回目が大成功をおさめた。  一夏はそのイベントにいつものごとくフラフラと行ったのだが、そこで多くの人に同じ質問をされた。 「このイベントすごいんですけど、主催者さんをご存知ですか?」  一夏は「ハナワさんのお顔は存じているし、ドラム缶リメイクのアイディアが面白い人ってことは知っているけど…………。 あ! あさひの芸術祭実行委のメンバーさんよ」と困り顔で答えることしかできない。  そのイベントとは『

        あさひ市で暮らそう72話 ファッションの初手

          あさひ市で暮らそう68話 四季を楽しむ散歩道

           六月、今年もまた『川口沼親水公園』のハナショウブ(『あやめ』という表示をしていることもあるが、あやめは水辺に自生しないのでここではハナショウブとさせていただく)が見頃を迎えた。1500株といわれるその様子は清々しさと清らかさを見せつける圧巻な風景である。紫と白のコトラストを支える緑も美しいしくその間に見える水面がキラキラしてエフェクトを加える。  真守はその景色を楽しみながらも懸命に足を前に出す。あやめが咲く水辺を過ぎてくる風は冷たくて気持ちがいい。 「ほっ ほっ ほっ

          あさひ市で暮らそう68話 四季を楽しむ散歩道

          あさひ市で暮らそう67話 龍王伝説

          「私! 旭を元気にする歌を歌うユニットさんを知ってます!」  あさげー定例会議で勢いよく挙手をした水萌里が喜んで協力することにしたのは5月26日、飯岡しおさい公園で開催される『竜王まつり』だ。  飯岡は『竜王』に見守られている。 「いつ見てもかっこいいなっ!」  ある日の早朝、洋太は防波堤に描かれた龍王を見てニカリと笑うとその壁を登って海を見つめた。 「海の大神様に似ていらっしゃるのかなぁ……」  水平線の手前が大きく揺れて、まるで洋太に挨拶をしているようにきらめ

          あさひ市で暮らそう67話 龍王伝説

          あさひ市で暮らそう66話 ボッチって知っていますか?

           旭市は千葉県産落花生か全国に普及することになった始まりの街である。  みなさんは秋になるとピーナッツ畑に現れる円錐状の塊を見たことがあるだろうか。周囲1メール高さ1.5メートルほどの大きさのものがいくつも並ぶ様子は心を和ませる。  その円錐状のものを『ボッチ』とか『豆ぼっち』と言うのだが、実はそれ、千葉県の方言だって知ってる?  ということで、今回は『ボッチ』のお話です。  ☆☆☆  ある晴れた日の土曜日、みらいファームの企画の一つであるリトルステップの手伝いをし

          あさひ市で暮らそう66話 ボッチって知っていますか?

          あさひ市で暮らそう65話 農家と子どものつながりを

           NPO法人みらいファーム代表のミカは「農家と市民をつなぐ」活動をいつも考えている。  その一つが月に一度の『おすそわけ食堂』だ。一般的な『子ども食堂』としての姿だけではなく、農家からお心づけの野菜を分けていただきそれを材料として野菜の美味しさを伝えていく。ミカのそのような活動に協力してくれる企業によって肉や調味料も調達できている。  豚肉を提供する『アサショウ』は『旭食肉協同組合』を経営しており、その甘くて美味しい豚肉は毎月味を変えおすそわけ弁当になっていく。 「ベー

          あさひ市で暮らそう65話 農家と子どものつながりを

          あさひ市で暮らそう64話 若夫婦 快走す

           慎重に管理された巨大なハウスの中で、遠くまで続く畝から伸びる活き活きとした緑の大きな葉っぱ群をサチコは嬉しそうに見つめた。 「日差し、ありがたぁい」  日焼け対策をバッチリ決めたサチコは収穫とツル下ろしのためきゅうりジャングルへと消えていく。お気に入りの音楽を聞きながらきゅうりに話しかけるサチコのきゅうりへの愛が株たちに届いていく。  有機肥料と土作りにこだわった奈良ファームのきゅうりは甘み、旨味、みずみずしさが最大限に引き出されていてえぐみがない。    「本当

          あさひ市で暮らそう64話 若夫婦 快走す

          あさひ市で暮らそう63話 つぶつぶなもともと 

          「旭市を伝える何かをしたい」  これは昔から旭市などの千葉県東総地区に住まう人々よりも、『移住者』と言われる方々がよく考えることだ。旭市はとてもいいところなのだけれど、その良さが当たり前すぎて『何が良いのかわからない』とか『何もない田舎だ』と考える人が多いように思う。だが、この地域に移住してきた人たちはその素晴らしさを理解したうえで移住先として選んでいるのだ。まさに『岡目八目』である。  有馬健太は十年以上前に旭に来た移住者だ。都内で生活している時に匝瑳市での田んぼプロジ

