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突然ですがクレンジングのお時間です

美容業に携わっていた。

社販で化粧品を買えることがなによりのやりがいだった。顔のマッサージをしながらうたた寝してしまい、ハッと目を開けるとお客様の見開いた目が私の虚ろな目を捉えていた。今でもあのお客様の長いまつ毛を覚えている。本当に申し訳ない。若さと体力と大きな手しか取り柄のないぐうたらなエステティシャンだった。

そんなろくでもないエステティシャンも、クレンジングのやり方だけはきちんと伝えていた。毛穴が気になるとき、肌荒れが気になるときに抗炎症だの保湿だの謳われる化粧水や美容液をふんだんに使うよりも、まずクレンジングから見直すべきだと伝えていた。クレンジングは大事だ。ちゃんと落としたと思っても、コットンなどで耳の周りや鼻の際をそっと拭ってみるとファンデーションが残っていたりする。恐ろしい!

これは私個人のやりかたであり、なにかの根拠に裏付けされたものではない。あくまで怠惰な元エステティシャンのひとりごとである。


頬にニキビがある方は、枕や寝具などを見直す。頬杖をついたりしていないか?顔を触る癖のある方はお気をつけて。

おでこニキビの方は大抵前髪が原因だ。整髪料やオイルをつけて前髪を下ろしている方はおでこニキビが出やすいのではないだろうか。

総じてどのニキビも肌荒れもザラつきも共通して予防と対策になりことがある。それがクレンジングだ。さあ今日はいつもよりゆっくり丁寧にクレンジングをしよう。

突然クレンジング化粧品を顔の上にオラ!と載せるのは大変乱暴である。

丁寧な暮らしより丁寧なクレンジング。洗濯物を畳んでなくてもいい。夕飯の食器もあしたあらえばいい。でもクレンジングはゆっくり丁寧にしよう。タイムイズマネー。然り、マネーイズタイム。急がば回れ。キレイな素肌は3分でつくれない。

まずはお風呂やスチーマーの蒸気で肌を暖めて柔らかくする

シャワー派です!そんなあなたは髪を洗い体を洗ったあと、タオルで顔の水気を取りクレンジングをしよう。

お風呂に浸かりながら、できれば水分が足らないくらいに絞ったふかふかタオルを顔に載せて蒸しタオルをつくってから落とす。蒸しタオルは良い。有無を言わさず毛穴が開くので毛穴の汚れが落ちやすい。鼻の頭と頬の上部に点在するあまり美しくないイチゴの種とは長く付き合いたくないものだ。

しっかり毛穴を開き肌を温めたあとにようやくメイクを落とし始める。ジェルでもオイルでもやり方は同じだ。ケチらず使用容量を守り、とにかくやさしく肌に触れる。某美容家も言っている、とにかく力を加えないこと。ぐうたら元エステティシャンの言うことは信用できなくても、某美容家の言うことは信じよう。

物理のパワーでなく科学のパワーで落とそう

クレンジングや洗顔をするときに野菜の土汚れを落とすかのごとくごしごしとパワーで解決しようとする方はぜひ今日限りで、いや昨日限りでやめてほしい。ひどい油汚れや土汚れも人の肌にパワーはいらない。なぜならクレンジングは科学者がつくったものだから、物理的にがんばらなくても科学の力で汚れを落としてくれるものなのだ。(たぶん、そうだ)(むずかしいことは全部頭がいい人がやっているからだ)

化粧品を落とす力はパワーではなく“乳化”だと美容雑誌にもSNS美容アカウントにも書かれている。乳化にはパワーはいらない。容量を守ったクレンジング剤があなたのがっつりファンデもしっかり下地も乳化させてしまうのだ。

クレンジング剤をやさしくふわふわと肌表面を滑らせて、あとは洗い流すだけだ。冬だとさむっと思うくらいのぬるま湯で。絶対に40度のお風呂で落としてはいけない。なぜなら熱いから。42度?やめなさい。髪の毛が熱を当て続けることで傷むように人の肌も熱には強くない。そりゃそうだ。体温より高い気温、死んじゃうって思うでしょ。顔の皮膚は手足より遥かに薄いこともなんとなくお分かりだろう。詳しくは頭がいい人がちゃんと解説してくれるだろうけど、「ぬるっ」と思うくらいの水温で洗い流そうね。シャワーのお湯を直接顔に当てないで、おててでちゃんと洗い流そう。こすらないで。お願い。水がついた手で撫でるくらいのパワーで。いやパワーよりも回数で洗い流そう。

千鳥の大悟に倣い『おもうてる倍』は洗い流そう

もうええやろ、と思うくらい洗い流そう。顔を叩くように洗わないでね。やさしく、やさしく。

さあ、これでクレンジングは終わり。メイク汚れはクレンジングで落ちるけど、皮脂やほこり、日常の汚れは洗顔料。オールインワン洗顔のことは詳しく知らない元エステティシャンなので、あとは同じように洗顔もこすらず優しく行おう。思うてる倍洗い流すのも忘れずに。

クレンジングの大切さは私自身の肌をもって知った。頻繁にニキビができ鼻と頬にはここにいて当然、みたいな顔して毛穴の黒ずみが居座る。ぼんやり顔色が悪いくらいくすんでいたときもある。今思えばあれは毎日毎日落としきれない汚れと古い角質が溜まっていたのだ。窓掃除を怠り景色の見えなくなった薄汚い窓のように。毎日少しずつ汚れて色の変わったスニーカーのように。手間を時間かけなくなると、物も肌も人の心もぼんやりとでも少しずつ汚れていくのだ。落としてあげよう日々の汚れ。ゆっくり丁寧にクレンジング。めちゃくちゃ眠いけど、私は今日も顔を洗う。洗うぞ……ねむいな………


2021.11.09 umi

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