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あさひ市で暮らそう70話 おひテラ同窓会

 ローカルチャレンジャーがきっかけで『おひさまテラス』のイベントを知った水萌里は、そこで行われる読書会に参加することにした。

 読書会は前館長永井大輔の発案で、第一回目は『グッドライフ・幸せになるのに遅すぎることはない』が課題図書に選ばれた。


 水萌里はその企画の数日前に知ったので数ページほどしか読む時間がなかったのだが、大輔がそれでもいいというので遠慮がちに参加を決めた。

 読書会には『おひさまテラス』の六千四百冊に上る蔵書の管理をしているというかがみとなかむらも参加し、人生を楽しむ方法を語りながらおしゃべりの弾む会であった。かがみとなかむらは蔵書管理だけでなく、しおり作りや冊子作りなど、子どもたちが本に興味が持てるようなワークショップなどもおひさまテラスで開催している。

 

 司会も務めた大輔がその時間をどのように進めていくか、しっかりとシュミレーションしていることがわかるスライドを見ながらであったことも安心感がある。あまり読み進めていなかった水萌里であったが、「きちんと最後まで読もう」と思うくらいに興味が湧いた。これもまた、大輔の進め方のおかげだろう。

 メンバーのオススメ本の中から次回の課題図書『ゼロ秒思考』を決め解散となった。


「読書会っていうから堅苦しいかと思ってたけどフランクに話せて楽しかったわね」


 一緒に読書会に参加していた『コミューン』みゆきとパーティールームから出る。するとそこでローカルチャレンジャー二期生の面々がまるで同窓会のようにおしゃべりに華を咲かせていた。偶然にも近くにいたようだ。水萌里とみゆきも合流してそれぞれに近況報告をしていく。


 銚子市でおこなわれた『JAPAN Challenge Award』でグランプリと準グランプリに選ばれていたり、商品の販路を模索していたり広げていたり、レッスン講師を始めてみたり。自分のペースで進んでいた。水萌里も記者になったことを伝えるとみんなが喜んでくれた。


「ゆみちゃん、グランプリをとったときの発表はどうだったの?」


 そう。なんといってもゆみの躍進は目を見張るものがある。キャベツ農家『しんえもん』の嫁ゆみは規格外キャベツのあり方を模索しドライキャベツに挑戦した。


「もう、緊張しまくりのガチガチだよぉ」


 ゆみは自分の姿を思い出し苦笑いだ。


おひさまテラスここでも発表やったけど会場の人数とか立場とか違いすぎて怖かったわ」


「でも、グランプリなんてすごいよ。おめでとう! りえちゃんも準グランプリおめでとう!」


 ドライキャベツは今さらに進化し、味噌汁とコラボして弁当屋での購入も可能となっている。

 その他にも、りえとゆみは銚子市で多くの活動をしている。

 

 そして、誰からというわけではなく「みんなで何かやりたいな」という話になった。


 バラバラな夢、それぞれの仕事を持ったメンバーがみんなでできる何かと考えたとき、「マルシェ」にたどり着くのは当然であったといえる。


 新しいおひさまテラス館長藤沢に相談すると快く了承された。


 ウキウキ気分で解散し、帰ろうとした水萌里の前に買い物中のアヤコがいた。


「アヤコさん、ここでお会いするとは思わなかったわ」


 アヤコは『糸かふぇ』という縫製ハンドメイドをしている女性で、ポシェットや巾着はもちろん、女性らしい柄のアームカバーなども制作している。水風船柄の巾着は見ているだけで楽しくさせる。その中でも特に地域性を強調したメロン柄とスイカ柄か大人気だ。皮部分だけでなく中身の色も気を使っているそれはとても可愛らしい。

 そんなアヤコが出てきたのはクラフトルームだった。おひさまテラスのクラフトルームは様々なものが作れるとは聞いている水萌里だが、大きな機械がたくさん並んでいるその部屋は『主に男性が使うのだろう』という思い込みがある。水萌里にとってどうみても女性的なアヤコのイメージにはそぐわなかったので率直に聞いてみた。


「ふふふ。クラフトルームではね、こぉんなのもできちゃうのよ」


 アヤコのカバンに吊り下げられていたキーホルダーは糸かふぇのオリジナルロゴ入りで、アクリル板とクラフト合板でできていた。


「わあ! かわいい!」


具緒ぐっちょさんにデザインしてもらったの」


「すごぉい! この印刷とかができるってこと?」


「そうだよ。簡単そうに見えるけど、出力で印刷の濃さが変わるし、設定とか考えるのは楽しいよ」


 おひさまテラスのクラフトルームは講習を一度受ければ利用できるようになる。時間制で利用料金がかかるためアヤコはデータなどは家でやってくるという。


 QRコード付きの卓上ポップやら、作品掲示用アクリル板やら、とにかくたくさんのものを作っているようで、水萌里は感心してアヤコの写真を見ていた。


「こういうのも、いつか受注したいなぁと思っているんだよね。自分の分作るだけだと限界あるから」


 アヤコはからからと笑っていた。


 ☆☆☆

 ご協力

 おひさまテラス様

 ローカルチャレンジャー皆様

 しんえもん様

 糸かふぇ様 

 



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