短編集「どこかの汽水域」通販開始
喪失、接点、波間、混じりあわずに交じりあう――
誰かと誰かの境、此岸と彼岸、滲む境界に立って、きみはなにを思う?
大接近する金星を待ち侘びる少女、真夏の川辺でだけ会える博識の少年。
耳の裏にエラを隠す青年、耳の裏を隠してるみたいにしてる青年。
津波でどこかに消えた人、大切な人を追いかける人、大切な人を追いかける人を見守る人。
どこかで誰かはいきていて、どこかで誰かはいなくなった。
境は滲む。
きみはなにに触れ、なにを思う。
遠いようで近い、近いようで遠い。どこにもないようでどこにもある。
ここはどこかの汽水域。
A6文庫サイズ/126P
550円(本体価格500円+消費税10%)
収録話
墨夏 試し読み
魚たちの呼吸 試し読み
いつか声は波を渡る 試し読み
……というわけで本日通販ページを公開しました!どんどんぱふぱふ!
京都文フリが開催されなかったのは残念ですが、自家通販の形で頒布開始します。そのうちリアルイベントでの頒布もしたい。
配送方法はboothあんしんパックのみです。匿名配送ですので、個人情報の取り扱いに関して不安のある方もご安心して使っていただけたらと思います。ただ、自家通販のため、発送が少し遅くなる場合があります。どうぞまったりと構えていただければ幸いです。
試し読みは上記収録話のリンクからご確認ください。「墨夏」「いつか声は波を渡る」は10000字程度、「魚たちの呼吸」は3000字程度読めます。大体それぞれ3〜4割くらいといった塩梅でしょうか。
架空本屋「電子書房うみのふね」、今日はこの本について。
汽水域とは、淡水と海水の混じり合う水域のこと。
今回の短編集では、そうした何かの交わりや、境界線を意識したような短編小説が集まりました。どの作品も独立しているのでどこから読んでも問題ありませんが、前から順に読んでいくことで、三つの小説によって作り出される汽水域を感じ取ることができるかもしれない、そうした構成になっております。
墨夏 あらすじ
毎年お盆におばあちゃんちを訪れるひなこは、お母さんにもお父さんにもおばあちゃんにも言っていない秘密の場所を訪れる。夏の陽光のもと、河川敷では、村に住む少年昴に会える。金星の大接近を待ちわびているひなこは、天体に詳しい昴に教えてもらいながら、星の世界に思いを馳せる。夏の大三角形、カシオペヤ座、北極星ポラリス、そして少年と同じ名を持つ冬の星、昴。星を巡る会話を重ねるごとに、ひなこは昴の真摯な姿に惹かれていくが……。
魚たちの呼吸 あらすじ
河野の耳の裏に秘密がある。生まれつき、その暗がりにはエラがあった。幼少期の経験からその存在をひた隠すようになった河野は、しかし世界のどこかには同じエラを持つ人間がいると信じている。どこか息のしづらさを感じながら、密かに周囲の人間の耳の裏に視線をやるが、仲間を見つけることは叶わずにいた。そんな中、高校で同じクラスになった一青の耳の裏は、どうしても見ることができないでいた。
いつか声は波を渡る あらすじ
2011年3月11日、春香は親友であるあーちゃんを喪った。以来強い喪失感を抱き続けたまま生きていたが、津波の夢を見た六年後のとある日、同棲している夏希に宮城に行きたいと話を持ちかけた。あーちゃんの故郷である女川へと向かう旅で、爪痕と復興を同時に見つめながら、春香はあーちゃんの生きていた断片を探すように海へと近づいていく。その先で、彼女が見つけるものとは。
それぞれの作品は、どこか生きづらさを抱えた人たちの物語でもあります。
作者の想像を超えた、あるいは裏側の、思ってもいない感じ方をするだろうし、どういった風に解釈されていくか、それはわかりません。
それは、最後まで読んだ人のみが得る特権です。
読書には相性もタイミングもあります。
この世にはたくさんの優れた文章が溢れています。
それでもなんだか気になる、読んでみたいと思ってくださった方は、ぜひ買って、読んでみてください。
まずは試し読みをしてみてください。しかし、試し読みの先が、本当の物語です。
この物語たちが、届く人のもとに届きますように。
また、注意事項になりますが、この中で「いつか声は波を渡る」に関しては、東日本大震災を題材とした小説であり、いずれ無料で公開する可能性があります。その点だけご容赦ください。
どうぞ、何卒、よろしくお願いいたします。
今日のうみのふねは、ここまで。
また来週、どこかの水平線でお会いしましょう。本を携えて、どこまでも行きます。
たいへん喜びます!本を読んで文にします。