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あさひ市で暮らそう68話 四季を楽しむ散歩道

 六月、今年もまた『川口沼親水公園』のハナショウブ(『あやめ』という表示をしていることもあるが、あやめは水辺に自生しないのでここではハナショウブとさせていただく)が見頃を迎えた。1500株といわれるその様子は清々すがすがしさときよらかさを見せつける圧巻な風景である。紫と白のコトラストを支える緑も美しいしくその間に見える水面がキラキラしてエフェクトを加える。

 真守はその景色を楽しみながらも懸命に足を前に出す。あやめが咲く水辺を過ぎてくる風は冷たくて気持ちがいい。


「ほっ ほっ ほっ」


 呼吸を規則的に繰り返し速歩きの散歩中だ。旭市にはこういうウォーキングできる場所が多々ある。ここもその一つだ。

 田中家は主に真守のためにと家族で様々な場所へ行きウォーキングしているのだが、最近では真守が一人でも歩くことが多くなった。


海上うなかみ公園で黙々と歩くのもいいけど、一人ならこうして景色を楽しめた方が楽しいよな」


 真守のいう海上公園は海上うなかみ中の東にある海上コミュニティ運動公園である。野球場やサッカーのできる芝生面や大きな遊具から赤ちゃん用ブランコまで並ぶ遊具エリアをぐるりと囲むウォーキングコースが設定されていて、一周の距離がしっかりとしているため、距離や時間など目標を持ってウォーキングする人にとっても便利な場所になっている。週末には各運動施設から子供から大人まで歓声が聞こえ元気がもらえる。

 ジャングルジムはとても巨大で少し大きな子どもたちは鬼ごっこをしているグループが何組もいたり、親が心配そうについてまわる小さな子どもがいたり、登り方を工夫する子どもがいたりと、大変に人気の遊具である。あずまやでは母親たちが日陰を選んで雑談していたり、本を読んだりケータイを見たりと、チラチラと子どもの様子を確認しながらゆっくりとしている。

 サッカーグラウンドは週末にはレッスンがされているし、野球場は試合の歓声が響いている。


 そんな喧騒が楽しい海上コミュニティ運動公園とは異なり川口沼親水公園はゆっくりと椅子にでも座って眺めたくなるほど清涼な空気感であった。

 真守は時折鼻で大きく吸って顔をゆるめる。


「来週にはあじさいも咲くよなぁ」


 真守は仁玉川にたまがわ沿いの『ふれあいあじさいロード』を思い浮かべた。

 千葉県東部図書館を含めた旭文化のもり公園から西に伸びるふれあいあじさいロードは全長1キロメートルにわたる遊歩道には左右1500株のあじさいが色とりどりに咲く。あじさいといえば梅雨の時期であるが、カラー舗装されているので歩きやすく、休憩所は屋根付きで小さな遊具も備えている。見頃には多くの人が訪れる。

 来場者が多いので、田中家では朝早くに出かけてウォーキングしている。それもまた近くに住むからこその特権だ。


「市内だけでこんなに季節が楽しめるのも魅力的だ。水萌里は椿がだいぶ気に入ったようだしな」


 田中家はこの冬に『大原幽学記念館』の椿園を何度も訪れた。最初は記念館の北側にある駐車場に停めていたのだが、今では『東総ハム』に隣接する駐車場へわざわざ停めて記念館まで歩くようにしている。蓮畑の間を通り看板通りに階段を上がる。なかなかに急であるがウォーキングにはちょうどよい負荷だ。それを登り切ると正面に大原幽学が暮らした旧林家住宅があり、その庭先の木々を見上げると桜が大きく枝を伸ばし、春も楽しみだと思わせる。左手に進み椿の里と呼ばれる群生地へ。(歩道などの工事が行われ通れないこともあります)

 ここには520種類3000株の椿が開花時期を替え次々と咲いていくため、二月下旬から四月下旬まで姿を変えていくのもまた見どころだ。四月の桜の季節ともなれば、多くの来場者がやってくる。

 北側駐車場を抜けて田んぼ道を歩き車まで戻ると気持ちの良い疲労感となる距離となる。


「普段の海岸沿い散歩もいいけど、花に囲まれて歩くのはまた格別だな。夏にはあそこへ行くけど」


 夏の暑さに苦笑いの真守は木陰の揺れる『スポーツの森公園』を浮かべる。


「あ! 今年の夏はあさげーが街中まちなかに散歩コース作るって聞いたな。その時にはそっちも行ってみよう」


 真守はワクワクして歩みを早めた。


 ☆☆☆

 あさひの芸術祭実行委員会(あさげー)様

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