          あさひ市で暮らそう63話 つぶつぶなもともと 

          あさひ市で暮らそう62話 こだわりの〇〇

          「外行きたあああああい!」  なぎさは空に叫ん…………でも誰にも届かないので隣で調理に励む母親にうったえていた。ここは神宮寺にある『やき鳥屋でんえん』の調理場である。眼前に広がる広々とした田園に叫んでも誰も応えてくれるわけがない。――あら、店名の由来ってこれかしら? 今度店主様にお会いしたら聞いてみます――  何度か聞いたその愚痴に母親はため息を吐いた。  幼い頃のなぎさは店の近くにある小学校に通っていた。田んぼの間を抜けていく通学路は気持ちいいほど真っ平らで遠くにある

          あさひ市で暮らそう62話 こだわりの〇〇

          あさひ市で暮らそう61話 踊る人形たち

           水萌里は『TODAY』の記者になってからおひさまテラス内のラーニングパブリックスペースを使うことが多くなった。家でも可能なのだが、少しでも仕事感を出したくなると利用するのだ。子どもたちの喧騒やまわりでミーティングしている声などをバックミュージックにキーボードを叩き携帯で検索する。少しばかり元気な子が多く集中できないと感じたときにはコワーキングスペースも使え、どちらにでも対応できる施設であることを有効的に使っていた。  少々頭に疲れを覚えるとおひさまテラス内を散歩する。

          あさひ市で暮らそう61話 踊る人形たち

          あさひ市で暮らそう60話 桜十選

           車から降り立った一夏が見上げた先は桜が見事に開花していた。  どこまでも続きそうな桜並木の向こうには池の水面が揺れていて、その上を色とりどりの魚たちが大きな口を開いて並び華やかさを添えている。旭市の袋公園は千葉県の桜十選にも選ばれるほどの景観で昼間には散歩を楽しむ人々が多く訪れ、夜には釣り提灯が灯り、四月に開催される桜まつりでは毎年たくさんの人々が春を満喫する。  桜まつりを数日後に控えた春の晴れた日、一夏は『袋公園』に来ていた。 「次に娘と来るのはいつになるのかしら

          あさひ市で暮らそう60話 桜十選

          あさひ市で暮らそう59話 旭市を歌で応援する

          「方言って「汚い」とか「野蛮」とか言う人がいるけど、私は『歴史であり伝統であるもの』の一つだと思っているの」  一夏は水萌里にねだられて中学の卒業アルバムを見せながら、ふとつぶやいた。 「一つ?」 「うん。お祭りや冠婚葬祭にも歴史や伝統が入っているでしょう。それと同じだって思う。だから、この同級生たちと会える時はできるだけ方言で話したいなぁって思っているんだぁ」 「そうなのね。この地域にはどんな方言があるの?」 「東総地区って言われている地域は方言が似ているわ」

          あさひ市で暮らそう59話 旭市を歌で応援する

          あさひ市で暮らそう58話 マルシェクエストHP編

           魔王真守のHPは現在100ポイントでかなり空腹だが、講釈が好きな真守は腹が満たされるだけではHPが減ることはない。味に満足することも必要である。  洋太は『もみきち』のすぐ前にあるキッチンカーに喜色満面に振り向いた。 「おやじ! あれ食おう!」  ピンクのかわいい車は洋太のよく知るクレープ屋『ニコカフェ』である。洋太は時折ふらふらと新川方面に自転車を走らせて疲れたときにはニコカフェのクレープを食べていた。 「えー。俺はあっちが気になるんだけどな」  真守が指差す方

          あさひ市で暮らそう58話 マルシェクエストHP編

          あさひ市で暮らそう57話 マルシェクエストMP編

          「ふふふふーん」  軽く鼻歌を歌いながら店主ユミは季節に合わせた飾りつけをしている。『FAVO』は令和五年七月にオープンしたばかりの小さな雑貨屋だ。干潟中学校から坂を登りきった左手にあるクリーム色のコンテナハウスの入口は観葉植物の緑が眩しい。駐車場には数十個の鉢植え観葉植物が壁替わりに並んでいて、大風が吹くとユミは諦めたように苦笑いし風が止んだらせっせと助けに行く。    今日もまた倒れた鉢を立たせるとふぅと息を吐いて振り向いた。 「ハロウィン、楽しかったなぁ」  

          あさひ市で暮らそう57話 マルシェクエストMP編